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第10回 Blu-ray Discは録画メディアの中心になるか

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今回はBlu-ray Disc(ブルーレイディスク)のお話です。アナログ放送の4〜5倍の情報量を持つ地上デジタル放送のハイビジョン映像は、従来のVHSやDVDでは画質を保ったまま録画することはできません。記録できる情報量がまったく足りないのです。そこで、2つの次世代DVD規格が提唱されていましたが、2008年にHD-DVDが撤退し、Blu-ray Discがその主役の座に着きました。今、最も注目度の高い録画メディア、Blu-ray Discの構造や特徴を紹介します。


デジタル放送を録画する

Blu-ray Discの生い立ち

これまでのアナログ放送の録画はVHSを中心にDVDまで画質や録画時間を向上させながら進歩してきました。しかしこれらは、アナログテレビ放送に合わせた低い解像度の映像を記録する仕組みですので、デジタル放送のハイビジョン映像を、画面の縦横比や高い解像度を保ったまま録画することはできません。横1440×縦1080ドットのハイビジョン映像をVHSで録画すると縦640×横480ドットに、DVDで録画すると縦720×横480ドットにと画素数が大幅に減りますので、画質もそれだけ劣化します。
記録できる情報量も足りません。現在DVDは片面1層のディスクの容量が4.7GBです。地上デジタル放送のハイビジョン映像は30分しか記録できません。標準画質と同等に120分記録するためには20GB以上必要となります。
記録する情報量が増えれば、書き込みや読み込みに要する処理が増えます。映像や音声はリアルタイムに記録再生できなくてはなりませんから、記憶容量が増えるだけでなく、転送や処理速度も高速にする必要があります。
従来のDVD規格ではこうした要件を満たすことはできません。本来、アナログ放送を前提とした規格ですから、デジタル放送の録画には新しいDVD規格が必要とされるようになりました。これを次世代DVD規格と呼び、Blu-ray DiscとHD-DVDの2種類の規格が提唱され、商品化されました。その後、2008年3月にHD-DVDの撤退が発表されたため、現状では次世代DVD規格はBlu-ray Discへの一本化が進行しつつあります。

Blu-ray DiscとDVDを比較する

Blu-ray DiscはCDやDVDと同じ直径12cm、厚さは同じく1.2mmです。材質もポリカーボネートで同じ、3種類のメディアの見た目はほとんど変わりません。
読み書きの原理も同じです。記録面に中心側から渦巻き状に配置された溝に、データとして微細な点を刻みます。読み取り時には溝に沿ってレーザー光を当て、反射光を読み取ります。点が刻まれた所は光が反射されず、点がない所では光が反射されます。この反射光の有無を「1」と「0」の情報に置き換えていくのです。
これら3種類のメディアの大きな違いは記録容量です。Blu-ray Discはほとんど同じ盤面の面積でDVDの5倍、CDの36倍の記録容量を実現しています。
Blu-ray Discは記録密度を高くすることで大容量を実現しています。
次の表1を見ながら特徴を確認していきましょう。

表1:Blu-ray DiscとDVD、CDの比較
  Blu-ray Disc DVD CD
(1)外形寸法 直径12cm ・厚さ1.2mm
(2)ディスク構造
(3)レンズの集光性能
(4)記録面
(5)光スポットの大きさ(比)
(6)波長 405nm(ナノメートル) 650nm 780nm
(7)転送速度 36Mbps(メガビット/秒) 11.1Mbps 1.2Mbps
(8)記録容量 25GB(ギガバイト)
(片面1層ディスク)
4.7GB
(片面1層ディスク)
700MB

安定性、耐久性に優れるディスク構造

ディスクの「(1)外形寸法」は3種とも同じですが、「(2)ディスク構造」に示すように構造は異なります。Blu-ray Discは、DVDやCDに比べると、カバー層が薄く極端に盤面に近い位置に記録面があります。記録密度が高く、高速でディスクを回転させるBlu-rayは、ディスクのわずかなソリやひずみにも影響されやすいため、レンズと記録面の距離は短い方が有利なのです。この記録面を保護するカバー層には強力なハードコート技術が採用され、盤面にキズがつきにくい構造です。耐久性の高い無機素材を使用した追記型や書き換え型のBlu-ray DiscはDVD-RAMなどと同様に100年以上の保存が可能といわれています。

