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UP TO DATE Web 2.0
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インターネット上でも書店でも頻繁に見かける「Web2.0」(ウェブニテンゼロと読む)。製品名でもなければ技術につけられた名前でもありません。例えば、かつて検索と言えばYahoo!、そして検索の主流はYahooカテゴリというディレクトリ検索でした。しかし、今日ではGoogleなどで単語での検索が当たり前になっています。個人のWebサイトの主流になったブログ、範囲を限定したコミュニティを実現するSNSなどWebは大きく変わりました。こうしたWebの新しい技術、傾向、特徴を総称してWeb2.0と呼んでいます。

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Web2.0ってどんなサイト

Webサイトが大きく変貌を遂げています。始めに2つのWebサイトを紹介します。
「Web2.0」の代表的なWebサイトです。

Wikipedia(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/
オンライン百科事典
一般の人々の手により執筆・編集されるオンライン版百科事典です。「ウィキ (Wiki)はWebブラウザを利用してWebサーバ上のハイパーテキスト文書を書き換えることができるWebツール」の名称です。Wikipediaは、このwikiとencyclopedia(百科事典)を組み合わせた造語です。
日本語版は、409,000項目に及び、1時間あたり約20本程度の速度で増え続けています。
日本語だけでなく、世界中200を超える言語で製作されており、登録数100,000以上の言語だけでも14に及びます。(2007年9月1日現在)
Google Earth(グーグルアース)
http://earth.google.co.jp/index.html
衛星写真・航空写真による地理空間情報ソフトウェア。
宇宙から徐々に高度を下げていき、地球上の任意の場所の地形や町の様子を上空から見ることができます。
衛星写真と航空写真が使用されており、解像度は標準で15m、大都市や一部の施設では1mという高解像度の画像もあります。
画像データはGoogle社のサーバからインターネット経由で送られてきます。Ajax(後述)の採用でネット越しとは思えない滑らかな動作を実現しています。
Google社のWebサイトからプログラムをダウンロードして誰でも使用することができます。Windows、MacOS、Linuxに対応、日本語にも対応しています。

上記の2つのサイトが、Web2.0以前のWebサイトと大きく異なっているのは、「ユーザー自身の手でコンテンツが作られていること」、「衛星写真や航空写真のような貴重なデータを、だれもが手軽にストレスなく利用できること」です。どうしてこんなことができるのでしょうか。Web2.0とそれ以前を比較することから始めましょう。

Web2.0ってどんなこと

Web2.0があるのだから、Web1.0もあることが考えてしまいます。実際には、Web1.0というときは、Web2.0と比較するときに、Web2.0以前を便宜的にそう呼ぶことが多いようです。世界で初めてWeb2.0を提唱したTim O'Reilly氏はWeb2.0を次の表で示しました。Web2.0の紹介ではよく使われる有名な表です。

「Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル」より
(CNET Japan)
http://japan.cnet.com/column/web20/story/0,2000055933,20090039,00.htm

オンライン百科事典と言えばかつてはBritanica Online、今日ではWikipediaがそれに代わっている、というようにWebに関する変化を、実際の企業、Webサイト、サービス、技術、ビジネスモデル、制作スタイル、料金システム、分類法など幅広い範囲に渡って比較しています。この比較されている項目の幅広さこそWeb2.0です。Web2.0は規格や製品、サービス名、バージョン番号ではありません。「Webが大きく変わった」、「具体的には上記の表の矢印が示すように、左から右へ変わった」、この変貌を遂げたWebの状況をWeb2.0と呼んでいるのです。

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Web2.0の特徴は

「ネットサーフィン」という言葉が流行りました。今日では誰もそうは言いません。Webがクリックしてリンクをたどって、画面を見るだけのものではなくなったからです。前項で紹介したWebはいずれも高い実用性を備えており、サービスとしてユーザーがアクションを起こして利用するためのものに変化しています。具体的に見ていきましょう。

Web同士の連携、マッシュアップ

Web2.0の特徴は「単独のWebではなく、他のWebと連携して新しいコンテンツやサービスを生み出している」ことです。例えば、API(Application Program Interface)を公開することで、自サイトのコンテンツを他のWebと組み合わせて使えるようにすることができます。APIは、プログラムがその機能をほかのプログラムから利用できるようにするインターフェースのことです。これを公開することで、APIを自分のプログラムから呼び出し、受け取ったデータを自分のWebやサービスで利用できるようになります。有名なところではAmazon.comは自社商品のデータベースを外部に公開していますし、Google Mapsの地図マスターデータベースも外部から利用することが可能としています。このように他のWebのコンテンツを組み合わせてあらたなWebサービスやコンテンツを作り出すことをマッシュアップと言います。利用する側からは優れたデータベースを低コストでスピーディに活用できるメリットがあり、マッシュアップする側はマスターデータを管理することで、ビジネスチャンスを拡大するのです。

増殖するコンテンツ。ユーザー自身がコンテンツを増やしていく

Web2.0ではユーザー自身がコンテンツを作り、分類を進めます。
オンライン版百科事典の「Wikipedia」は、世界中のユーザーが執筆者になってコンテンツを作っています。英語版は、1,985,000項目(2007年9月1日)に及び、権威ある百科事典Britanicaの65000項目を凌駕しています。ただし、Wikipediaの記事の信憑性を疑う声もあります。誰でも執筆できることから、宣伝に利用したり、誹謗中傷や対立する人同士が訂正合戦に及んだりすることもあるからです。一方では、新聞に引用されたり、論文に引用されたりするケースも見受けられます。

