
持田製薬は、30年以上使い続けたメインフレームの基幹システムを刷新した。新たに導入したのは、「SAP ERP」のパッケージ。この大規模プロジェクトを全面的にサポートしたのが富士通である。アドオン(追加拡張機能)の開発を極力減らすという大方針のもと、同社は現場を巻き込んだプロジェクト推進体制を構築。現場と一緒にプロジェクトを進めたことで、満足度の高い新基幹システムを実現することができた。予定通りの納期と費用で完了したプロジェクトの軌跡を振り返る。
[ 2010年10月1日掲載 ]
| 導入事例概要 | |
|---|---|
| 業種: | 医薬品 |
| 導入パッケージ: | SAP ERP |

持田製薬株式会社
企画管理本部
情報システム部長
事務サービスセンター長
島田 径也氏
いま、製薬業界は企業間の競争激化を受けて企業統合や戦略的提携といった動きも目立ち、そのビジネス環境は大きく変化しつつある。
こうした状況のなか、持田製薬は「循環器」「産婦人科」「皮膚科」「救急」の重点4領域への集中を図りつつ、環境変化に迅速に対応できる体制づくりを進めている。その一環として位置付けられるのが、同社が2009年に行った基幹システムの刷新である。従来のメインフレームが担ってきた販売や会計などのシステムを、独SAP社が提供するERPパッケージ(注1)にリプレースするという大規模なプロジェクトだ。
「当社は30年以上、メインフレームで基幹業務を動かしてきました。痒いところに手が届く使い勝手の良いシステムですが、それは職人技で構築し維持してきたものです。5年、10年先を見据えたとき、『このままでいいのか』という議論は以前から行われていました」と語るのは持田製薬の島田径也氏である。旧システムに精通するベテラン技術者は次第に少なくなる。しかも、内部がスパゲティ状に絡み合っているので、ビジネスニーズへの対応にはどうしても時間がかかってしまう。
また、島田氏は次のように打ち明ける。「今後、新しいビジネスプロセスが加わるかもしれませんし、法規制が変わるかもしれません。こうしたビジネスの変化に即応することが、既存システムでは難しかったのです」。ビジネスの環境への変化力を高めるため、あるいは業務改革を進めるうえで、ITがネックになるような事態は避けなければならない。様々な環境変化が予想される時代だけに、そんな問題意識があったという。
さらに、内部統制への対応という課題もあったという。「既存システムのまま内部統制対応を行うという方法もありますが、その場合、かなりの投資をしてもそれに見合う機能になるかどうか疑問です。そこで、内部統制の観点でも実績のあるSAPのパッケージを用いて、IT基盤を刷新しようと考えたのです」(島田氏)。
持田製薬が導入を決めたERPの適用範囲は、財務会計と管理会計、販売、物流、在庫購買などの領域である。こうした大規模プロジェクトでは、専任のメンバーを配置するのが普通だ。しかし、以前から継続的な業務改革を進めてきた同社の場合、人的なリソースの余裕が少なく、専任メンバーを立てるのは難しかったという。「当社社員は兼任としてプロジェクトに携わり、リソースの不足分は、SIパートナーに対応をお願いすることにしました」と島田氏。こうしたニーズへの対応力、あるいは製薬業界におけるSAP ERPの導入実績などを総合的に評価した結果、持田製薬は富士通をSIパートナーに選定した。
プロジェクトは2008年7月にスタートし、当初の予定通り1年後の2009年10月に本稼働を始めた。ただし、導入フェーズスタートの1年前から検討を重ねていたことが、プロジェクトの成功につながったと島田氏は指摘する。「1年の準備期間中に、プロジェクトにどのような課題があり、どうすればそれをクリアできるかといった検討を進めてきました。その結果、確信を持って導入フェーズに入ることができました」(島田氏)。
念入りな準備に加えて、プロジェクトの推進体制も成功の大きな理由である。兼任とはいえ、持田製薬側のメンバーは関係各部門の現場リーダークラス。基幹システムのユーザーとして業務プロセスを担っている人たちが参画したことで、業務に適合した新システムが出来上がった。「実務のリーダーたちと一緒になって、新しいシステムのあり方を議論しました。自分たちが主体的に納得のうえで決めたため、実稼働後にしばしば問題となるユーザー部門でのオペレーションミスなどのトラブルはほとんどありませんでした」と島田氏は語る。
しかしながら、既存の業務プロセスに合わせてカスタマイズ(アドオン開発)を増やしたわけではない。むしろ、アドオン開発を最小限にすることを、プロジェクトの基本方針として徹底した。富士通側のプロジェクトリーダーが「ほかの製薬メーカーと比べても、極端にアドオン開発が少ない」と驚くほどだ。「自社プロセスを標準プロセスに合わせるというのが、大きな方針でした。ただし、競争力につながる業務プロセスについては、アドオン開発を行いました。また、取引先のご要望が強い場合にも、例外的にアドオン開発を認めました」(島田氏)。
一般に、ERPプロジェクトは途中でアドオン開発が増えてしまい、結果的に納期遅れや開発費用の増加につながることが少なくない。持田製薬はこうした事態を招くことなく、予定の納期とコストでプロジェクトを完遂した。その背景にあったのは、経営トップをはじめ各レベルでの強力なリーダーシップである。


