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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

雑誌FUJITSU

2003-7月号 (VOL.54, NO.4)

富士通の最新技術を隔月に紹介する情報誌です。 冊子体の販売はしておりませんのでご了承下さい。


雑誌FUJITSU 2003-7

特集: 「研究開発最前線-安心・安全で快適なユビキタス情報社会を実現する最先端技術-」

本特集では,安心・安全で快適なユビキタス情報社会を実現するために富士通研究所が取り組んでいる最先端技術の研究開発状況を紹介いたします。


株式会社富士通研究所 代表取締役社長
藤崎 道雄
株式会社富士通研究所  代表取締役社長 藤崎 道雄 写真

研究開発最前線特集に寄せて(PDF)

富士通では,ユビキタス情報社会という新たな変革の波を自ら創り出すために,デバイスからプラットフォーム,サービスまでの広範囲なテクノロジをバリューチェーンとして結びつける研究開発のプロジェクトに取り組んでいます。 このバリューチェーンプロジェクトの「夢」である次世代製品を、お客様の視点に立って「かたち」にしていきます。

特集: 研究開発最前線 目次〕

ユビキタス時代の安心・安全で快適な
ブロードバンド・インターネットソリューション

  • Webサービスのダイナミック連携技術
  • シームレスローミング技術
  • 不正アクセス対策技術とその統合化
  • バイオメトリクス認証技術
  • 認証デバイスのセキュリティ技術
  • インターネット対応型ロボット:MARON-1

ブロードバンド・インターネットソリューションを実現する技術

  • ユーティリティコンピューティング技術
  • オーガニックサーバ
  • 次世代IPプラットフォーム -フォトニックバーチャルルータ-
  • 超高速フォトニックネットワーク
  • 将来の高速モバイルインフラを支える技術
  • 先端システムLSI技術
  • 先端実装技術
  • ナノワイヤプロテインチップ技術の研究

一般

  • プリント基板回路の信号波形自動測定システム

特集:研究開発最前線


ユビキタス時代の安心・安全で快適なブロードバンド・インターネットソリューション

インターネット上の情報やサービスが増え便利になってきたが,数が増えすぎたために人間が一つ一つを取り扱うことが困難になってきた。このため,システムが人間に代わって情報やサービスを取りまとめ,人間に分かりやすい形で提示することが重要になってきている。しかし,ネットワーク上で変化しつづける情報やサービスにシステムが自動的に対応するようなダイナミックな連携の実現のためには,従来技術だけでは不十分で,新たな技術開発が必要である。
本稿では,ダイナミック連携について,富士通研究所で取り組んでいるテーマについて紹介する。最初に,基礎となるWebサービスやセマンティックWebの概要を説明した後,パーソナルサービス連携,ポートレット連携,ユビキタスサービス連携,情報連携というそれぞれの立場からダイナミック連携について述べる。

湯原 雅信,松本 達郎,井形 伸之

ユビキタス時代の中核を成す技術として注目されている異種ネットワーク間のシームレスローミングは,状況に応じて無線LANや携帯電話といったアクセスネットワーク間を移動しても,ユーザがインターネット上のサービスを継続的に利用できるようにするための技術である。シームレスローミングの課題としては,最適なネットワークの自動選択と接続,通信中のネットワーク切替えに対するセッション維持がある。
本稿ではこれらを解決する手段として,エージェントによるネットワークの自動選択と,Mobile IPによるセッション維持について述べる。さらに,リアルタイムサービスへの取組みとして階層化Mobile IPをベースとした高速かつスケーラブルにローミングできる技術についても紹介する。

加藤 次雄,藤野 信次

ネットワーク環境やコンピュータ利用環境の進化に伴い,不正アクセスの手法が多様化してきている。このため,ネットワークやコンピュータにおいて,各種の不正アクセス対策を独立に行う従来のアプローチでは対応が困難になってきている。多様化してきた不正アクセスに対応するため,新たに出現してきている不正アクセスに対する個別の対策技術を開発するとともに,個別の不正アクセス対策を連携させて統合的な対策を行う仕組みが必要となる。
本稿では,近年における不正アクセス対策の現状と要件を整理するとともに,富士通研究所の取組みとして,システムの安全性を維持する技術,将来起こる不正アクセスの予兆を検知する技術,ワームによる被害を抑止する技術,セキュリティ対策技術の連携,統合化について紹介する。

鳥居 悟,三友 仁史,面 和成

バイオメトリクス認証は,人の身体に備わる特徴を利用して本人認証を行う。認証のキーとなる情報の忘失,盗難,偽造の心配の少ない,本質的に安全性の高い認証である。
指紋認証は高識別を特長に早くから実用化が進んでおり,PC用をはじめ広範囲に適用されている。富士通研究所は,高性能と導入しやすさを両立させた小型のネットワーク認証装置を開発した。手のひら認証(静脈パターン認証)は高精度認証技術として新しく製品化を目指している。静脈パターンはセンサに手をかざすだけの非接触入力が可能であり,柔軟で使いやすい認証システムが期待される。顔や声による認証は更に利用者の負担の少ない自然な認証を実現でき,照合を行っていることを意識させない認証も可能となる。
本稿では,富士通研究所におけるこれらのバイオメトリクス認証技術の最新の研究開発成果を紹介する。

