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UP TO DATE 「Twitter」
“つぶやき”と“ゆるいつながり”による 新しい形のコミュニケーションサービス その魅力と活用法

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2008年4月、日本版の運用が開始されて以来、国内でもうなぎのぼりにユーザー数を増やしているTwitter。かつてブログやmixiなどのSNS(Social Networking Service)がそうであったように、この新しいサービスは、インターネットからの情報発信の形態を変化させるだけでなく、ビジネス、メディア、政治などにも変革をもたらす大きな可能性を秘めています。このTwitterがなぜ注目を集めているかを考察し、実際にどのように活用されているかを紹介します。


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Twitterとは

Twitter(ツイッター)は米国Twitter社が運営するコミュニケーションサービスです。いつどこにいても自分の状況を気軽に伝えられるサービスとして考案されました。日々の生活の中で人々とつながる簡単な手段というコンセプトをもとに、世界中の人々の間でリアルタイムなコミュニケーションの手段として利用されています。そもそもTwitterとは「小鳥がさえずる」「ぺちゃくちゃしゃべる」といった意味の英語です。

コンセプトはきわめてシンプルです。基本は、「What's Happening?(いまどうしてる?)」(注1)などのつぶやきを140文字以内で投稿すること、自分や他人のつぶやきを時系列で自分のページで閲覧することです。つぶやきをツイート、閲覧することをフォローといいます。フォローし合うことでコミュニケーションをはかることができます。

実際には次のような画面で、つぶやきを投稿したり、つぶやきを閲覧したり、または他人のつぶやきに応答したりします。

注1:当初、Twitter.com のメッセージ入力欄に掲げられた「質問」は"What are you doing?"(いまなにしてる?) であったが、2009年11月、"What's happening?"に変更。個人的な情報発信から、“今何が起きているか”といった情報の共有を実現しているサイトに成長したことによる。ただし、日本語サイトでは、“いまどうしてる?”と訳している。

140文字以内という短い文章を不特定多数に向けて公開することから「ミニブログサービス」と称されることもあるようです。

また下記のような特長があることから、ブログやSNSとは異なる、新しい形のコミュニケーションサービスといえます。

  • ツイートの投稿とフォローにより、複数ユーザー間でのリアルタイムな情報共有が可能
  • ツイートへの返信やリツイートにより、ユーザー間で“ゆるいつながり”を確立可能
  • 文字数が少なく、メッセージのタイトルも不要なので手軽にかつ迅速な情報発信が可能

Twitterの魅力

Twitterは、2006年8月に米国で一般公開され、日本でも2008年4月から日本版が公開されています。日本では運用開始から2年ほどですが、Google Ad Planner(注2)によると、2009年12月におけるtwitter.comの日本のユニークユーザー数(注3)はすでに740万人です。mixiのユニークユーザー数がサービス開始(2004年2月)から2年で203.3万人(2006年1月時点)であったことを考えると、Twitterユーザーの爆発的増加のほどがわかります。

では、Twitterはなぜ、これほどまでにユーザーに支持されているのでしょうか。

注2:ネット広告企画支援ツール。広告対象者が利用しているWebサイトの訪問者数や性別や好みなどの情報を確認することができる。費用をかけずに企画の意向に合った適切な媒体を調査・選定できるもの。

注3:特定期間中にアクセスしたユーザー数で、アクセス回数に関係なく純粋にユーザーの数をカウントしたもの。

●手軽であること

ブログであれば、多くの人に見てもらうためには文章などの工夫が必要ですが、Twitterでの投稿は140文字以内に制限されています。タイトルも付けません。これは、当初から携帯電話のショートメールサービスに対応することを想定していたためです。Twitterは、SNS、インターネット、モバイル、IM(Instant Messenger注4)などからもメッセージを受け取ることができるよう設計されています。Twitterでは、気負わずに自分の思いをつぶやくことができます。そして、利用は無料です。

注4:リアルタイムに短いメッセージのやりとりやファイル転送を行うことができるアプリケーション、MSN メッセンジャーやYahooメッセンジャーが有名。

●ユーザー同士のゆるいつながり

mixiなどのSNSへの会員登録は原則的に招待制です(注5)。誰かの日記を閲覧するためには申請して許可をもらわなければなりません。最近ではオープンにしているサービスもあり、招待制かオープンかは、何を重視するかによります。Twitterでは、任意に登録でき、閲覧したいユーザーを気軽にフォロー、検索で偶然にヒットしたユーザーのツイートの閲覧や返信も自由です。

注5:mixiについては20010年3月から招待制に加えて登録制も導入されている。

●リアルタイムな情報の共有

2009年1月に起きたハドソン川への旅客機不時着事故では、Twitterに多くの情報が流れ、その情報を求めるユーザーによるアクセスが集中しました。インターネットは情報の即時性に優れたメディアですが、Twitterは、リアルタイムでの情報の発信と検索とともに、柔軟性の高い情報共有の場を提供することでその優位性をさらに高めています。

