導入事例 八戸市立市民病院様
他ベンダー電子カルテからの更新でパッケージシステムを選定し業務効率と医療安全に大きなメリット
旧システムからのデータ移行に苦労したものの標準化が図れたことによる業務改善にも効果
八戸市立市民病院は、「患者さん中心の恕(おも)いやりのある医療」を理念に、青森県南の中核病院として高度な先進的医療を提供する、病床数584床の基幹病院です。2003年に電子カルテシステムを導入したものの、処理速度やサポート体制に対する改善の要望が高かったことから、ベンダーを切り替えて新システムに移行することを決定。2009年9月からHOPE/EGMAIN-GXを稼働させました。稼働から半年が過ぎた現在、処理速度が改善し安定したシステムにより、業務負担の軽減や医療安全の向上などのメリットが生まれています。
IT化のねらいと導入の経緯 | システム選定と導入準備 | 導入メリットと今後の展望
IT化のねらいと導入の経緯
診療に支障が出るほど遅い処理速度の改善を目的にリプレースを検討
医師会との役割分担を明確化し患者中心の地域医療を実践
Q:八戸市立市民病院の特色や地域医療における役割についてお聞かせください。
三浦氏:当院は青森県南における中核病院であり、救急医療と重症患者に対する高度専門治療の2つを主な役割として担っています。この地域は地区医師会も非常に熱心に医療連携に取り組んでおり、当院のような基幹病院との明確な機能分担ができています。外来診療は診療所が担うという連携が図られ、一時は1日約1800人だった当院の外来患者数も、現在では800人ほどになっています。また、地域医療支援病院としての紹介率は80 ~ 90%であり、逆紹介率も40%を超えています。
Q:医療のIT化について、どのようにお考えでしょうか。
三浦氏:IT化のメリットは、患者さんの情報を医療者が共有できることです。全職員が医療情報を共有することができ、リスクマネジメントにも結びつくなど、メリットは大きいです。
処理速度の向上を主眼として電子カルテシステムの更新を検討
Q:電子カルテシステムの切り替えを考えた理由についてお教えください。
方山氏:最大の理由は、2003年に導入した電子カルテシステムのレスポンスが悪く、外来の診療業務などに支障が出ることもありました。加えて、このシステムのハードウェアの更新時期を迎えたのですが、その費用が高額だったことも、他ベンダーのシステムからの切り替えの動機となりました。前システムは、フルカスタマイズのシステムであったため、医事システムの更新費用が高いという問題もありました。
三浦氏:さらに、前システムでは、診療データの統計機能が不十分であり、運用に支障があったことも、切り替えの理由になっています。
システム選定と導入準備
コスト削減と業務の標準化のためパッケージシステムを条件に選定
パッケージシステムで安定稼働の実績のある富士通製品を選択
Q:切り替えが決まってから、どのように準備を進めましたか。
方山氏:2007年の秋ごろから次期システムへの更新に向け、電子カルテシステムについての勉強会を行い、その後、検討会を発足して、本格的な準備をスタートさせました。まずは、5社程度のベンダーから各社の電子カルテシステムの特徴について調査し、採用するシステムの選定を行いました。この過程では、他院の電子カルテシステムの見学や、国際モダンホスピタルショウで情報を収集するなどして多角的に検討しました。過去の経験から、カスタマイズが不要なシステムが最も望ましいと考えていました。カスタマイズされたシステムの場合、診療報酬改定のたびに医事や電子カルテシステムの対応にコストがかかる上に、システム自体の管理を行っていくことも難しくなってしまいます。パッケージシステムならば、カスタマイズシステムよりもランニングコストも低く抑えられる上に、安定した運用もできます。このような考えに基づいて選定を行い、パッケージシステムで、他院で安定した稼働をしている富士通の実績を評価して、HOPE/EGMAIN-GXの採用を決定しました。
病傷名やコードの不一致でデータ移行の作業が難航
Q:準備に当たって、どのような点に苦労しましたか。
方山氏:特に問題となったのは、旧システムからのデータの移行でした。旧システムからはCSV形式でデータを出力できるのですが、サーバに負荷がかかってしまうために、日常診療の中でシステムが稼働している状況では、その作業ができませんでした。そこで、病名については医事、処方は薬局、検査は検査の各システムから移行しました。また、病名について独自コードをつけたものが多くあるなど、すべてのデータを移行するには制限がありました。このほか、外来や検査の予約のうち、新システム稼働前に受けたデータについては、新システムで入力をし直すなどの作業も発生しました。
Q:各部門での対応はどうしたのですか。
