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第9回 テレビとデジタル機能

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充実したネットワーク機能によって、テレビは日々進化しています。ブロードバンド回線を通じてインターネットやテレビ専用ネットワークに接続できたり、テレビのリモコンでほかのAV機器を操作したりすることができます。さらに、テレビは数多くのコネクターを備え、パソコンやデジカメなどを直接つなぐことができ、パソコンに保存された映像や音楽を再生することもできます。今回は、進化していくテレビの拡張機能を紹介します。


つながる・ひろがる、テレビのネットワーク

ニュースや天気予報、交通情報など必要な情報を即座に入手したい。映画やスポーツ、音楽などのエンターテインメントを好きなときに楽しみたい。チャンネルの切り換えと同じくらいの簡単な操作でDVDの再生や録画の予約をしたい。パソコンに記録してあるデジカメ写真をテレビで見たい。こうした希望を、最近の薄型大画面テレビが備えているネットワーク機能がかなえてくれるようになっています。
ブロードバンドルータやモデムを経由してインターネットにつないで、「アクトビラ(acTVila)」や「DoTV」などのテレビ専用のネットワークでコンテンツを楽しんだり、一般のWebサイトを閲覧したりすることができるテレビが多くなっています。
また、LANにつなぐだけで、パソコンやネットワーク対応ハードディスク装置(NAS)に保存されているデジカメの画像や映像、音楽などを再生・表示することができる「DLNA(Digital Living Network Alliance)」規格対応機種も増えています。
テレビのリモコンのボタンを1回押すだけで、テレビとDVDプレーヤーの電源がオンになり、DVDの再生が始まりテレビに映像が表示される、というようなテレビとAV機器のスムーズな連係動作を実現する「HDMI(High-Definition Multimedia Interface)」やiLINKなどのデジタルインターフェースを持つテレビやAV機器が増えています。
テレビはインターネット、LAN、ほかのAV機器とつながり、機能を拡張しています。テレビのネットワーク機能の中から、これからテレビを選ぶときに見逃せない「アクトビラ」、「DLNA」、「HDMI」の3つのキーワードを解説します。

図1:テレビを取り巻くネットワーク

(注1)ネットワークメディアプレーヤー:LANで接続されたパソコンやネットワーク対応ハードディスク装置に保存された映像・画像・音楽などのコンテンツを再生する装置。パソコンに保存された映像をテレビで楽しんだりすることができる。

好きなときに好きなだけ 多彩なコンテンツが楽しめる<アクトビラ>

「アクトビラ」とは、対応するテレビのLANコネクターをルータやモデムなどのブロードバンドインターネット環境に接続するだけで、情報サービスやビデオオンデマンドを楽しむことができるテレビ専用のネットワークサービスです。ADSL、光、CATVなどの回線の種類も問わず、難しい設定もなくテレビのリモコンで気軽に利用することができます。
コンテンツは、ニュースや天気予報といった情報サービスから、映画・ドラマ・音楽などのエンターテインメントなど多岐にわたっています。次の画面は「アクトビラベーシック」のトップ画面とメニューボタンです。

図1:アクトビラベーシックのトップ画面と提供されている情報サービス

表1:アクトビラのサービス (対応メーカー・機種数は2009年1月現在)
サービス名
サービス開始時期
対応テレビの
メーカー数・
機種数
概要 推奨環境
アクトビラ ベーシック
2007年2月
9メーカー
約140機種
静止画とテキスト中心の情報サービス。地デジのデータ放送の画面に近い インターネット接続環境
アクトビラ ビデオ
2007年9月
6メーカー
60機種
ビデオオンデマンド、画面内のウィンドウに動画を表示。ブラウザで表示するパソコンのwebページ表示に近い 8Mbps以上のインターネット接続環境
アクトビラ ビデオ・フル
2007年9月
6メーカー
39機種
ビデオオンデマンド、全画面表示
ハイビジョン映像も高圧縮なのであまり高速な回線速度を必要としない
12Mbps以上のインターネット接続環境
アクトビラ ビデオ・ダウンロード
2008年12月
2メーカー
11機種
オンラインで購入またはレンタルしたコンテンツをダウンロードし、ハードディスクやBlu-ray Discレコーダに保存できる 実効速度12Mbps以上のインターネット接続環境

