海外金融業界動向
活用が見直されようとしているATMチャネル
[2006年2月号]
わが国でも今や、ATMは金融機関と取引をする上で一般個人が最も頻繁に利用しているチャネルとして定着しています。日常的な決済手段として依然として現金が使われる割合が高いことから、インターネットや携帯電話が普及している今日でもATMは中心的な役割を果たしていると言えます。近年、欧米の金融機関においてもATMの設置台数は頭打ちの傾向が見られ、運営費用を削減するためにアウトソーシングなどを導入しようとする動きが見られる他、既存のATMを通じて新たなサービスを提供できないか模索されたりしています。今回はそうした観点から北米金融業界におけるATMチャネルの見直しについてご紹介したいと思います。
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安定してきた設置台数や取引件数
2000年以降、銀行や独立系ATMサービス会社などが手数料収入を増強し様として先を争ってATM設置台数を増やしたり、ATMネットワークを拡大したりした時期がありました。そうした取り組みは近年ではやや落ち着きを取り戻しつつあり、設置台数や取引件数などの伸びも安定的に推移しているようです。
一方で、「リテール金融ビジネス」の競争はますます激化する様相にあり、そうした中で収益を獲得するために銀行はもちろんのこと、ATMネットワーク運営会社も新たなアプローチを打ち出しつつあります。具体的には、ATMネットワーク運営会社によるATM運用コストを削減するためのアウトソーシング・サービス、金融機関によるATMのような顧客操作端末の利用を想定した営業店事務との連携による事務効率化を模索する金融機関もあります。
ATM関連業務のアウトソーシング
ATMチャネル自体が今や当たり前の顧客接点となっていることを受けて、金融機関も運営コストをいかに削減するか、サービスの一貫性をいかに保証するかということに非常に関心を持っています。
わが国でも何年も前にコンビニエンス・ストアに設置されたATMを対象とした運営サービスを専門的に行う会社が登場していますが、米国でも個別金融機関からATM関連業務をアウトソースする会社があります。近年では特に営業店以外に設置されるATMの台数が増加傾向にあることから、ATMサービスそのものをオープン化ないし共通化するような取り組みを見られます。そうした動きを受けて、逆に金融機関の特徴を利用者個々人に訴求するために特定ブランドを強調するような付加価値サービスを提供する会社も登場しつつあるようです。
顧客操作端末としてのATM再評価
もともとATMは営業店の窓口取引の中で残高照会、入出金および振込・送金などのなどの比較的単純な取引を個人顧客自らに操作してもらうことで事務量を削減すると同時に、顧客自身の待ち時間短縮という利便性を追求する取り組みの中で考案されました。その後、ATMによる提供サービスのメニューが多様化する過程で、切手やチケットの販売なども試行されてきました。今日、インターネットや携帯電話などのダイレクト・チャネルが次第に定着する中で、伝統的な顧客接点として相変わらず主流となっているATMをいかに金融機関として活用するか、営業店事務全体の視点から新たな取り組みが始まっています。
一つは更なる事務効率化を追求する過程で、営業店のテラーが対応しているデータ入力や現金・小切手などの現物処理を自動機にシフトさせようとするものです。これに類した取り組みは既にわが国金融機関の一部でも試行され始めており、次第に一般化していくものと思われます。一方、デリバリー・チャネルがマルチ化してくる中で、チャネル全体の観点からATMを再評価しようとする取り組みも見られます。既に多少、試行がされつつあるOne-to-Oneマーケティングを応用した特定個人向けのサービス、携帯電話へのアラート・メールと連携させた取引、など提供サービスの差別化に向けて様々なトライアルが行われようとしています。
求められるわが国金融機関の対応
以上で述べてきた米国金融業界における取り組みに類似したアプローチは既に、わが国金融機関でもほぼ同時期に行われています。今後、わが国金融機関として、新たな観点からATMを活用する方策を探り始めるのではないかと思われます。その際にポイントとなる事柄を幾つか列挙しておきます。
第一には、ますます多様化する顧客接点を念頭に、個人顧客の取引特性とそのトリガーを分析して、顧客起点の発想でATMチャネルを再定義する必要があります。第二には、電子マネーの普及・浸透が進む過程で硬貨の流通量が僅かにせよ逓減してくる中でいずれ現金の取り扱いにも波及してくるという前提にたてば、ATMで取り扱う媒体が従来のプラスティック・カードだけではない利用シーンのビジネスモデルを企画しておくべきでしょう。最後には、ATMそれ自体が一種の公共財として定着してくる中で、金融以外の業種との相互乗り入れも視野に入れておくべきではないかと思われます。
かつて、わが国金融業界でもATMチャネルをどのように位置付けていくか論議が行われました。税金の収納などへの応用を試行したこともありました。今や、ユビキタス環境が次第に整備され、事業の規制緩和も進展してきました。今日的な金融サービスの提供を考える上で、改めてATMの活用方策が求められているのではないでしょうか。