●著名人による利用

多数の著名人や有名企業による利用が、人気を大きく後押ししています。Twitterのフォロワー数ランキングの第1位は、俳優のアシュトンカッチャーで約450万人、第2位は歌手のブリトニースピアーズで430万人以上のフォロワーを抱えています。

日本でも多くの著名人がTwitterを活用しており、評論家の勝間和代氏、歌手の広瀬香美さんなどが有名です。彼らのつぶやきを垣間見る目的でTwitterを使い始める人も多いようです。

Twitterの技術

Twitterはサービス開始当初、プログラミング言語RubyによるウェブアプリケーションフレームワークRuby on Railsで構築されました。Ruby on Railsによる開発効率のよさによって、着想からサービス開始まで数週間でシステムを構築し、その後も、爆発的に増加するユーザー数とアクセス数に対応して、短期間にシステムを拡張し、改良し続けることができたのです。

しかし、Ruby on Railsは効率的な開発を実現するためのフレームワークで、パフォーマンスを追求するフレームワークではありません。サービス立ち上げ時には重宝された技術でも、大規模なシステムの構築には実績がなく、実際にアクセス数オーバーが原因と思われるシステム障害が頻発していました。

そこで、2008年のアメリカ大統領選挙を契機にシステムを大幅に強化しました。入出力部分などの処理をRuby on RailsからScala(Scalable Language、スカラ)に変更しました。Scalaは、並列処理に向く特性を持ち、大規模なシステムで実績のあるプログラミング言語です。さらに、ネットワークやデータセンターはNTTアメリカと提携し信頼性を強化しています。

この変更により、選挙戦後の大統領就任式では毎秒100個のつぶやきが発生したといわれる爆発的なアクセスでも、システムがダウンすることはありませんでした。140文字に制限される文字だけのシンプルな仕組みでも、つぶやきが発生するたびに、そのつぶやきをフォローするユーザーのタイムラインはリアルタイムに書き換えられ、システムに膨大な負荷がかかります。実際にはシステム変更後も、アクセス数のオーバーが原因と思われるシステム障害は発生しています。

Twitterは、安定稼働への対応策として一部の有名なアカウント以外はフォロー数を制限しており、2010年1月時点でその上限値を2000としています。増加し続けるアクセス数対応に、今後もシステムの改良は続けられていくことでしょう。

Twitterの活用

最近では日本においても企業によるTwitter利用が始まっており、各メディアや政治の世界でも活用され始めています。

その例をいくつか紹介しましょう。

●企業とTwitter

企業にとって、Twitterは無料で使用できる新しいビジネスツールととらえることができます。

代表的な3つの利用法を紹介します。

できるだけ多くのフォロワーを獲得し、新製品情報、キャンペーン情報、ニュースリリースなどを広く配信して、口コミで効果的に情報を広めて、販売に結びつける利用法で、有名なのが米国Dellです。2007年3月以降、Twitterで特売品情報や割引クーポンなどを配信することで、300万ドル以上を売り上げたと発表しています。特に、アウトレット商品の販売に人気があり、157万人(2010年2月現在)がフォローする最大級の商用Twitterアカウントとなっています。

また、直接的なコミュニケーションができる利点を活かして、顧客との対話や市場のリサーチに活用する例で有名なのが飲料メーカーPepsiです。同社のTwitterアカウント(@pepsi)は、フォローしている数(24,061、2010年2月現在)とフォローされている数(21,970、同時点)にあまり差がありません。これが同社のTwitter利用法の特徴です。フォローし合うことで、顧客との絆を育て、顧客の好感度を向上させています。「1日にペプシの飲料を何本飲んでいる?」といった質問を気軽に流し交流を深めながら、商品やプロモーションに対する信頼性の高いリサーチを行っています。

さらに積極的な例として、Twitterのリアルタイム性とオープン性を活かして、顧客ケアに使用する例です。アメリカの格安航空会社JetBlue Airwaysでは、困っている顧客の対応にTwitterを使用しています。例えば「チェックインカウンターに係員が不在で困っている」という顧客のつぶやきを発見すると、関係者に連絡のうえ係員を向かわせ、その旨をTwitter で回答といった対応をしています。また、頻繁に行われる荒天時にはフライトできるかどうかといった問い合わせにも、こまめにフライト情報のURLを案内するようにしています。結果、最新のフライト情報や空港の様子を知ることができます。オープンに行われるこうした丁寧な対応が同社のイメージアップや顧客満足度向上に貢献しています。現在、フォロワーは160万人を超えています。

もちろん、利用には課題もあります。ドットコムバブル時代のドメイン名のように、有名企業やブランドの名前を含むアカウントを獲得して、商品やサービスを高額で売却する問題や企業をだます「なりすまし」問題への対応などです。しかし、Twitterはそれら課題を超えて、活用していくだけの大きな魅力があるようです。