DVDの5倍の容量を実現する高密度記録

Blu-rayはDVDの5倍以上の記録容量を実現するために、波長の短い光をさらに集光性能の高いレンズで小さく絞り込んで微細な点を作り出し、記録密度を高めています。
「(3)レンズの集光性能」は光を小さく絞り込む性能を示します。数値が大きいほど光を小さな点に絞り込むことができます。Blu-rayは集光性能の高いレンズを使用することで、データを読み書きするため光の点を小さく絞り込み、さらにレンズと記録面の距離を縮めています。
「(4)記録面」は各ディスクにデータが記録された状態を拡大したものです。青色・桃色・赤色で示した円はデータを読み書きするための光の点、光スポットです。この「(5)光スポットの大きさ」は、Blu-rayの面積を1としたとき、DVDは5.2倍、CDは13.3倍です。言い換えるとBlu-rayはDVDの1/5以下の小さな点で読み書きしていることになります。
「(6)波長」は使用するレーザー光の波長です。光は色によって波長が異なります。長いのは赤色の780nm前後、短いのは紫色の約420nm前後です。紫色は赤色よりも小さな点で読み書きできます。Blu-rayは405nmと波長の短い青紫色レーザー光を使用します。これがBlue-rayという名称の由来です(注1)。これにより、DVDの1.6倍、CDの1.9倍の記録密度を実現しています。

(注1)Blu-rayのBluはBlueでは一般名詞として解釈され商標登録できない可能性があるため、Blu-rayとなった。

デジタル放送にも余裕の高速データ転送

ハイビジョン映像やCD並の音声の録画・再生には、大容量だけでなく、読み書きするデータを録画再生機器に高速に転送できなくてはなりません。
「(7)転送速度」は、ディスクとそれを使用する機器とのデータのやりとりの速度で1倍速の転送速度です。DVDなどのドライブ装置やディスクに表記される16倍速や48倍速の元になる速度です。Blu-ray DiscはDVDと比べて3倍以上の転送速度になっています。
Blu-ray Discで書き込み可能なBD-R(DVD-Rに相当する)ディスクのデータ転送速度は最大216Mbps(6倍速、DVDドライブの20倍速に相当)です。

25GBの大容量の記録を実現

デジタル放送のハイビジョン映像のように情報量が大きくなると、大きな記録容量が必要となります。「(8)記録容量」に示す25GBのBlu-ray Discへのデジタルハイビジョン映像の録画可能時間は次の通りです。

表2:Blu-ray Discへの録画可能時間
放送の種類 ビットレート(注2) 録画時間
地上デジタル放送 18Mbps 180分
BSデジタル放送 24Mbps 130分

(注2)ビットレート: 1秒間の画像や音声などに使用される情報量。数値が高くなるほど高品質になるが、データの容量は大きくなる。

ハイビジョン映像を2時間以上録画することができ、容量に余裕があるため元の映像信号を無理に圧縮する必要がありません。映像本来の画質や音質を損なうことなく記録することができるのです。
BSデジタル放送のハイビジョン映像のビットレートは24Mbpsですから、十分すぎるほどの余裕を持って録画・再生を行うことができます。

いろいろなBlu-ray

Blu-ray Discは、さらなる大容量化の可能性も魅力です。断面のほとんどを占めるほど保護層が厚いため、ここに記録面を2層以上に多層化することが可能です。すでに2層ディスクは市販されていますが、さらに500GB(20層)が開発中といわれ、最終的に1TBに届くともいわれ、さらなる大容量化が期待されています(Blu-rayディスクの記録容量がさらに飛躍的に増大、ついに1TBの大台へ)。
このように、記録面数により単層(1層)ディスク・2層ディスク、書き込みできるかどうかにより再生専用・追記型・書き換え可能型、さらに記録する内容によりデータ用・録画用など、Blu-ray Discにはいろいろな種類があります。