持田製薬株式会社
企画管理本部
情報システム部
システム運用
マネジャー
三日市 尚紀氏
2009年の本稼働以降、新基幹業務システムは順調に動いている。現在は導入効果の測定が行なわれている段階だが、「期待した効果は、概ね実現できている」と持田製薬の三日市尚紀氏は見ている。
メインフレームからオープンシステムに移行したことで、ビジネス環境の変化や抜本的な業務改革に対応可能なIT環境が整った。三日市氏は「拡張性、柔軟性の高いIT基盤ができた」と語る。
また、従来は基幹業務システムのほかに約40の個別の業務システムがあったが、その半分をSAP ERPパッケージの機能で代替することで、周辺システムを約20に減らした。さらに、業務改革の観点では、持田製薬の増渕智成氏が「月次決算の集計を、2日短縮することができました」と説明する。


持田製薬株式会社
企画管理本部
経理部 財務
マネジャー
増渕 智成氏
加えて、運用面での安心感も大きいと三日市氏は語る。「新システムのサーバも富士通製ですし、アプリケーションやインフラの運用も富士通の運用センターにお任せしています。したがって、もし何かのトラブルがあっても、問題の切り分けで困ることはなく、スピーディーな対処が可能になります。その意味で、アプリケーションやインフラの問い合わせ先窓口が一本化されているメリットを実感しています」。
今回のプロジェクトには、ピーク時に富士通側から約50人のエンジニアが参加した。その中の主要メンバーはシステム構築後も、引き続き運用管理を担当しているという。こうしたサポート体制も、持田製薬の安心感につながっているようだ。
2013年、持田製薬は創業100周年の節目を迎える。その節目を前に完成した新基幹業務システムは、同社の次の世紀を支える重要な経営基盤として、今後も成長を続けていくことだろう。その成長をサポートするのが富士通の役割である。
「今回のプロジェクトを通じて、当社社員と富士通の方々との間に信頼関係が生まれました。個人同士の付き合いは今も続いており、お互いに学び合うことも多いと思っています」と語る島田氏。ITパートナーからビジネスパートナーへと、富士通に大きな期待を寄せている。
本プロジェクトは、幅広い業務システムの刷新でしたが、持田製薬様にはプロジェクト開始前から現場リーダーを中心に経営トップの方も積極的に参加いただき、スケジュール通り、安定稼動させることが出来ました。
持田製薬様の経営基盤を支える重要なプロジェクトを弊社にご用命いただいたことを大変光栄に感じております。
今後も、持田製薬様のビジネスパートナーとなるべく、一丸となってサポートさせていただく所存です。
産業ビジネス本部
ライフサイエンス統括営業部
第一営業部
担当課長
島田英幸
産業ビジネス本部
ライフサイエンス統括営業部
第一営業部
増田宗則
SAP導入で基幹システム刷新、というのは陳腐化されたテーマのようですが、稼働直後から安定してSAPシステムを有効に使って頂けるのは容易なことではありません。これはお客様が一丸となって業務改革を推進し、運用定着化の準備を進めてこられた結果です。
富士通は導入後の運用保守も継続してお任せ頂いておりますが、今後もお客様の声を聞かせて頂きながら、更なるシステムの有効活用をご提案してまいります。
ERP事業本部
SAPビジネスセンター
担当部長
請川勘次
| 本社 | 〒160-8515 東京新宿区四谷1-7 |
|---|---|
| 代表取締役社長 | 持田 直幸 氏 |
| 創業 | 1913年4月16日 |
| 設立 | 1945年4月28日 |
| 資本金 | 72億2900万円 |
| 従業員数 | 1727名(連結) |
| 売上高 | 785億4900万円(連結)2010年3月期 |
| ホームページ | 持田製薬株式会社様 |
日経BP社の許可により「日経ビジネスオンライン SPECIAL(2010年9月7日~9月30日実施)」から抜粋したものです。禁無断転載(c)日経BP社
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