森 雅博,新崎 卓,佐々木 繁

インターネットでの個人認証や,流通分野での物品認証で利用される高い安全性と携帯性を持った認証デバイスと,これに関連したセキュリティ技術に関して解説する。物品認証としては,無線技術を利用して物品の情報をネットワークに取り込むRFID技術が注目されており,RFIDタグチップを紹介する。富士通のRFIDタグチップは,情報蓄積用にFRAMを利用することによって,従来と比較して通信距離と読出し速度の向上,および低コスト化が実現できる。個人認証としては,PKIでの個人認証に使用する秘密鍵や,個人情報を蓄積するためのスマートカードがe-Japanや金融分野で利用され始めている。スマートカードに関しては,そこに格納される個人情報の保護が最も大きな課題であり,情報読出し攻撃の最新手法である電力解析攻撃と,その防御法に関して,富士通研究所の取組みを紹介する。

鳥居 直哉,桝井 昇一

近年,ロボットは,産業用ロボット以外にも,パーソナル用途への展開が始まっており,ペット型ロボットなどのエンタテイメント系ロボットが既に販売されている。将来,ロボットは,生活・福祉・医療・公共といった分野への利用の拡大が予想されており,家庭内などでも日常生活をサポートするようになると考えられている。しかし,実用面を重視したロボットは,ほとんど製品化されていない。今回,実用的なロボットを実現する最初のステップとして,外出先から携帯電話で操作して自宅の様子の確認や,家電操作を行うことができるインターネット対応型のホームロボットであるMARON-1(Mobile Agent Robot Of Nextgeneration)を開発した。
本稿では,本ロボットが実行できる機能,本ロボットのハードウェア・ソフトウェア構成,本ロボットを操作するための運用ネットワークを紹介する。

神田 真司,村瀬 有一,藤岡 和夫

ブロードバンド・インターネットソリューションを実現する技術

近年,様々な業務やサービスがインターネットデータセンタ(IDC)によって提供される。富士通研究所では,サービスを提供するに当たって,IDCのITリソースを共有化することによって,予期せぬ膨大なアクセスや業務量の増大に対しても,過剰な投資をすることなく,サービスを安定して提供できるユーティリティコンピューティング技術を開発した。本技術はこれからのアウトソーシングビジネスを支える技術として,IDCでの活用が期待されている。
本稿では,IDCを運用するための基本要件をまとめた上で,本技術を利用することによるセンタ利用者の利点を解説する。さらに,ユーティリティコンピューティング技術を実現するための要素技術であるシステム監視・計測技術やリソース再配置技術,制御技術について述べる。

安達 基光,折笠 秀明

近年のITの普及に伴い,サーバシステムは24時間365日ノンストップで動作することが要求されている。一方,システムを構成する機器の数は膨大化,機能は複雑化しており,それらの管理を人手で行うことは困難になりつつある。こうした中,富士通研究所はこのような管理コストの削減を目指し,サーバが自ら状態を判断し,最適な状態で動作する自律機能を持ったオーガニックサーバの研究開発を進めている。オーガニック(Organic)には有機物(生物から作られるもの)という意味と有機的(個々の部品が調和を取りながら全体として機能する)という意味がある。オーガニックサーバは後者の意味であり,管理者が一つ一つ指示を与えなくても構成要素が自律的に調和を取って機能するサーバを意味する。
本稿ではこれまでに開発したオーガニックサーバの基本機能,試作したオーガニックサーバについて説明する。

西川 克彦,服部 彰,勝野 昭

フォトニックバーチャルルータは,著者らが提案している次世代IPネットワークアーキテクチャである。エッジノードにおいてIPパケットを終端し,ユーザが要求する様々なサービスに対応する最適なデータプレーンのパスおよび経路をコア網で提供し,キャリアIPネットワークをあたかも仮想的な単一ルータのようにユーザに見せ,制御・運用するアーキテクチャである。本稿では,フォトニックバーチャルルータのコンセプトを提案し,アーキテクチャの核となる技術であるラベル/TDM統合スイッチ,AOTFを用いたDOADM,MEMS光スイッチ,そしてそれらを統合的に制御するGMPLSを用いたコントロールプレーンについて概説する。最後にそれらの試作システムを紹介する。これら高性能光・電気スイッチング技術と,GMPLSを用いることにより,次世代IPネットワークの大容量化を達成するとともに,ネットワークの効率的かつ簡易な運用を実現することが可能になる。

宗宮 利夫,朝永 博,甲斐 雄高,佐脇 一平

フォトニックネットワークは光の優れた特性を最大限に生かし,来るべきユビキタス社会を支えるインフラストラクチャを提供するもので,光ファイバと光デバイスの超広帯域,超高速性により,高速なネットワーク環境を広域に提供することが可能となる。光技術による経済的でトランスペアレントかつフレキシブルなネットワークの構築は,今後ネットワークとしての付加価値を生み,多種多様な新しいサービスや新たなITの利用形態を創出していくものと期待される
本稿では,次世代の超高速フォトニックネットワーク技術として現在研究開発を進めている,40 Gbpsの波長分割多重伝送技術とそれを支える光デバイス技術,160 Gbpsの超高速光信号処理技術,量子ドット光増幅器/スイッチ技術を紹介する。