記録容量で選べる「単層ディスク」と「2層ディスク」

現在、Blu-ray Discは記録面数により記録容量の違いでは、単層ディスクと2層ディスクの2種類あります。
2層ディスクは、ディスク片面に2つの独立した記録層が設けられています。それぞれの記録層へはレーザー光の焦点を変化させて読み書きを行います。図1で表面に近い側のL1記録層は半透明になっており、L0記録層への読み書きはレーザー光を半透明のL1記録層を透過させて焦点をL0記録層に合わせて行います。
2層ディスクでは、書き込み方向も1層ディスクとは異なります。L0記録層は1層ディスクと同じで、中心から外側に向かって渦巻き状に読み書きが行われますが、記録層の切り換え時にデータがとぎれないようにするため、L1記録層はL0記録層とは逆に外側から中心に向かって渦巻き状に記録されます。
こうして、2層ディスクは、記録面を2倍にすることで、1層ディスクの25GBに対して2倍の50GBのデータを記録することができるようになっています。

図1:2層ディスクの仕組み

用途で選べるBlu-ray Discの「再生専用」・「追記型」・「書き換え型」

CDやDVDと同様に、Blu-ray Discにも3種類の用途別のディスクがあります。

表3:Blu-ray Discの種類
種類 再生専用 追記型 書き換え型
名称 BD-ROM BD-R BD-RE
特徴 CD-ROM / DVD-ROMに相当。記録はできない。コンテンツやゲームソフトなどの配布に利用 CD-R / DVD-Rに相当。
最大容量内で追加記録可能。ただし書き換えはできない
CD-RW / DVD-RW / DVD-RAMに相当。1万回程度の書き換えが可能。ほかのディスクより高価
記録容量 25GB/50GB 25GB/50GB 25GB/50GB
転送速度 54Mbps(1.5倍速) 最大216Mbps(6倍速) 72Mbps(倍速)
備考   データ用・録画用があるLTHディスクがある データ用・録画用がある

記録する内容で使い分ける「データ用」と「録画用」

BD-R、BD-REにはデータ用と録画用の2種類のディスクが市販されています。
データ用はパソコンなどでのソフトウェアやデータの保存・読み出し用のディスクです。
録画用はデジタル放送を録画するためのディスクです。ディスクの価格に音楽やテレビ放送などの著作権物を録音/録画することを想定して、私的録音録画補償金が代金に含まれています。
物理的には同じディスクです。パソコンで扱うアプリケーションソフトやそのデータやどちらのディスクでも読み書きすることができます。
従来のDVDの場合、録画用ディスクは、私的録音録画補償金が代金に含まれているだけでなく、CPRM(CPRM:Content Protection for Recordable Media、デジタル放送の不正コピー防止技術)対応がデータ用ディスクとの違いでした。録画用でないとデジタル放送は録画できませんでした。ところが、最近ではCRPM対応のデータ用DVDも市販されています。
Blu-ray DiscにもAACS(Advanced Access Content System)という同様の不正コピー防止技術がありますが、録画用だけでなくデータ用ディスクにも対応しているようです。つまり、データ用でもデジタル放送の録画が可能なようです。
しかし、メーカーは、データ用でのデジタル放送の録画は保証していません。しかも、両者の価格差はほとんどなく、販売量の多い録画用の方が低価格の場合さえあります。デジタル放送の録画には録画用BD-RまたはBD-REディスクの使用をおすすめします。

低コスト対応の「LTHディスク」

BD-Rには「LTH」と表示されているディスクがあります。従来のBD-R(HTLディスクといいます)は記録面に、無機素材を使用していましたが、「LTH」ディスクは記録面に有機素材が使用されています。そうすることで、従来のDVD-Rの製造法に近づけることができ、低コストでBD-Rディスクを製造することができます。低価格のディスクが市販されることでBlu-ray Discの普及が期待されています。一方でLTHディスクは書き込み速度や保存性能が低いといわれています。例えば、保存性能に関しては従来のBD-Rディスクが長期保存100年以上となっているのに対し、LTHディスクでは10年以上となっています。当分の間、低コストに保存しておきたいというニーズには十分といえそうです。
注意したいのは、2007年以前に発売されたBlu-rayレコーダやドライブ装置、ゲーム機ではLTHディスク非対応の機種があるということです。その場合、読み書きどちらもできません。