川野氏:看護部門では、運用の見直しに最も苦労しました。しかし、病棟ごとに異なる業務の仕方を標準化する機会にしようと考えました。以前のカスタマイズシステムは、導入当時の運用に基づいて設計されていました。このため、医療を取り巻く外部環境の変化や院内の業務環境が変化する中、以前の運用に合わせたシステムでは変化に対応しにくい状況にありました。パッケージシステムは、システムに運用を合わせるという点でマイナスイメージを持つと思いますが、それによって業務を見直し標準化を図ることができました。
藤丸氏:医事部門においても、旧システムとの仕様の違いにより、そのままデータ移行できないなど、戸惑ったりする点が多々あり、稼働前後はかなり残業が多くなりました
導入メリットと今後の展望
処理速度の大幅改善と業務の効率化に加え医療安全にも導入効果が波及
HOPE/EGMAIN-GXの導入によりレスポンスが大幅に向上
Q:システム更新の最大の目的であった処理速度は改善しましたか。
三浦氏:大幅に改善しました。以前はカルテデータを呼び出すだけでもしばらく待たなければなりませんでしたが、いまはすぐに画面を展開できます。
川野氏:年1回実施している看護局のタイムスタディを今年2月に実施しました。その結果、時間外業務の多くを占めていた看護記録の入力業務が、一部午前中にシフトしていました。システムのレスポンスが向上したことで、ベッドサイドで記録しながら業務を行えるようになったためであり、従来に比べ業務効率が向上しています。
方山氏:旧システムでは、午前11時ごろの外来のピークになるとサーバに負荷がかかって処理速度が遅くなり、場合によってはいったんすべての業務を止めて、再起動を行うこともありました。HOPE/EGMAIN-GXに切り替えてからは、まだ一度もシステムが止まったことはなく、安定稼働しています。
Q:医療安全面での効果は表れているのでしょうか。
川野氏:注射は患者認証システムで、処方薬は指示受けから実施までの確認業務をサポートする機能をフル活用しています。月平均の与薬に関するインシデント件数の単純比較では、約25%減少していました。この点についてもシステム更新の成果が得られていると思います。
Q:パッケージシステムのメリットを感じていますか。
川野氏:導入準備については、パッケージシステムの方が、準備期間が短くて済むというメリットがあります。当院の場合、他ベンダーからの更新だったため、新規導入施設よりも長い、9か月の準備期間を要しましたが、それでも旧システムの導入時に比べ、大幅に短縮されました。また、業務の標準化を図れたことは大きなメリットの1つです。標準化することは変化への対応をスムーズにすることにつながります。これは組織にとって、とても重要なことだと考えます。
藤丸氏:データの統計に関しては、これまでは不必要なデータを習慣的に出していた部分もあったと思うので、これを機に整理してみたいと考えています。9月に稼働し始めたばかりなので、経営へのデータの活用はまだ十分にできていませんが、この点については、これからの課題だと考えています。

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| 外来診察室のデスクトップレイアウト。モニタは左がPACS、中央がHOPE/EGMAIN-GX。右が参照用に残している旧システムのモニタ。処理速度が向上したため、外来の診療時間は無駄が省けています。 |
病棟での運用の様子。右の写真のようにバーコードでの認証機能により、医療安全でも効果が出ています。 |
パッケージシステムは長期的な視点からも大きなメリット
Q:富士通への要望点があれば教えてください。
方山氏:どのベンダーも同じだと思いますが、導入まではいろいろと支援してくれるものの、その後のサポートが不足しがちです。せっかくのシステムをもっと高度に使いこなすために、中級、上級の講習を実施してもらいたいと思います。
川野氏:パッケージシステムでもたくさんの機能がありますので、それを効果的に使っていけるようなサポートがあるとよいと思います。
Q:電子カルテシステムの導入や更新を検討している読者にメッセージをお願いします。
方山氏:パッケージシステムは、システムに合わせて運用を見直さなければなりませんが、長期的に見ればメリットの方が大きいと思います。カスタマイズシステムは自由度は高いのですが、その分マイナスの要素もあるのではないでしょうか。医療機関にとっては、IT に詳しい人材を確保するのは難しいだけに、その観点からもパッケージシステムの方が有利だと言えます。
八戸市立市民病院の HOPE/EGMAIN-GX システム構成図
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