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海外金融業界動向
基幹系システムのアウトソーシング

[2006年3月号]

わが国金融業界では、今や基幹系システムのアウトソーシングは単に情報システム部門だけの業務課題ではなく、経営戦略を策定する上でも重要な課題となっています。かつては第一次オンラインからおおそ10年サイクルでスクラップ・アンド・ビルドされてきた基幹系システムも長年の機能追加や修正によって構造的に複雑化してしまいメンテナンス効率がますます低下しています。その結果、今日求められている「総合金融サービス化」や「商品・サービスの迅速な開発と提供」といった経営課題を解決するに当たって障壁となっています。近年、同様に基幹系システムをいかに更改するかという課題に直面している欧米金融業界で、基幹系システムのアウトソーシングに対してどのように取り組んでいるかその動向についてご紹介したいと思います。

基幹系システム更改に対する欧米金融機関のスタンス

わが国金融機関と同様に、欧米金融機関の多くが基幹系システムをいかに更改するかという課題に取り組んでいます。ある調査結果を見ても、大手行や中下位行の30%から40%は「現行システムを更改する計画はない」という回答をしていますが、全体の過半数を占める残りの60%から70%は何らかのシステム更改を計画しています。

大手ないし上位行の多くはシステム部門のスタッフや比較的潤沢なIT予算を拠り所にして、「最新のオープン技術によるラッピング」や「コンポーネント化によるリエンジニアリング」などによって基幹系システムを再構築しようとしています。一方で、中下位行は人的リソースや投資予算などの制約から「部分的なシステム更改」や「ベンダー・ソリューションの全面的採用」という選択肢が大半で、基幹系システムの標準パッケージを有する独立のソリューション・ベンダーにアウトソーシングするケースが多いようです。

ソーシングの意思決定プロセス

欧米の金融機関では業務に係わる情報処理機能のリソースをいかに確保するかということに非常に関心を持っています。

その意思決定プロセスは金融業界の中でいかに差別化を図るか、いかに競争優位性を確保するかという観点と同時に、情報処理に関するノウハウを内部に蓄積するか否かという二つの観点から方針が決定されているようです。まさに勘定処理システムのように、あまり差別化の余地がなく、ノウハウとしても付加価値が低いシステムはアウトソーシングの格好の対象となります。ただし、大手金融コングロマリットなどではグループ内に同様な情報処理ニーズがある場合には独立ユニットとしてプロフィット・センター化させたり、更にグローバルな観点からオフショア・センター化させたりしています。

改めて問われるITガバナンス

欧米金融業界でもリテール金融を中心とした競争の激化、収益マージンの低下そして業界の再編などによって一層のコスト低減に向けた取り組みの中でアウトソーシングは極めて重要な経営課題となっています。これまで金融機関は欧米でも垂直統合モデルを長い間志向してきましたが、現在のような情報通信インフラが整ってきた時代にはそれらがお荷物になり始めています。どの機能が差別化の武器になるのか、どの機能が競争優位性で劣後するのか、そのベンチマーキングないし見極めが従来以上に重要になっています。

基幹系システムの中でも、財務会計としての勘定処理などは会計制度を踏まえた情報処理となりますから差別化や付加価値という点でアウトソーシングすることに特段の抵抗はないように思われます。ただし、原価計算やリスク管理に係わるようなデータについてはいわゆる情報系システムでの加工や分析を想定すると何らかの管理区分やタグを付加する必要があり、そうした機能での差別化や競争優位性の追求を考えると安易なアウトソーシングは禁物ともいえます。また、最終顧客への商品やサービスを提供するデリバリー・チャネルについてもアウトソーシングを見送る動きも見られます。

求められるわが国金融機関の対応

以上で述べてきた欧米金融業界におけるアウトソーシングへの取り組みアプローチは、発展段階や業界構造などの点からわが国金融業界が置かれている状況とはかなり様相が異なっているように思われます。ただし、今後、わが国金融機関としてもう一段の経営効率化や業界再編などを推進する観点からすれば、大いに参考となるのではないかと思われます。その際にポイントとなる事柄を幾つか列挙しておきます。

第一には、ますます多様化する金融サービスを前提におくと、それらをタイムリーに市場に提供するためにはシステム基盤と業務アプリケーションとを適材適所で組み合せながら利用できるように選択肢を増やしておく必要があります。第二には、商品開発に特化する金融機関と商品販売に特化する金融機関との棲み分けが自ずと明らかになってくるという前提にたてば、業務アプリケーションのレベルでも柔軟な組み合せができるコンポーネント化されたモデルを考慮すべきでしょう。最後には、欧米金融機関のように事務処理も包含したBPO(Business Process Outsourcing)も視野に入れておくべきではなかろうかと思います。

かつて、わが国金融業界は「自前主義」に執着するあまりすべてを内製化することが一般的でしたが、システム部門の高齢化や専門性なども相まって近年では積極的にアウトソーシングを検討、採用するように変わりつつあります。ただし、多くの取り組みは依然として緒についたばかりで手探りの状態にあります。しかしながら、今や金融機関がコア・コンピータンスとすべきスキルやノウハウは何なのか、それらを自問自答してみると自ずと選択肢や進むべき方向性は絞られてくるのではないでしょうか。