急速に普及するBlu-ray Discレコーダ

2008年11月にBlu-ray Discレコーダの販売台数が従来のDVDレコーダを抜きました。Blu-ray Discレコーダの低価格化が進むとともに、従来のDVDレコーダの新機種が減り始めたことから、Blu-ray Discレコーダの販売台数が伸び、DVDレコーダの台数が落ちたと考えられます。DVD規格の世代交代が進行し始めたようです。
Blu-ray Discレコーダの普及は低価格化が引き金にはなっていますが、最新のレコーダは高画質・長時間録画だけではない魅力的な機能を備えています。特徴的なものを紹介しましょう。

DVDにフルハイビジョンを高画質録画

一部のBlu-ray discレコーダには、従来のDVD-Rにデジタル放送のフルハイビジョン映像を録画する機能が搭載されています。MPEG4 AVC/H.264などデータの高圧縮技術により、ハイビジョン映像を圧縮してDVD-Rにデジタル放送を録画します。DVD-Rでは記録容量が足りずフルハイビジョン映像は録画できないと冒頭で述べましたが、ハイビジョン映像も5分の1以下に圧縮すれば、容量4.7GBのDVD-Rに録画することができます。圧縮されるため、画質は劣化しますが、従来のDVDよりも高い解像度で再生できます。コンテンツによって録画メディアを安価なDVD-Rディスクと比較的高価なBD-Rディスクとを使い分けるといった楽しみ方ができます。

電子番組表の拡張

放送番組の録画予約に使用されるEPG(電子番組表)のデータを元に、話題のテーマや流行のキーワードを自動抽出して録画したり、ユーザーが入力したキーワードや出演者名でEPGのデータを検索し該当する番組をすべて自動的に録画する機能です。ハードディスクやBlu-ray Discなど記録装置の大容量化もあって、気になるものはまず録画しておき、視聴するしないは後から決めるといった視聴スタイルを選ぶことが可能です。

携帯プレーヤーやデジカメとの連動

録画した番組をSDカードやメモリスティックなどのフラッシュメモリカードにコピーし、携帯電話や携帯音楽・動画プレーヤーや携帯型ゲーム機で視聴することができます。朝のニュースを録画し、フラッシュメモリカードに移したものを通勤途中に携帯電話で視聴するといったことが可能になります。
またUSB端子を備えたレコーダではデジタルカメラやデジタルビデオカメラと接続して、撮影した映像をダビングしたり、レコーダに保存してある映像をカメラに移したり、テレビに表示したりすることができます。

HDMIやiLinkによるAV機器との連係

HDMI接続やiLink接続により、テレビやほかのAV機器とBlu-ray Discレコーダなどの連係機能対応のリモコン1つで、接続された機器の電源のオンオフ・録画・再生・録画予約・入出力の切り換え・音量調節にいたるまでの操作を、まるで1台の機器を扱うかのように行うことができます。前回の講座で紹介したアクトビラなどのテレビ専用ネットワークからオンデマンドサービスなどによる映画や音楽などのコンテンツをテレビ経由で直接Blu-ray Discレコーダのハードディスクにダウンロードしたりすることができます。

録画メディアの中心になったBlu-rayの今後

Blu-ray Discレコーダは、従来のDVDの録画再生も可能で、従来のDVD録画や今まで録画したものの再生も問題ありません。従って、価格面での折り合いがつけば従来のDVDレコーダを選択する理由はありません。そう考えると、徐々にDVDレコーダの販売は減少し、Blu-rayレコーダが台頭してくると推測され、今まで以上のスピードで、Blu-ray Discレコーダの普及が進み、Blu-ray Discは録画メディアの中心的な存在になりつつあるといってよいでしょう。(主流はBlu-rayへ、販売台数でDVDレコーダを初めて上回る)。
しかし、Blu-ray Discのライバルになる録画機器や録画メディアも着実に進化を遂げています。かんたん手軽に録画して、見終わったら消去するといった録画視聴スタイルが増えている中、そうしたユーザーにとって果たしてBlu-ray Discは便利な録画メディアなのでしょうか。
次回は、Blu-ray Disc以外の録画メディアや装置と著作権保護技術を含め、デジタル放送の録画全体について解説します。

参考リンク

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