導入事例
富士通アドバンストテクノロジ株式会社 様
PEEC法にモデルリダクション技術を適用
26層超基板でも電源ノイズを解析できる
動作周波数の上昇やLSIの低電圧化/大電流化が進むにつれて、デジタル家電などの民生分野においてもプリント基板の設計は困難になってきた。従来の電気CAEソフトウェアでは大規模基板を扱うことが難しく、LSI間で伝達される電源ノイズを解析できなかったからである。この問題への対処を目指して開発されたのが、富士通アドバンストテクノロジの電源ノイズ解析ツール「SIGAL-PI」(開発コード名)。PEEC法に独自のモデルリダクション技術を適用することにより、パソコンで26層を超える大規模基板を1日以内にシミュレーションできるようになった。
| 導入事例キーワード | |
|---|---|
| 設計品: | 共通部品・回路技術・実装技術・プロセス技術開発、電子機器の設計・開発・製造・販売・保守。テクニカルコンピューティング環境やシミュレーション技術などの開発環境/試験環境。 |
| ソリューション: | PLMソリューション |
| 製品: | Designsynthesis SIGAL
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折原 広幸様
富士通アドバンストテクノロジ株式会社
回路技術開発センター
富士通アドバンストテクノロジは、 「Designsynthesis SIGAL」や「Signal Adviser」などの伝送路解析/電磁波解析ツールを生み出した富士通のテクノロジセンターを母体として2007年7月に設立された企業である。現在の業務の核となっているのは、技術開発と技術サービス、開発環境/試験環境の提供など。その重要領域の1つが、回路技術開発だ。
コンピュータや磁気ディスク装置向けの大型で複雑なプリント基板で長年の経験を積んできた同社は、電源ノイズの顕在化によって、デジタル家電などの民生分野においてもプリント基板(PCB)設計が難しくなってきたと指摘する。「LSIの低電圧化が進んでマージンが少なくなった結果、直流電圧のドロップによる影響が無視できない大きさになってきました」と語るのは、富士通アドバンストテクノロジの折原広幸様。また、動作周波数が高まり、LSIの消費電流が増大するにつれて、スイッチング動作による電源/グラウンドへのバウンスノイズの影響も大きくなってきたという。
さらに深刻なのが、そうした電源ノイズがLSI間で伝達されることによる影響だ。「多電源化も手伝い、周囲の“大きな機能を持つ”LSIから影響を受けるケースが増えています」と、折原様は指摘する。
従来の電気CAEでは難しかった大規模基板での電源ノイズ解析

「SIGAL-PI」(開発コード名)の独自のモデルリダクション技術。多角形・不均一サイズのメッシュに特長がある
このような問題を解決するには、電源ノイズの伝達特性をPCB全体にわたってコンピュータで解析するのが一番である。ただし、そうした解析では計算量が膨大になるため、従来の電気CAEソフトウェアでは実現が難しかった。やむなく、機能の大きなLSIの周辺だけをCAEで検証し、その他の部分は経験に基づくルールで推定したりマージンを多めに確保したりしていたのである。
そうした状況を改善しようと2003年頃に始まったのが、折原様のチームによる「PCB全体モデルによる電源ノイズ伝達特性の解析」だ。その背景にあったのは、動作周波数のさらなる高速化にともなってマージンをぎりぎりまで減らすことが求められているという現状認識。回路の設計・開発を試行錯誤で進めていたのではコストもかかり、長期間化によって製品の出荷時期を逸してしまう危険性も無視できなかった。
解析方式の検討にあたって要件として掲げられたのは、「20層を超える大規模基板も扱える」ことと「大規模基板を1日以内にシミュレーションできる」ことの2つだ。その成果として生まれたのが、PEEC法(Partial Element Equivalent Circuit)に独自のモデルリダクション技術を適用した電源ノイズ解析ツール「SIGAL-PI」(開発コード名)である。
独自モデルリダクション技術でPEEC法の計算量をさらに減らす

左:フォトニクスネットワーク製品(FLASHWAVEシリーズ)
右:磁気ディスク製品(2.5型SATA磁気ディスク装置)
ベースとなったPEEC法とは、メッシュ分割した対象をRLC等価回路に置き換えてモデル化し、解析する手法のこと。「時間領域差分(FDTD)法や有限要素(FEM)法に比べて計算量が少なく、時間領域と周波数領域の両方を計算できます。また、トランジスタなどの非線形素子を扱えることも、大きな特長です」と、折原様は解説する。
この計算量をさらに少なくするために考案されたのが、多角形で不均一サイズのメッシュを使う富士通アドバンストテクノロジの独自のモデルリダクション技術だ。「LSI周辺などの大電流が集中する部分は細かく、その他の部分は粗くモデル化することにより、解析にかかる時間と所要メモリー量を減らしつつ、高い解析精度を実現しました」と、折原様。「SIGAL-PIには富士通テクノロジセンターに蓄積されたノウハウと評価基板での実験に基づくロジックを組み込んだので、CADの設計データを読み込ませると、シミュレーションに必要なモデルが自動的に構築されます」と付け加える。
さらに、回路シミュレーター自体についても様々な改良が施された。当初のTCSシミュレーターに替えて、2004年にはHCSシミュレーターを採用。2005年には所要メモリー量を半減し、2006年には64ビット版HCSシミュレーターへと切り替わった。
500mm×400mmの20層基板をパソコンを利用し3.5時間で解析
このような新技術が採用されたSIGAL-PIでは、現在、26層を超える大規模基板に対しても電源ノイズ伝達特性の解析ができる。2つのASICを搭載した500mm×400mmの20層基板をIntel Core 2 Duoプロセッサー搭載のパソコンで解析した例では、解析に要する時間はモデル(15万素子規模)を自動生成するまでに2時間、シミュレーションに1時間30分の計3時間30分。使用メモリー量も800MBと少ない。「解析結果は実測値とほぼ一致しており、電源ノイズの問題を設計段階で確認することが可能になりました」と、折原様は評価する。また、実際の製品開発でも、磁気ディスク装置の試作と評価の期間を約1カ月短縮する効果が得られたという。
解析速度と解析精度の検証が完了したことを受けて、富士通アドバンストテクノロジは富士通製品へのSIGAL-PI適用を拡大することにしている。さらに、その後は、超高密度基板で発生する複雑な電磁界現象のシミュレーションにも取り組んでいく予定だ。

2つのASICを搭載した500mm×400mmの20層基板での解析例。解析結果と実測値はほぼ一致している
【会社概要】
富士通アドバンストテクノロジ株式会社
- 本社:神奈川県川崎市中原区上小田中4-1-1
- 設立:2007年10月1日
- 資本金:1億円
- 従業員:約400名(2007年10月1日現在)
- 事業内容:
共通部品・回路技術・実装技術・プロセス技術の開発と、それに基づく電子機器の設計・開発・製造・販売・保守を行う。テクニカルコンピューティング環境やシミュレーション技術などの開発環境/試験環境も提供している。 - URL:http://panasonic.co.jp/pcc/


