Web 2.0
|
インターネット上でも書店でも頻繁に見かける「Web2.0」(ウェブニテンゼロと読む)。製品名でもなければ技術につけられた名前でもありません。例えば、かつて検索と言えばYahoo!、そして検索の主流はYahooカテゴリというディレクトリ検索でした。しかし、今日ではGoogleなどで単語での検索が当たり前になっています。個人のWebサイトの主流になったブログ、範囲を限定したコミュニティを実現するSNSなどWebは大きく変わりました。こうしたWebの新しい技術、傾向、特徴を総称してWeb2.0と呼んでいます。
Web2.0ってどんなサイトWebサイトが大きく変貌を遂げています。始めに2つのWebサイトを紹介します。
上記の2つのサイトが、Web2.0以前のWebサイトと大きく異なっているのは、「ユーザー自身の手でコンテンツが作られていること」、「衛星写真や航空写真のような貴重なデータを、だれもが手軽にストレスなく利用できること」です。どうしてこんなことができるのでしょうか。Web2.0とそれ以前を比較することから始めましょう。 Web2.0ってどんなことWeb2.0があるのだから、Web1.0もあることが考えてしまいます。実際には、Web1.0というときは、Web2.0と比較するときに、Web2.0以前を便宜的にそう呼ぶことが多いようです。世界で初めてWeb2.0を提唱したTim O'Reilly氏はWeb2.0を次の表で示しました。Web2.0の紹介ではよく使われる有名な表です。 「Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル」より オンライン百科事典と言えばかつてはBritanica Online、今日ではWikipediaがそれに代わっている、というようにWebに関する変化を、実際の企業、Webサイト、サービス、技術、ビジネスモデル、制作スタイル、料金システム、分類法など幅広い範囲に渡って比較しています。この比較されている項目の幅広さこそWeb2.0です。Web2.0は規格や製品、サービス名、バージョン番号ではありません。「Webが大きく変わった」、「具体的には上記の表の矢印が示すように、左から右へ変わった」、この変貌を遂げたWebの状況をWeb2.0と呼んでいるのです。
Web2.0の特徴は「ネットサーフィン」という言葉が流行りました。今日では誰もそうは言いません。Webがクリックしてリンクをたどって、画面を見るだけのものではなくなったからです。前項で紹介したWebはいずれも高い実用性を備えており、サービスとしてユーザーがアクションを起こして利用するためのものに変化しています。具体的に見ていきましょう。 Web同士の連携、マッシュアップWeb2.0の特徴は「単独のWebではなく、他のWebと連携して新しいコンテンツやサービスを生み出している」ことです。例えば、API(Application Program Interface)を公開することで、自サイトのコンテンツを他のWebと組み合わせて使えるようにすることができます。APIは、プログラムがその機能をほかのプログラムから利用できるようにするインターフェースのことです。これを公開することで、APIを自分のプログラムから呼び出し、受け取ったデータを自分のWebやサービスで利用できるようになります。有名なところではAmazon.comは自社商品のデータベースを外部に公開していますし、Google Mapsの地図マスターデータベースも外部から利用することが可能としています。このように他のWebのコンテンツを組み合わせてあらたなWebサービスやコンテンツを作り出すことをマッシュアップと言います。利用する側からは優れたデータベースを低コストでスピーディに活用できるメリットがあり、マッシュアップする側はマスターデータを管理することで、ビジネスチャンスを拡大するのです。 増殖するコンテンツ。ユーザー自身がコンテンツを増やしていくWeb2.0ではユーザー自身がコンテンツを作り、分類を進めます。 気軽に情報発信。ブログ、SNS2006年のブログ利用者数は2687万人、SNSの利用者数は1104万人、両方とも利用している人も1057万人と言われます(http://www.nikkeibp.co.jp/news/it07q1/526042/)。blogは、HTMLの知識を必要とせず、専用のツールも必要ありません。携帯電話からでも手軽にページを更新できます。blogの記事に対して、それを見た人が掲示板と同じ感覚でコメントを付けることができ、トラックバックで手軽にリンクを張ることができます。こうした手軽さが、個人用のWebサイトとして、日記の公開や個人情報の発信、友人・知人間のコミュニティ作りなどさまざまな用途で爆発的に普及しました。 永遠のベータ版Webサービスやプログラムがベータ版で提供されることが多いのもWeb2.0の特徴です。未完成の状態で公開され、利用するユーザーの声を取り入れながら完成に近づける手法です。数年を経過してもベータ版であることが少なくありません。これを「永遠のベータ」と呼ぶことさえあります。 Web2.0の便利さを提供する技術Web2.0技術の特徴として目立つのがRSS(Rich Site Summary)とAjax(エイジャックス:Asynchronous JavaScript + XML)です。ここで簡単に触れておきましょう。 本当に変わったのは何かWeb上のオンライン広告の世界では、DoubleClick社が広告サイトとしてポータルなどアクセス数の多いサイトを対象にしているのに対し、Google社は、blogなど個人サイトを対象にしています。前者は、数は少ないが予算の大きい大企業、後者は、予算は小さいが数が多い中小企業を相手にしているようなものです。通常のビジネスの世界では前者の方が効率よく売上や利益に結びつくというのが常識です。ところが、Webではこの常識が通じません。実際、数多くのblogにGoogle社のAdSense広告が組み込まれており、Google社は広告だけで32億ドルを稼ぎ、2007年4月にDoubleClick社を買収するまでになっています。 DoubleClick社とGoogle社という構図は、一見するとビジネスモデルの隆盛、技術の進歩、時代の変遷と捉えがちですが、その底流には、Webの進化があります。上図の「ロングテール理論」がリアルな世界の常識を変えてしまうように、Webの進化によって大きな変化が数多く生まれるのです。 Web2.0の次にくるものWeb2.0はいかにも過渡期であって、3.0、4.0と続いていくような印象を与えます。しかし、現実はWeb2.0そのものにも確実な定義があるわけではないので、Web3.0となるのか、それともそれ以外のものになるのか、明確ではありません。しかし、Web2.0がこのまま進化し、Webがプラットフォームとして、その上でサービスやアプリケーションが当然のように動作するような状況になったときにWebそのものよりもその上でのサービスやアプリケーション、さらにはその中で使われるデータの方が重要になってきます。だからこそ、PCにおけるMicrosoft、検索エンジンのGoogleのように、Web2.0以降の覇者を目指して、各社は自Webサイトのサービスの公開を急ぎ、永遠のベータ版として多くのユーザーを巻き込んで終わりのない開発を進めています。しかし、Web2.0はまだこれからです。Web上にどのようなサービスやアプリケーションが登場するか、まだまだ期待できそうです。 参考URL
|