気軽に情報発信。ブログ、SNS

2006年のブログ利用者数は2687万人、SNSの利用者数は1104万人、両方とも利用している人も1057万人と言われます(http://www.nikkeibp.co.jp/news/it07q1/526042/)。blogは、HTMLの知識を必要とせず、専用のツールも必要ありません。携帯電話からでも手軽にページを更新できます。blogの記事に対して、それを見た人が掲示板と同じ感覚でコメントを付けることができ、トラックバックで手軽にリンクを張ることができます。こうした手軽さが、個人用のWebサイトとして、日記の公開や個人情報の発信、友人・知人間のコミュニティ作りなどさまざまな用途で爆発的に普及しました。
限られた範囲で、ネットワーク上のコミュニケーションをしたいというニーズを捉えたのがSNS(ソーシャルネットワークサービス)です。ほとんどのSNSが「既存の参加者からの招待がないと参加できない」という会員制システムになっています。自分のプロフィール、日記帳、友人・知人のリスト、友人を紹介する機能、メッセージ送受信、掲示板、共有カレンダー、共通の趣味や特定の話題などの会議室、などのコミュニティ機能で構成されています。国内最大手のmixiの会員数は2007年5月に1000万人を超えています。blogやSNSは、企業や企業グループ間などビジネスでの利用も拡大しており、電話、メールに次ぐコミュニケーション手段にもなっています。

永遠のベータ版

Webサービスやプログラムがベータ版で提供されることが多いのもWeb2.0の特徴です。未完成の状態で公開され、利用するユーザーの声を取り入れながら完成に近づける手法です。数年を経過してもベータ版であることが少なくありません。これを「永遠のベータ」と呼ぶことさえあります。
例えば、Google Earthの最新版はバージョン4.2ベータとなっています。大容量メールサービスのGmailもGoogleカレンダーもログイン後の画面のロゴの下にはBETAの文字があります(すべて2007年9月1日現在)。Googleに限らず最近のWebサービスにはベータ版という表示を多く見かけます。SNSのmixi(http://mixi.jp/)もトップ画面のmixiのロゴの下にベータバージョンの文字があります。
ユーザーには製品版としてリリースしたものを提供すべきだという批判の声もあります。しかし、「永遠のベータ」はユーザーとの連携でプログラムを完成に近づけていくこと、リリース後も開発を続けていくという姿勢であると前向きに評価する声も少なくありません。

Web2.0の便利さを提供する技術

Web2.0技術の特徴として目立つのがRSS(Rich Site Summary)とAjax(エイジャックス:Asynchronous JavaScript + XML)です。ここで簡単に触れておきましょう。
RSSはWebサイトやblogの連携を実現します。Webサイトの見出しや要約を記述したXML文書です。ページのタイトル、アドレス、見出し、要約、更新時刻などが書かれています。blogや新聞社など多くのWebがRSSを提供しています。RSSリーダーというクライアントソフトを自分のWEBサイトやblogに組み込んでおけば、最新のRSSを読込んで、自動的に最新のニュースの見出しや、更新されたblogの見出しを読込んで自動的に表示することができます。相手のコンテンツを自サイトのコンテンツのように利用することができます。Web2.0でのWebサイトどうしの連携に欠かせない技術です。
Google Earthはネット越しに操作しているとは思えないほどなめらかに動作します。これを実現しているのがAjaxです。通常、WEBブラウザは画面のリンクがクリックされてはじめて、WEBサーバにデータを要求し、送られてくるデータで画面を表示しなおす仕組みになっています。ところが、Ajaxはバックグラウンドでサーバとやり取りし、リンクのクリックを待たずに次の動作の準備を進めます。ユーザーがクリックしたときにはすでに準備ができており、スムーズな動作を実現します。特別なソフトウェアやWebブラウザへのプラグイン(専用ソフトウェアの組込)を必要としないため、導入が簡単でネット越しのサービスやアプリケーションに最適な技術として今後も利用が進んでいくものと考えられます。

本当に変わったのは何か

Web上のオンライン広告の世界では、DoubleClick社が広告サイトとしてポータルなどアクセス数の多いサイトを対象にしているのに対し、Google社は、blogなど個人サイトを対象にしています。前者は、数は少ないが予算の大きい大企業、後者は、予算は小さいが数が多い中小企業を相手にしているようなものです。通常のビジネスの世界では前者の方が効率よく売上や利益に結びつくというのが常識です。ところが、Webではこの常識が通じません。実際、数多くのblogにGoogle社のAdSense広告が組み込まれており、Google社は広告だけで32億ドルを稼ぎ、2007年4月にDoubleClick社を買収するまでになっています。

DoubleClick社とGoogle社という構図は、一見するとビジネスモデルの隆盛、技術の進歩、時代の変遷と捉えがちですが、その底流には、Webの進化があります。上図の「ロングテール理論」がリアルな世界の常識を変えてしまうように、Webの進化によって大きな変化が数多く生まれるのです。

Web2.0の次にくるもの

Web2.0はいかにも過渡期であって、3.0、4.0と続いていくような印象を与えます。しかし、現実はWeb2.0そのものにも確実な定義があるわけではないので、Web3.0となるのか、それともそれ以外のものになるのか、明確ではありません。しかし、Web2.0がこのまま進化し、Webがプラットフォームとして、その上でサービスやアプリケーションが当然のように動作するような状況になったときにWebそのものよりもその上でのサービスやアプリケーション、さらにはその中で使われるデータの方が重要になってきます。だからこそ、PCにおけるMicrosoft、検索エンジンのGoogleのように、Web2.0以降の覇者を目指して、各社は自Webサイトのサービスの公開を急ぎ、永遠のベータ版として多くのユーザーを巻き込んで終わりのない開発を進めています。しかし、Web2.0はまだこれからです。Web上にどのようなサービスやアプリケーションが登場するか、まだまだ期待できそうです。

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