表1のアクトビラのサービスが利用できるかどうかは、テレビの機種によります。2007年秋以降に発売された大画面の上位モデルはほとんどがアクトビラに対応しているようですが、購入時に製品カタログや以下のサイトの対応機種一覧などで確認してみましょう。

アクトビラ対応機一覧 | 利用するには | 「アクトビラ」公式情報サイト

アクトビラはNHKオンデマンドやTSUTAYAなどといったパートナーを増やし、対応するテレビの機種数の増加を武器に、今後もコンテンツの拡充が期待されます。

パソコンのデータもテレビの大画面で楽しめる<DLNA>

テレビなどのデジタル家電製品を家庭内のLANに接続するための規格です。この規格に対応したテレビやハードディスク装置、HDD/DVDレコーダ、パソコンなどの間でコンテンツを共有したり、一部の動作を遠隔操作したりすることができます。
書斎のパソコンに保存してある映像をリビングルームのテレビで再生したり、パソコンからHDDレコーダの録画予約をしたり、異なるメーカーのテレビやパソコン、DVD/HDDレコーダなどの機器をLANに接続して画像や映像、音声データをやりとりすることができます。
DLNA対応AV機器では、接続など基本事項についてはほとんどネットワークを意識する必要はなく、それほど難しい設定を必要とせずに、機器同士は簡単に接続することができます。
2004年に最初の仕様が発表されて以来、薄型大画面テレビも含め対応機器が増えており、今後もいっそう増加すると予想されます。AV機器だけでなく、パソコン周辺機器として販売されているネットワーク対応ハードディスク装置やメディアプレーヤーなどにも次のようなロゴマークを付けたものが目立つようになっています。

図3:DLNA対応機器に表示されるロゴマーク 相互接続テストで互換性が検証済みの機器に添付される

DLNAの対応機器は、サーバとプレーヤーの2種に分けられます。サーバはコンテンツの保存や配信のための機能を備えた機器で、パソコンやDVD/HDDレコーダ、デジタルカメラ、LAN接続のハードディスクなどです。一方、プレーヤーはコンテンツを再生する機器のことです。テレビや音楽プレーヤー、メディアプレーヤー、テレビゲーム機などです。
ただし、デジタル映像や音声のデータフォーマットの中には、機器やメーカーによっては対応しないフォーマットがあり、接続はできても再生できないことがあります。

表2:DLNAに規定された映像・音声データフォーマット
  必須データフォーマット 機器メーカーが任意で対応するフォーマット
動画 MPEG-2(DVD映像など) MPEG-1, MPEG-4, WMV9
静止画 JPEG(デジカメ画像など) PNG, GIF, TIFF
音声 LPCM(音楽用CDなど) AAC, Dolby Digital(AC-3), ATRAC3plus, MP3, WMA9

テレビもDVDもリモコン1つで操作可能に<HDMI>

テレビに接続された複数のAV機器の電源のオンオフや再生・録画などを、対応する機器のリモコンだけで操作できるようにするためのインターフェースです。
DVIというパソコンとディスプレイ間でのデジタル映像伝送用のコネクターを、小型化して制御信号をやりとりできる仕組みを加えてAV機器用に発展させた規格です。デジタル映像・音声信号・機器間の制御信号を1本のケーブルだけでやりとりすることができます。
ビエラリンク(パナソニック)、AQUOSファミリンク(シャープ)、ブラビアリンク(ソニー)、レグザリンク(東芝)など、テレビを中心とした各社AV機器の連係機能は、このHDMIによる接続で実現されています。
こうした、メーカーごとのリンク機能は、自社製品のみに限定され、他社製品との連係は保証されていません。HDMIで接続した機器間の連係機能はメーカーが独自に拡張することができるようになっているのです。

