導入事例
富士通株式会社 テクノロジセンター
LSI-PCB協調設計によりノイズ対策を最適化
解析ソフトの活用でASSPを短期間に開発
車載端末用ASSP(特定用途向け標準LSI)の開発に、伝送波形解析ソフトのSignalAdviserや電源ノイズ解析ソフトのSIGAL-PIを活用、LSI-PCB一体シミュレーションによるノイズ対策の最適化を図った。シミュレーション結果をもとにPCB設計を考慮したASSPを実現。さらに成果はPCB設計ガイドラインとしてユーザーにフィードバックされ、次世代車載端末の開発に役立てられている。ASSPの高速メモリインターフェース部分の開発期間は従来比約3分の1に短縮されるなど、設計の効率化も実現している。
| 導入事例キーワード | |
|---|---|
| 設計品: | 各種シミュレーションツール |
| ソリューション: | PLMソリューション
|
| 製品: | Signal Adviser
|
カーナビゲーションやデジタルダッシュボードなど、車載端末市場が急速に拡大している。データ伝送速度の向上やプロセスの微細化によって、コンパクトで高精細の画像装置が活用しやすくなったためである。しかし、問題も浮上している。設計マージンの減少による設計難易度の上昇もその1つ。特に低電圧化によりノイズの許容マージンが減少していることは、動作保証の点からも重要な課題になりつつある。
協調設計によりPCB設計を考慮したLSIを実現

リファレンスボードに搭載した、
カーナビ、デジタルダッシュボード向けASSP
富士通のテクノロジセンターでは、こうした設計マージンの適正化や回路設計上の総合的なノイズ対策に取り組んでいる。伝送波形解析ソフトのSignalAdviserや電源ノイズ解析ソフトのSIGAL-PIを使ったLSI-PCB(プリント基板)一体解析によるノイズ対策もその1つである。
同社では先ごろ、これらのツールを活用して開発した車載端末用ASSPを発売した。専用のグラフィックスディスプレイコントローラを搭載し、車載ネットワーク、ハードディスク接続など各種メディアに対応した高速メモリインターフェースやプログラム保護機能を持つなど、次世代の車載端末に要求される多彩な機能をバランスよく1チップに集積した製品である。
機能面もさることながら、注目に値するのが開発プロセスの斬新さ。従来、LSIを開発する際には、LSI単独でタイミングなどのスペックを決めていたが、それだとLSI側ばかりがマージンを持つスペックになりやすい。その結果、PCB側に許容されるマージンが少なくなり、PCBの設計条件が厳しくなるという問題があった。これに対し、新しいASSPの開発では、PCB設計を考慮したPCB込みの協調設計が行われた。
「LSIだけを自己満足で作っても、どんな使われ方をするのかを想定していないと、実際に部品などを組み込んだ時にトラブルの原因になりやすいからです」と回路技術開発センター回路技術グループプロジェクト課長の登坂正喜は語る。
伝送波形と電源ノイズのシミュレーションで大きな成果

LSI電源モデルとSIGAL-PIによる、LSI-PCB一体シミュレーション
左:詳細PCB配線
右:SIGAL-PI Post-PCB解析結果
ASSPはメモリにDDR2を使用し、333Mbpsの動作スピードで32bit幅の多ビット同時動作バスを持つチップ。しかし、90ナノメートルの微細プロセスを用いノイズマージンも小さくなるため、いかにして伝送波形品質(シグナルインテグリティ)と電源品質(パワーインテグリティ)を確保するかが重要である。

登坂 正喜
富士通株式会社
テクノロジセンター
回路技術開発センター
回路技術グループ
プロジェクト課長
そこで、まず、高速信号がスムーズに流れるよう配線性を考慮した。ビア(信号路の切り替え部品)を使えば配線の途中を交差させることが可能だが、電源グランドプレーンに穴を開けることになり、電源の品質低下やインピーダンス(抵抗)の不整合のもとになる。それを避けるために、LSI内の信号の並びやパッケージからPCBにつなぐところのピンの並びまでを最適化した。
このように、配線性を考慮しながら、それと併行してSignalAdviserを使ってクロックやデータバス、アドレスなどの伝送波形品質を評価した。どんな終端方法がよいか、各セグメントの配線長はどのくらいがよいかなどを、波形を見ながら最適化を図った。
次に、SIGAL-PIを活用して電源ノイズシミュレーションを行った。SIGAL-PIでCADデータからPCBの電源モデルを抽出し、それにLSIのモデルをつなげてトータルで電源ノイズを評価した。
SIGAL-PIは、LSIとPCBのノイズ分布を同一画面に色分けして表したり、波形イメージで表したりできるので、ノイズの発生状況を容易に把握できる。具体的には、分布図や波形イメージを見ながら、パスコン(バイパスコンデンサ)を入れた場合と入れない場合など、様々なフィージビリティを検討し、パスコンの配置や電源ピンの数を決めた。
「ノイズ対策をPCBができあがった後に実機で行おうとすると、対策の手段が限定されてしまい、十分な対策ができません。PCBを作る前にこのような形でシミュレーションしておけばLSIとPCBトータルの視点で最適な対策をとることができます」(登坂)。
ノイズシミュレーション結果からPCB設計ガイドラインを作成

SignalAdviserにより波形品質を確認
同センターでは、これまで蓄積した技術ノウハウをベースにSignalAdviserやSIGAL-PIによるシミュレーション結果を考慮しながら今回のASSPを作り上げた。ノイズ低減を考慮した高速メモリインターフェース部分の設計に約2カ月を要したが、解析ソフトを使わなかったら、「LSIリメークにより開発期間は3倍の半年はかかっていたと思います」と登坂は言う。
また、今回のASSPの開発に関連して、同センターではノイズシミュレーション結果から信号系設計制約や電源系設計制約などをまとめ、ユーザー向けのPCB設計のガイドラインを作成した。
ガイドラインで定めた範囲内であれば、ASSPを購入したユーザーは、シミュレーションをしなくても、ノイズ対策を講じたPCBができあがる仕組みだ。LSI-PCBの協調設計を行い、その結果をLSIの内部設計にフィードバックできたことと、ガイドラインを作成できたことに同センターでは自信を深めている。
【会社概要】
富士通株式会社 テクノロジセンター 回路技術開発センター
- 事業内容:富士通テクノロジセンターは、富士通および関係会社の設計部門に対して、電気的・機械的シミュレーション技術や回路技術などの先行テクノロジを開発する組織。回路技術開発センターでは日々、回路技術のノウハウを積み上げ、ノイズ対策の具体的な方法やシミュレーションモデルの開発など、ソリューションの基礎になる技術開発を行っている。