尾中 寛,河合 正昭,菅原 充

数年後には第3世代移動通信システムの高度化,さらに2010年頃には第4世代の移動通信システムが商用化されると予想される。富士通研究所では,これらに適用することを想定して伝送速度の一層の高速化を実現するための技術開発を行っている。
一つ目のアダプティブアレイアンテナ技術は,デジタル信号処理によってビームパターンを形成する。これによって干渉を低減できるので,加入者収容数の増加またはセルの拡大を図ることができる。二つ目の高効率アンプは基地局装置の小型化,消費電力削減に寄与する。三つ目の超伝導フィルタはガードバンド幅を狭めて,周波数利用効率向上に寄与する。四つ目の高速伝送用信号処理技術は,100 Mbpsの高速伝送をセルラーシステムで実現するための変復調などの技術である。
本稿では,この四つの技術の開発状況について述べる。

安井 豊,田中 良紀,大石 泰之,山中 一典

これからのユビキタス情報社会における多様な情報家電機器のキーデバイスとして,高性能で低電力のシステムLSI(SOC:System-on-Chip)が期待されている。しかし,微細化・高集積化の進展とともにSOC設計は複雑度を増し,従来のASIC設計手法では対応が困難になってきた。顧客ニーズに合致したSOCをタイムリに,かつ効率的に開発するためには開発の仕組みや技術面で数々のブレークスルーが必要である。
本稿では,富士通および富士通研究所が取り組んでいる次世代SOC開発のための取組みとして,「FR-VプロセッサをプラットフォームとしたSOCソリューション展開」,それらSOC展開を支える設計環境としての「プラットフォームベースのSOC設計手法」,微細化・高速化に対応したアナログ系回路の具体例としての「10 Gbpsの高速インタフェース回路技術」の三つを紹介する。

今村 健,久保沢 元,東 明浩,後藤 公太郎

近年,情報技術が進歩していく中で,各種の情報処理機器,電子機器が産業・経済に占める役割は,ますます大きくなってきている。
その中においても,実装技術は各種の電子機器を組み立てる際の要であり,半導体技術の進歩とあいまって,重要性が見直されつつある。実装技術とは半導体などの個々の素子を有機的に結びつけシステム化する手段である。これに要求される内容は,高性能化,小型化,低コスト化に加えて,環境に配慮することなど多岐にわたっている。
富士通研究所では実装技術に関わる研究開発として回路のベースとなる配線基板,素子を搭載する際の接合技術,素子や装置の冷却技術,およびノートパソコンの筐体材料・筐体成形技術に取り組んでいる。
本稿では,これらの技術を紹介するとともに今後の展望について述べる。

堀越 英二,山岸 康男

疾病の予防や早期治療を実現して医療費の効率的な使用と個人の生活の質(Quality ofLife)を向上させるためには,疾患リスクの高い人たちの罹患指標となる疾患マーカたんぱく質を日常的にモニタし,医療健康ネットワークを通じて医療機関との連携を進める必要がある。このため,富士通研究所は慢性の感染症や疾患の状態を簡便にモニタできる装置への適用を目指して,多数のたんぱく質を同時に定量可能なプロテインチップの開発に着手し,プロテインチップに固定された抗体がたんぱく質を捉えたことを検知して観察可能な信号に変換するナノワイヤトランスデューサの開発を行っている。一例として,一端に蛍光色素を導入したオリゴヌクレオチド鎖をナノワイヤとし,電極に吸着した状態から電場をかけてナノワイヤを水溶液中に放出し,その際の蛍光強度の増減をモニタした。蛍光強度変化すなわちナノワイヤの拡散速度を指標とすることで,ナノワイヤへのたんぱく質の結合の有無が識別可能なことを示唆する結果を得た。
本稿では,現在研究を進めているナノワイヤトランスデューサの検討状況について述べる。

藤田 省三

一般

プリント配線基板回路の電気信号波形を自動計測し,検証試験をサポートするシステムを開発した。プリント基板のCADデータを登録し,回路図またはパターン図から測定したい部位と測定条件を指定すれば,後はロボットがオシロスコープのプローブを基板上の該当箇所にコンタクトさせ,波形を自動測定し波形データを保存する。従来の手作業での測定では,コンタクト点を割出す作業と,近接した場所に複数のプローブを手でコンタクトさせる作業に大変な労力を費やしていたが,このシステムを使うことでこれらの作業はなくなる。開発に当たって,コンタクト精度をいかに確保するかが最大課題であったが,画像認識処理を使った各種補正をすることで,0.4 mmピッチのICピンへのコンタクトも可能となった。
本稿では,システムの概要を述べるとともに,画像認識処理による補正技術について述べる。

藤本 教幸


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