●メディアとTwitter

新聞、テレビ、雑誌など、多くのメディアがTwitterでニュースを配信しています。ただし、Twitter用として独自に記事を書くのではなく、bot(自動的にツイートを生成するプログラム)を使って、ニュースの見出しとニュースを掲載している自社のWebサイトのURLを配信するケースが多いようです。それでも「今、何が起きている」「今、どうなっている」といったことを時系列でリアルタイムに知ることができるメディア関連のTwitterは人気があります。
一方Twitterはひとつのメディアとして育ちつつあります。2010年1月に発生したハイチの大地震では、市民から多くの情報がTwitterで寄せられました。最新の情報はテレビではなくTwitterにあるといわれ、被害を目の当たりにしている市民からの情報がTwitterで数多く発信されました。こうしたつぶやきには記者や編集者といったプロの手による真偽の保証はありません。既存メディアの比ではない速報性と情報量を持つTwitterに対し、受け手側はそれらを見分ける力が求められることを忘れてはなりません。

●政治とTwitter

政治にTwitterを活用して成功したのが米国のオバマ大統領です。大統領予備選のときからTwitterを積極的に活用しています。国内では、民主党の逢坂誠二衆議院議員が2009年8月30日の衆議院選挙の開票で当選確実としたときに、Twitterで「当選確実なう」とつぶやき、注目を集めました。また、2010年元旦には、鳩山由紀夫首相がTwitterでつぶやき始めています。

2009年12月28日に東京都内で「ツイッター議員との今年最後のつぶやき祭り」というイベントが開催されました。Twitterを利用する政治家が集まって参加者との対話と交流を目的としたイベントです。企画から実施までが4日間、団体や個人のコネクションや根回しはいっさいなく、告知はTwitterのみで、13名の政治家と約100名の参加者が集まりました。政治というテーマで、短期間に多数の参加者を動員したのです。機動性と直接的なコミュニケーション機能を持つTwitterは、政治と国民の距離を縮めることができるひとつのツールなるかもしれません。

現在の公職選挙法下では、ブログやTwitterなどを選挙に利用できません。しかし今後、政治家にとってもTwitterを活用する機会が増えていくことでしょう。

課題と展望

短期間に急速に拡大したTwitterはサイバー攻撃の格好の的になっています。2009年8月にはサービス提供不能状態にするDoS(Denial of Service attack)攻撃を受け、2009年12月にはハッキングによるDNS(Domain Name System)障害が原因で、サービスが一時停止しました。

サイバー攻撃に限らず、インターネットを基盤とするサービスに共通するスパム、なりすまし、悪質なサイトへの誘導などさまざまな潜在リスクは、Twitterにも予想されています。リスクが顕在化したときに被害を最小限に抑えられるかどうかは、運営側次第といえます。2010年1月現在でも、アクセス数オーバーが原因と見られる障害が発生しているTwitterにとって、リスクへの対応は容易な課題ではありません。

しかしそうしたリスクに反して、利便性を追求したさまざまなプログラムやサービスにより、ユーザーはさらに増加する傾向にあります。Twitterの特長のひとつに外部サービスとの連携があります。Twitterは積極的にAPI(Application Program Interface)を公開しており、外部サービスやユーザーが作成したプログラムと連携して利用できるようになっています。本来、文字情報だけのTwitterで音声や画像の配信を可能にしたり、スマートフォンなどに内蔵されるGPSによるエリア情報とつぶやきを組み合わせたりするなどといったものです。その数はユーザーの増加につれて増えており、好循環を生み出しています。

企業単位での導入も始まっています。Twitterは他サービスよりも情報発信のしきいが低く、手軽に発信できるゆえに、ビジネスでの利用には不安が付きまといます。そこで企業や特定のグループ専用に、「Socialtext Signals」(米国Socialtext社)、「MODIPHI SMART for Business」(株式会社モディファイ)などTwitter同様のマイクロブロギングサービスと呼ばれるサービスが、すでに開始されています。企業内など閉じられたグループ内で、つぶやいたり、それをフォローしたり、されたりというTwitterと同様のサービスを利用することができます。企業に変革とスピードが求められる時代に、社内やグループ内でリアルタイムに手軽にコミュニケーションできるTwitterは強力なツールです。

将来、Twitterはコミュニケーションインフラの一端を担うようになるかもしれません。今後の拡大していく過程において、Twitter自身がどう変化するか、コミュニケーションをどう変えていくか。IT、通信、放送、出版などコミュニケーションに関わる分野に大きな変化をもたらす可能性を秘めています。

参考資料

  • 日経BP出版局編『Twitterの衝撃 140文字がビジネスからメディアまで変える』(日経BP社、2009年)
  • 朝日新聞 2010年1月24日号「ツイッターは政治を変える?」

参考サイト

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