Fujitsu The Possibilities are Infinite

導入事例
日本ビクター株式会社 様

信号品質の向上で目指すEMC適合設計
SPICEモデル適用技術を確立、高精度な解析環境を実現

オーディオ・ビジュアルの分野を得意とする日本ビクターは、電子回路の高速化に伴って顕在化するノイズ問題をフロントローディングで抑え込むための総合対策として「EMC適合設計」を位置付ける。その取り組みのひとつとして、高速デジタル回路の信号品質を高めるために富士通のプリント基板伝送線路ノイズ解析ツール「Designsynthesis SIGAL」を1999年に導入。さらに、メモリICの高速化が顕著になった2006年には、より解析精度を高めるためにSPICEモデルの適用技術を確立。SPICEモデルをライブラリ化してシミュレーションを行うことによって、従来と同程度の工数で基板品質をさらに高め、設計・解析・EMC対策の全体でコストと設計期間を約30%削減することに成功した。

導入事例キーワード
設計品: オーディオ、ビジュアル、コンピュータ関連機器、磁気テープ、ディスクなど
ソリューション:
PLMソリューション
製品:
Designsynthesis SIGAL
SignalAdviser

佐田 清彦 様
日本ビクター株式会社
技術本部 技術改革部長
兼 技術推進グループリーダー

松本 学 様
日本ビクター株式会社
技術本部 技術改革部
技術推進グループ 技師

日本ビクターが得意とするオーディオ、ビジュアルの分野では、近年、電子回路の高速化に伴うノイズ増が大きな問題になっていた。試作段階で誤動作が発生したり、電磁両立性(EMC)の試験で不合格になったりすると、販売開始時期が数カ月は延びてしまうからだ。問題が深刻だと、回路設計からやり直しになることも珍しくない。

そこで、同社が重視しているのが「EMC適合設計」。EMC対策をフロントローディングすることによって手戻り作業をなくし、ターンアラウンドタイムの短縮をねらう設計開発プロセスだ。技術改革部を指揮する佐田清彦様は、「当社は9年ほど前からEMC適合設計の一環として、信号波形品質の向上に取り組んできました。技術改革部はプロセス革新など全社的ミッションを担っていますが、その中で2年前にEMC適合設計を推進する専任チームを設けました。」と語る。



信号品質解析ツールのSIGALを高速動作のICにも使いたかった

日本ビクターのEMC適合設計は、信号波形の品質を高めるSI(Signal Integrity)、電源/グラウンドの品質を保証するPI(Power Integrity)、そしてEMCの三本柱によって支えられている。このうち、SIのシミュレーションツールとして同社が1999年に導入したのが、富士通の伝送線路ノイズ解析ツール「SignalAdviser」と「Designsynthesis SIGAL」(以下、SIGAL)。SI解析のリード役を務める松本学様は、「SignalAdviserは構想設計と回路設計用、SIGALは基板設計と製造設計用です。SIGALを採用する決め手となったのは、富士通が独自で開発したSPICEシミュレータを解析エンジンに搭載しており、迅速な技術サポートも期待できたことでした」と導入の経緯を振り返る。

導入されたSIGALは、2006年頃まではIBIS(I/O Buffer Information Specification)モデルに基づくメモリバスなどのSIシミュレーションに使われていた。IBISモデルはICの内部構成に踏み込まないシンプルなモデルであり、非常に短い時間でシミュレーションできることが特長である。

このような使い方に転機が訪れたのは、2006年のこと。DDR2 SDRAMなどの高速タイプのメモリICが主流になり、IBISモデルのシミュレーションではメモリバスの信号タイミングをしっかり合わせることが難しくなったのだ。

もう1つの課題は、シミュレーション業務の効率化である。メモリICは価格変動が激しいので、製造段階では設計時と異なる製造元/型番のものを使うことも多い。「量産直前の見直しを可能にするには、高精度の解析を効率よくできるようにする必要がありました」と松本様は語る。

高精度のSI解析を可能にした日本ビクターのシミュレーション環境。暗号化SPICEモデルをSIGALで処理する


SPICEモデルで高い精度を確保
解析はSPICE互換のSIGALで行う

この難題を解決するために日本ビクターが選んだのは、入出力回路のモデルにSPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)を採用することだった。SPICEモデルにはICの内部構成も記述されているので、IBISモデルよりも高精度の解析が可能。SIGALはSPICEベースのツールなので、別のツールに乗り換える必要もない。

実際に使われたのは、IC内部の詳細部分が暗号化されているタイプのSPICEモデル。このモデルならICの内部構造が丸見えになることはなく、ICメーカーの協力を得やすいのである。日本ビクターは、富士通の協力を得て、暗号化SPICEモデルをSIGALへ適用する技術を確立。SIGALで利用可能な状態にモデリングした暗号化SPICEモデルをSIGALのライブラリとして登録することにより、従来と同程度の工数で高精度のシミュレーション解析を行える態勢を整えた。

「何よりもまず、基板品質が向上したことを評価しています」と品質面での効果を語る松本様。「コスト面では解析作業の内製化と効率化、EMC対策費用の削減を実現することができ、製品の納期が遅れることもなくなりました。基板の出図を担当している部署からは、設計・解析・EMC対策の全体で約30%のコストと期間削減になったとの報告を受けています」と佐田様も語る。


全体の費用・期間を約30%削減
今後はGHz回路の解析にも適用

日本ビクターの最新のフルハイビジョンモデル

ひとまずの成果を手にした後も、日本ビクターはSIGALを活用したEMC適合設計をさらに発展させる考えだ。「今後は、メモリバス以外の回路でもGHzオーダーへの対応が求められるようになります」と語る松本様。DDR SDRAM以外では、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)、SATA(Serial ATA)、USB(Universal Serial Bus)などのインターフェースが対象になるという。また、松本様は「GHzクラスの回路では、電源とグラウンドの安定性も重要です」とPI用解析ツールとSIGALを連携させる使い方を模索していると話す。

暗号化SPICEモデルに基づくシミュレーションの普及を目指して、同社はICメーカーへの働きかけも始めている。「SPICEモデルがシミュレーションに活用できることをICメーカーの方に理解していただき、すべてのICについて、解析用のモデルに容易に変換できる暗号化SPICEモデルの公開をお願いしていきます」と松本様。最先端のデジタル回路を設計・開発するエンジニアに、富士通のSIGALはこれからもベストの環境であり続けるに違いない。


【会社概要】

日本ビクター株式会社

  • 本社:神奈川県横浜市神奈川区守屋町3-12
  • 設立:1927年9月13日
  • 代表取締役社長:佐藤国彦
  • 資本金:516億1,500万円(2008年3月31日現在)
  • 従業員:連結1万9,044名、単独4,423名(2008年3月31日現在)
  • 事業内容:
    日本ビクター蓄音機として1927年に設立。テレビ受像器をはじめとする数々の製品を開発。現在はオーディオ、ビジュアル、コンピュータ関連機器、磁気テープ、ディスクなどの研究・開発、製造、販売を行っている。
  • URL:http://www.jvc-victor.co.jp/

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