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UPTODATE VoIP (Voice Over Internet Protocol)
音声とデータの統合 コンピュータが電話を飲み込む
編集委員 ザ・パック(株) 吉城寿雄
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Eメールが日常的に使われるようになっても、電話やFAXは重要なコミュニケーションツールです。その音声をIP(Internet Protocol)パケット化して、IPネットワーク上で従来のデータと混在させて伝送する技術がVoIP(Voice Over IP)です。いまや、単に音声をIPネットワークで伝送する時代から、配線の統合や、音声を情報システムに組み込む時代に移ってきています。

音声をパケット化してデータと統合し、高効率を伝送する方式。データ系サービスの低価格化、IPトラフィックの増大、voipの実用化

第一世代VoIP

多くの企業では拠点間の専用線をTDM(Time Division Multiplexer:時分割多重化装置)で、データ回線と音声回線に帯域分割して使用しています。データは1回線で複数相手との相互通信が可能ですが、音声は相手ごとに回線が必要となります。そのために音声回線は通話量や相手先に応じて複数必要になります。

PBX(構内交換機)のODトランクと、電話番号とIPアドレスに変換するゲートキーパー機能を持ったVoIP対応ルータや、GateWayを接続して利用する方法が数年前から実用化されています。音声の場合、圧縮しても8Kbps以上の帯域を占有します。通話していない場合は、データ領域に帯域を開放しますが、会話していても言葉と言葉の合間や、考えている時間などの無音時間があります。無音時間はデータが流れていないので、その無音の一瞬は無駄な帯域となります。

また専用線をTDMで帯域を分割利用する場合、音声回線は複数固定接続を必要とします。つまり「無駄」が多くできることになります。そこでデータ回線に必要時、音声も送ることで、無駄を省き、データを流せるようになり、回線の利用効率が向上します。その結果専用線速度を有効利用できるので、従来方式よりも低速回線で同等サービスの提供が可能となり、コストダウンが可能です。

近年は、PBX自体にIPトランク(GateWay)を内蔵することで、音声をIPパケットとして送出しています。これによりPBXがIPパケットを扱えるようになり、中継線サービスも利用できるようになりました。そして接続時間が短い、相手電話番号が表示できる等の付加サービスが可能となってきました。

第二世代VoIP

昨年からは、パソコンを電話機としても使うソフトやハードが出てきています。PBXを設置せずに音声サーバーを中核機器として、LAN上で稼動するIPアドレス対応の電話機(IP−Phone)と、パソコン上のソフトで実現する電話機(Soft−Phone)の利用が可能となっています。

さらに電子電話帳機能からコールセンター機能まで、電話機能をパソコンのアプリケーションとして開発することが可能になります。今後は、LAN-WAN-LAN環境で、IP−Phoneを導入したシステム展開、Webとの併用などのアプリケーションも開発されることでしょう。

優先制御

音声通信とデータ通信の最大の違いは、音声は最終的に人の耳に届き、判断される点です。そのために通話品質の確保は重要な課題です。それを解決する技術として、QoS(Quality of Service:通信サービス品質)技術があります。データ通信の場合は、バースト的な遅延やエラー、紛失が生じても、再送でカバーできることが多いのですが、音声、特にFAX通信においての遅延や紛失は、通信エラーの原因となるためです。

このような音声やFAX、動画などの、リアルタイム性を求められるデータの場合は、他よりも優先的に送るように制御します。これが「優先制御」です。

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統合配線

音声もLANのデータとして流れますので、末端配線の統合が可能です。現在でも無線LANを使用すれば、電波の届く範囲内ならば、パソコンに電源だけ供給することでデータ交換、音声通話が可能となります。しかし、無線LANは規格(IEEE802.11b)では11Mbpsの通信が可能なのですが、実効速度は7〜8Mbpsで、電波状況に大きく左右される点が問題です。これに関しては、今年後半から年末にかけて最大54〜72Mbpsで通信が可能なIEEE802.11a規格の製品が出荷されると予想されており、改善が期待できます。

無線LANとは別に電気配線を利用する高速電力線モデムが研究されています。現在日本では電波法の規制で3Mbps程度が限界ですが、アメリカでは数MHzの周波数帯域が利用可能なので、数10Mbpsで通信可能な製品の開発が進められています。HomePlug(http://www.homeplug.org)という業界団体で実験や規格の検討が行われています。

電力線モデムでの高速通信が可能となり、その機能をパソコンに内蔵すれば、それこそコンセントにプラグを差し込むだけで、データ交換も、電話も利用可能となり設置コストの大幅な削減につながります。

家庭でも、情報家電が音声を取り込むことで、冷蔵庫の中身を見ながら、付属の液晶画面で「献立サービスセンター」と相談しつつ夕食のメニューを決めるような時代が訪れることでしょう。

さらに、電力会社が電力線モデムサービスを始めれば、次世代携帯電話での高速データ通信も魅力ですが、電波の届きにくい地域にとっては有効なサービスとなるに違いありません。

中/大規模企業:小規模拠点まで含めたブロードバンドネットワーク。グループ会社:ADSL(xDSL)、FTTHを利用したブロードバンドネットワーク!

IP-VPN

音声とデータを統合して伝送することで、回線効率を向上させても、データセンターや中継回線へのトラフィックの集中が生じます。

例えばデータセンターが東京にある場合、データは東京へ集中します。拠点間で通話をしたい場合は、中継回線を経由することもあります。回線効率を上げても、その必要量を見積るのは難しくなります。つまり、データはセンター集中、音声はメッシュ状の網構成が理想となります。

そこで、セキュリティを確保した、超高速バックボーンを持つ次世代網の「IP−VPN網」を利用することで、N対Nでの拠点間通信が可能になります。

IP−VPN網を利用すれば、各拠点はIP−VPN網との接続なので、データセンターは高速な回線を使用し、各拠点は規模に応じた速度の回線を用意することも可能です。運用後もトラフィックが増加した拠点のみの増速が可能となります。規模の異なる拠点を多く持つ企業には効率的な網構成が可能だと考えられます。

まとめ

音声をIPパケット化することは、音声回線を特別なものでなく、データとして扱うことによって、機器を含めた通信網の設計を容易にします。

しかし、この数年で回線上を流れるデータの内容が大きく変わっています。電話や、ホスト等の基幹系データ量は増えていなくても、EメールやWeb閲覧用のデータは急激に伸びています。

VoIPで単に電話にかかる経費を抑えるよりも、「電話」をコンピュータで扱い、業務の効率化を図り全体的な効率を向上させることが、企業をより利益の出る強い体質に変えるのではないでしょうか。

次号(10/20発行号)は「バイオ認証(仮題)」の予定です。

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