図4:HDMIのロゴ DLNA同様に、接続テストに合格した機器にのみ表示が許可される

HDMIの登場で、Blu-ray Discレコーダやデジタル放送などのハイビジョン映像をデジタル信号のままテレビに送りこんだり、高音質の音声信号をデジタルのままAVアンプに送ったりすることができるだけでなく、AV機器を容易にコントロールできる便利さも手に入りました。
テレビはもとよりDVD/HDDレコーダ、メディアプレーヤー、AVアンプ、テレビゲーム機からパソコンやパソコン用のディスプレイなどのさまざまな機器に搭載されるようになっており、今後のAV機器の中心となる規格と言われています。
HDMI と同様の機能を持つものにiLINKがあります。IEEE1394規格の呼び名の1つでFireWire、DV端子、さらにiLINKにもiLINK(TS)、iLINK(DV)と別の呼称があり、コネクターやケーブルは同じですが、相互に接続することはできません。機器同士の相性などの問題もあり、テレビやAV機器のデジタルインターフェースはHDMIが主流になっています。

「観るだけ」から「使える」テレビへ
テレビが進化すると何が起こるのか

テレビは、大画面化、薄型化、高画質・高音質化、省エネ化、そして録画機能や機器連係などの多機能化、と進化し続けています。しかし、これまでのテレビの進化はテレビ放送の視聴を前提にしたものです。ところが、この進化の方向にテレビのインターネット接続機能が大きな変化をもたらすかもしれません。

インターネットにつながるテレビ

視聴者にとってインターネットの豊富なコンテンツは大きな魅力です。前述のアクトビラ以外にもテレビ向けのインターネットを利用したネットワークサービスがあり、日立「Wooonet」やシャープの「AQUOS.jp」などです。自社製品用のポータルサイトですが、「DoTV」(NTT コミュニケーションズ)、「Yahoo! for AQUOS」(Yahoo! Japanとシャープ)のようにメーカー以外からの参入も始まっています。
Wooonetが実現しているビデオメールのようなテレビ向けのネットアプリケーションが発展すれば、テレビは「観るだけ」から「使える」テレビに変わります。
パソコンでのインターネット利用に比べ、文字入力やプログラムの利用など制約はありますが、テレビのLANコネクターがブロードバンドインターネット環境に接続されていれば、扱い慣れたテレビのリモコンを使って、テレビ番組を観るのと同じ感覚でWebサイトの閲覧やオンラインショッピング、動画共有サイトへのアクセスができます。テレビのチャンネルを切り換えるような操作でYou Tubeなどの動画を楽しんだり、大画面でGoogle EarthとStreet Viewによる仮想世界旅行を楽しんだり、SkypeやMessengerで大画面のテレビ電話をかけたりすることもできるのです。テレビ向けのネットワークサービスだけでなく、「YouTube」などのインターネットの動画サイトに簡単に接続できる薄型大画面テレビも登場しています。

図4:テレビ用ポータルサイトDoTV

(注2)著作権の関係により、画像にぼかし処理を施しています。

これまでにもテレビによるインターネット利用の取り組みはありましたが、通信速度の問題、マウスがなく画面上のボタンの選択が不自由、文字入力が不便、動作が遅いなどの理由で、好評とは言えませんでした。しかし、ネットワーク環境やテレビ自体の性能が向上し、動作速度も実用的になりました。テレビに内蔵されるHTMLブラウザも改善され、リモコンによるWebサイトの閲覧も使いやすくなってきました。テレビは、パソコン、ケータイに続く新しいインターネット利用手段になろうとしています。

ネットがテレビを大きく変える

こうしたインターネット経由のデジタルコンテンツの隆盛は、既存のテレビ放送局のビジネスモデルを危うくする可能性も秘めています。テレビがテレビ番組を観るためのものではなくなるからです。さらに、テレビ局以外からでもテレビに向けて情報発信が可能になることも脅威となるでしょう。
2009年1月時点ではテレビによるインターネット利用は多くはないようです。しかし、本格的な普及はこれからです。インターネット接続に対応するテレビが増え、ネット上にテレビ向けのコンテンツが充実してくると大きな変化が訪れるでしょう。

