![]() |
第6回 デジタル放送の画質と音質
より美しく、ハイビジョン映像と表示方式地上デジタル放送のハイビジョンでは、アナログテレビ放送で見慣れた番組が見違えるほど鮮明で美しい映像に見えます。この映像表示の仕組みについて、ハイビジョンを中心に解説します。 ハイビジョン映像とはハイビジョンはNHKが開発した高精細度テレビジョン技術に付けられた名称です。従って、Hi-Visionは和製英語で海外では通じません。英語ではHigh Definition Televisionと言い、HDTVまたはHDと略されます。Definitionは解像度、鮮明度の意味です。
映像がきめ細かくなると大画面でも近くで観ることができます。SDTVでは適正な視聴距離は画面の高さの5〜7倍と言われていましたが、HDTVでは画面左右の視野角が30度になる位置で、画面の高さの約3倍の距離です。この距離から観ると、視野いっぱいに迫力ある映像が広がります。現在では、番組制作にあたっても近距離で視聴することを意図した画面作りをすると言われます。
注1 画面の高さは計算値です。メーカーや機種によって違いがあります 「フルハイビジョン」とは、ハイビジョンの表し方薄型テレビのCMやカタログには、「フルHD」や「Full Hi-Vision」「フルスペックハイビジョン」(注2)といった表現が目立ちます。これは最も画素数の多いBSデジタル放送のハイビジョンの「1920×1080」画素で送られてくる放送信号を100%そのまま表示できることを意味しています。 注2 フルハイビジョンという表記は、液晶やプラズマの表示画面が横方向1920ドット以上の解像度を持ち、横1920画素のデジタルハイビジョン映像を1画素1ドットで表示できることを意味するだけです。画質の良し悪しを表すものではありません。 インターレース方式からプログレッシブ方式へテレビの映像は毎秒30枚の静止画を連続表示して動画にしています。静止画は、画面全体が一度に表示されるわけではありません。1個の光の点が、明るさと色を変えながら画面の左上端からほぼ真横に右端まで移動します。右端からはすばやく左端に戻り直前の左端の位置のすぐ下から同じように明るさを変えながら右に移動します。この動きを画面の右下端まで繰り返します。 注3 総走査線の本数はSDTVで525本、HDTVでは1150本ですが、本講座では有効走査線の本数、それぞれ480本、1080本で説明しています。 実際のテレビ放送信号は、1画面を2回に分けて半分ずつ走査するようになっています。1本目、3本目、5本目というように1本おきに奇数だけを走査した後、2本目、4本目、6本目というよう偶数だけを走査します。こうして1/60秒ごとに奇数・偶数の走査線で互い違いに画像を作ります。このような走査方法をインターレース方式(飛び越し走査)と言います。 インターレース方式では、画面が半分ずつ更新されますので、動きの速い画面をなめらかに表示することができますが、走査回数が倍になり大画面表示や高精細な表示ではちらつきが目立つ短所があります。 そこで、大画面テレビや高精細画面の表示にはプログレッシブ方式(順次走査)が採用されています。一度に1画面分、ハイビジョンであれば1080本を走査して1/60秒ごとに静止画像を表示する方式で、ちらつきのない高精細な映像が得られます。 高音質と多機能、マルチチャンネルデジタル放送の音声は、CDに迫る「高音質」、「ステレオの2カ国語放送」、「5.1chサラウンド放送」、という3つの新しいサービスが実現されています。 CDに迫る高音質デジタル放送ではCD並みの高いクオリティで音声を聴くことができます。 ハイビジョンの大きな映像データを送信するために、音声データは極力小さくすることが求められます。そのため、デジタル放送の音声信号は、MPEG2-AAC(Moving Picture Experts Group 2-Advanced Audio Coding)と呼ばれる圧縮率の高い音声データ形式で送信されています。CD並みの音質を維持したままでデータ量を1/20程度に圧縮することができます。 ステレオ2カ国語放送アナログ放送でも多くの番組がステレオ音声で放送されています。このステレオの左右のチャンネルの音声信号を使って、2カ国語放送や、実況中継と解説などの解説放送などが行われています。ただし、音声信号が左右2チャンネルに限られるために、2カ国語は一言語ずつモノラルで、解説放送も実況と解説がそれぞれモノラルで放送されます。 ステレオ2カ国語放送の視聴にはステレオが再生できるデジタル放送対応テレビであれば、ほかに特別な装置は不要です。2カ国語放送と字幕放送を組み合わせる場合、簡易型のデジタル放送チューナーや廉価な地デジ対応テレビの一部に字幕放送に対応していないものがあります。 ホームシアターを楽しむ、サラウンド音声映画や音楽を映画館並みの大画面と迫力あるサウンドを自室で楽しむのがホームシアターです。薄型テレビは大画面でも場所をとらず、コンパクトで高性能な音響システムが市販されおり、愛好家も増えていると言われています。 この、サラウンド音声を楽しむためには、まずテレビやチューナーに5.1チャンネルサラウンド出力の同軸端子や光端子が装備されていなくてはなりません。さらに、デジタル放送の音声フォーマットMPEG-2 AACを6個のスピーカー用の音声信号に分解するデコーダーを搭載したAV(オーディオビジュアル)アンプなどの音響システムが必要です。 ただし、サラウンドを視聴できるシステムを揃えたとしても、デジタル放送でサラウンド番組が楽しめるかというと、実際はそうでもありません。サラウンド放送の番組が少ないのです。有料放送であるWOWOWやスターチャンネル以外には、地上波デジタル放送、BSデジタル放送ともにサラウンドで放送している番組はほとんどありません。現状、放送する側はハイビジョン映像の番組制作に手一杯であること、視聴者側は、専用の音響システムが必要なサラウンドを十分に認知していないことなどにより、ニーズが高くないのが大きな理由と考えられます。 さらなる高画質・高音質へ2015年にスーパーハイビジョンの実験放送が開始されることはすでに第3回目でお話ししました。解像度は7680×4320、音響22.2チャンネル。視聴者と画面との標準的な距離は、画面の高さの0.75倍とされており、例えば100インチの大型テレビの場合、画面の高さは125cmですから推奨される視聴距離は画面から94cmの位置ということになります。100インチの大画面を1m足らずの至近距離から視聴できるほど精細度が高いと言うことです。この精度は、視力1.0で識別できる物理的な限界と言われており、これ以上高画質化しても識別することができず、意味がないというほどのレベルです。医療や美術・芸術、精密加工・微小加工分野などにおいては、こうした超高精細画像へのニーズがあることは考えられますが、今の時点でオーバースペックであるかもしれないこのスーパーハイビジョンが実は家庭用に開発されていると言われています。 次回は、デジタル放送のコンテンツと未来についてのお話です。 参考リンク |
All Rights Reserved, Copyright(C) FUJITSUファミリ会 |