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UPTODATE これからの経営戦略
〜CRM (カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)

富士通株式会社
ソリューション事業本部 CRMソリューション事業部
CRM&モバイル・デリバリー部 プロジェクト課長   柴崎 辰彦氏
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停滞する経済環境のなかで、売上拡大よりも収益増大を目指した経営戦略が求められ、CRMが注目を集めています。しかし、ITベンダー主導で広められたCRMについて、システムを導入すれば劇的に経営環境を改善できると錯覚している(CRM=IT)経営者も数多く見受けられます。本稿では、CRMの実践の意味を改めて見つめ直すとともに、それを実現する手段としてのITのトレンドをご紹介していきます。

はじめに

■CRMとは

とかくIT中心で叫ばれてきたこともあり、CRMを CTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレーション)やSFA(セールス・フォース・オートメーション)、BI(ビジネス・インテリジェンス)と混同している例が少なくありません。しかし、CRMは経営トップ層、利用者部門、情報システム部門など、全社で取り組む経営戦略そのものであり、その活動は以下のようなステップで実現されます。

  • 顧客を知ることで、顧客を識別し
  • 顧客に合った商品やサービスを提供し
  • 継続的な関係を築き、顧客ロイヤリティを最大化し
  • 自社の競争力や収益力、ブランド力を最大化する

■CRMの目的

CRMにおける目的、戦略、戦術は以下のように捉えられます。

  • 目的:企業収益の最大化
  • 戦略:顧客ロイヤリティの形成・維持
  • 戦術:顧客とのリレーションを形成・維持していくための適切なコミュニケーション

■なぜ、CRMか?

CRMが流行する理由には、いくつか理論的な裏づけがあります。代表的なものをご紹介いたします。

図・顧客生涯価値(LTV:ライフ・タイム・バリュー)
  • 20-80%の法則
    俗に「ニッパチの法則」と呼ばれ、取引頻度上位20%の顧客で80%の収益をあげられるという理論です。つまり、顧客には企業にとって大きな収益をもたらす顧客とそうでない顧客が存在し、顧客を識別してプロモーションすることが企業収益に大きな影響を与えることを意味します。

  • LTV(ライフ・タイム・バリュー)
    顧客生涯価値と訳され、一時点でのシェアでは、ある顧客での一生涯でのシェアをいかにあげるかという考え方です。これは、新規顧客を開拓するコストに比べ既存顧客を維持するコストが格段に低く、長年の取引がアップセリングや口コミによる利益の拡大により、長い目でみると企業収益を拡大することを意味します。


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CRMが対象とする3つの業務領域

■マーケティング

顧客の属性や購買履歴をもとにしたターゲッティング、キャンペーンの企画・実行など、データに基づく戦略的マーケティング活動が対象となります。分析のためにBIツール等を活用します。

■セールス

営業における効率的な販売活動、インターネットや電話を活用した販売活動が対象となります。最近ではモバイルを活用したSFAツールが注目を集めています。

■サポート&サービス

電話を活用したコールセンターやヘルプデスクでの業務が対象となります。ここでは、効率的な電話対応ができるようにコンピュータとコミュニケーションを連携させるCTI技術が注目されます。最近では、Web上でのセルフサポートを行うFAQ、E-mailでの問い合わせに自動回答するシステムや音声認証・認識技術も注目されています。

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CRMを支えるITの展開

CRMを実現するためには、実に幅広いIT技術の提供が必要になります。以下にその代表例をご紹介します。

■CTIを活用したコールセンター

日本では最も早くから普及した電話による顧客応対の仕組みです。CTI技術には、かかってきた電話番号をキーに顧客情報を検索、ポップアップさせたり、コンピュータに自動応答させたりするインバウンド業務と、予め用意された顧客リストを元に自動的に発信するアウトバンド業務があります。

■SFA(セールス・フォース・オートメーション)

営業活動の効率化や商談の進捗状況管理、情報の共有を目的とした仕組みです。とかく幹部社員による管理が注目を集めがちですが、営業マン全員に浸透・活用させるには、情報の手軽な入力方法や場所を選ばないモバイルツールの活用が必要となってきます。

■Web/E-mail

インターネットの進展により、WebやE-mailを活用したCRM(eCRM)も注目を集めています。Web上でのマイページ機能やECサイト上でのレコメンデーション(推薦)機能の実現により、一層OnetoOneマーケティングを意識した活動が可能になってきています。また、増大するE-mailに対応するため、メールの文書を自動解析し回答文を自動生成するツールも導入され始めています。

■BI(ビジネス・インテリジェンス)

さまざまなチャネルを経由して集まった顧客情報をOLAP(オンライン・アナリティカル・プロセッシング)やデータ・マイニングによって分析し、次の戦略を立案していきます。データ・マイニングは、ウォルマートでの缶ビールと紙おむつの分析が有名ですが、最近では日本語テキスト文書をマイニングするテキストマイニング技術が進展しており、インターネットのWebサイトやE-mailで集められたテキスト文書からさまざまな分析が行われつつあります。

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事例1:マルチチャネルに対応したCRM

図・CRMを支えるITの変遷

電話や営業活動に加え、インターネットの加速によりWebやE-mailなどさまざまなチャネルの統合化と統合CRM-DBが、CRMの導入のポイントとなっています。あるインターネット専業銀行では、電話によるテレホンバンキング業務に加え、WebやE-mailの統合化はもちろん、顧客情報を一元化した統合CRM-DBを構築されています。


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事例2:リアルとバーチャルを連携させたCRM

実際のリアル店舗とインターネット上のバーチャルな仕組みを連携させた戦略を、Click(マウスのクリック)&Mortal(モルタルの店舗)戦略といいます。カタログによる通信販売と実際の店舗によるカタログ有店舗販売を行ってきたギフト用品販売業者様では、インターネット有店舗販売への転換を図り、見事に成功を収められています。

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おわりに

CRMの有効性が認知されるなかで、米国ではCRM導入のうち60%が失敗したというショッキングな調査結果も出ています。そのほとんどが、情報システム部門単独でシステムの導入に踏み切ったことに原因があるようです。CRMは全社戦略であり、経営者、利用者部門、情報システム部門がタッグを組んで初めて成功します。単なるITの導入だけではなく、組織を跨いだ業務フローの見直しや顧客対応方法の見直しなど、会社全体で取り組む必要があるからです。

【関連URL】

富士通CRM : http://crm.fujitsu.com/

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