<コラム>パソコンもデジカメもつながる、テレビの入出力

今日のテレビは、本編で述べたとおり、ネットワークやデジタルインターフェースによる機能拡張だけでなく、パソコンやデジカメ、外付けハードディスクとも接続できるようになっており、AV機器だけでなくパソコンのような情報機器とも連係して、ますます多機能になっています。
ここでは、テレビが備えているコネクターの働きを簡単に説明します。

次の図は薄型大画面テレビ背面と側面のコネクターパネルの一例です。数年前のアナログテレビにはなかった電話回線、LAN、USBなどのテレビとは無縁に見えるコネクターを数多く装備しています。また、多くの機種が背面のパネルとは別に、本体の側面や上面など操作しやすい場所に、ビデオカメラやテレビゲーム、デジカメなどの抜き差しする機会が多い機器をつなぐためのコネクターをまとめたパネルを装備しています。

図4:テレビ背面と側面のコネクターパネルの例

ネットワーク接続のためのコネクター <LAN、電話回線>
ブロードバンドルータや電話のモジュラージャックなどにLANケーブルや電話用のモジュラーケーブルでつなぐためのコネクターです。
デジタル放送の双方向番組でテレビのリモコンから放送局へ回答や注文を送信したり、CSデジタル放送などの有料番組を視聴したり、「アクトビラ」などのテレビ専用ネットワークやインターネットに接続するためのコネクターです。

パソコンやデジカメとつなぐためのコネクター <HDMI、DVI / PC入力、USB、メモリカードスロット>
パソコンにつないで、テレビを大画面ディスプレイとして使用したり(HDMI、DVI / PC入力)、デジカメを直接つないで保存されている画像などをテレビに表示したり(USB、メモリカードスロット)するためのコネクターです。
USBコネクターには外付けのハードディスクをつなぐことができるテレビがあり、メモリカードにテレビで受信したワンセグ放送を録画する機能を持つものもあります。

デジタル信号入出力用のコネクター <HDMI、i.LINK>
専用のケーブルでテレビをパソコンやAV機器(DVD/HDDレコーダ、デジタル放送チューナーなど)と接続して、デジタル信号(映像・音声)と、接続したAV機器を操作するための制御信号(録画・再生など)をやりとりするためのコネクターです。

映像、音声の入出力
映像や音声の入出力コネクターはアナログテレビにも装備されていていますが、デジタル放送対応テレビでは、これらの入出力コネクターがアナログテレビよりも倍近く装備されており、6系統以上の映像・音声の入力コネクターを装備しているものも珍しくありません。

<音声入出力>
前記のビデオ入出力と同様の機器の音声入出力につなぎます。アナログ音声信号用のコネクターはRCA端子と呼ばれ、ステレオの場合には右(赤)、左(白)で1組です。
デジタル音声信号用のコネクターは、テレビからのデジタル音声信号出力はAVアンプなどの音声入力につないで、デジタル放送を高音質で楽しんだり、DVDプレーヤーや外部チューナーなどのデジタル音声をテレビで再生したりするためのものです。
同軸ケーブルと光ファイバーの2通りの接続方法があります。
<映像入出力>
外部のチューナーやビデオデッキ、DVDプレーヤーなどの録画・再生機器の映像入出力につなぎます。アナログ映像信号専用のコネクターで、3種類あります。
最も普及しているのがコンポジットビデオ端子と呼ばれる黄色の端子1個だけのコネクターです。次に普及しているのが、Sビデオ端子と呼ばれ、DVDなどVHSビデオより高画質な映像信号用のコネクターです。最も新しいのが、ハイビジョン映像まで対応するコンポーネントビデオ端子です。いずれも映像信号専用で、音声信号は別のケーブルで接続します。

次回はBlu-ray Discやハードディスクなどデジタル放送の録画について解説します。

参考リンク

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