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論文詳細

日本語を母国語とするビジネスパーソンの 英語能力分析と向上のための提言

日本アイビーエム株式会社
論文要旨

日本語を母国語とするビジネス実務者の多くにとって,英語コミュニケーション能力の不足は共通の悩みである.経済のグローバル化に伴い,日本企業の世界マーケット進出や,外国人従業員の増加,オフショア開発の増加など,グローバリゼーションのための早急な英語への対応が必要になっている.こうした社会情勢の中で日本人ビジネスパーソンにも高度な英語コミュニケーション能力が必要な時代に向かっている.本稿では筆者の所属する企業で英語力調査を行い,業務で必要になる英語コミュニケーション能力の定義と測定を行った上で,他の非英語圏地域との能力比較を通して課題点を明確化し,改善策の試行までプラクティスをまとめた論文である.
1章は経済のグローバル化によって,従来は英語能力を必要としなかった日本人ビジネスパーソンでも,英語に向き合わなければならない時代になりつつあるというビジネス環境の変化の解説と現状の整理を行った.2章は弊社日本法人における英語能力調査についての内容である.英語検定による定量的な比較では中国法人を上回ったが,実際の英語能力ではほぼ全ての指標で中国法人を下回った.3章は日本法人と中国法人の両方に勤務経験がある複数の有識者インタビュー結果である.英語の業務利用頻度による英語力への影響に関する指摘が多かった.本調査では日本法人と中国法人の英語利用頻度の差があることを確認すると共に,業務における英語の利用頻度が英語コミュニケーション能力と強い関連性があることを相関分析で確認した.4章は概念実証として小規模な部門で英語公用語化を試行した内容と結果の報告である.英語能力の有意な向上効果が確認でき,英語公用語化が英語能力の向上に寄与することが確認できた.5章は英語指導者の指摘による日本人ビジネスパーソンの英語技術の弱点を整理した内容である.6章はICT技術者における英語能力について筆者の考察と補足を行った.7章は本論文の結論と将来に向けての構想をまとめている.
本調査において同一企業の日本法人と中国法人での調査を行った事は,既存の同様の研究のように日本人だけの調査を行った場合とは異なり,業務内容がほぼ同じ環境における国際的な比較として,日本人ビジネスパーソンの英語能力の特徴を捉える上で非常に有効な試みである.本論文における提言としては,日本人ビジネスパーソンが短期間に業務の現場で使える英語コミュニケーション能力を身に付けるための最適な方法は,「英語を使って業務を行う」ことである.「実践こそが近道」という学習法は,決して新しい考え方ではないが,外国語学習においては現代もそれが最適解であることが,今回の国際調査で改めて裏付けられた.
グローバリゼーションへの対応として英語コミュニケーション能力向上に取り組む企業や団体,そしてなにより英語能力の向上に悩む実務現場におけるビジネスパーソンの皆様において,本論文を少しでもお役立ていただくことができれば幸いである.

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