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海外金融業界動向
インストア・ブランチ

[2006年1月号]

前回、金融庁による「銀行代理店制度」の見直しを受けて、欧米の金融機関において「異業種連携」がどのように模索、実践されているのか、その概要をご紹介しました。今回はその関連で米国における「インストア・ブランチ」の動向についてご紹介したいと思います。大手小売業の大規模店舗の一角を利用して既存の銀行が金融サービスを提供するビジネス・モデルはわが国でもおよそ20年近く前から取り組まれていますが、最近の米国では意外にも比較的小規模の銀行が「インストア・ブランチ」を積極的に展開しているようです。そのあたりの狙いや収益モデルなどに焦点を当てながら最近の傾向をご紹介したいと思います。

米国で伸長著しい「インストア・ブランチ」

世界的に進展している「総合金融サービス化」を受けて、以前、この連載でも取り上げたように欧米でも銀行の営業店が再評価されています。その戦略には「預かり資産営業」などの個人顧客の資産運用に対する積極的な取り組みがありますが、その一方で比較的単純な商品やサービスをいかに低コストで提供していくか、そこで「インストア・ブランチ」が改めて注力されています。

ある調査レポートによれば、この10年弱の間に営業店の店舗数の伸び率は伝統的な営業店でやや減少に転じているのに対して、「インストア・ブランチ」は二桁の16%という伸びを示しています。この背景としては、営業店の開業費用がおよそ10分の1から5分の1、運営費用も4分の1から2分の1というコストの低さがあります。

「インストア・ブランチ」のチャネル特性

わが国にも進出してきた米国を代表する小売業であるWal-Mart社も既に独自ブランドで個人顧客向けに金融サービスを提供し始めていますが、これとは別に新たにユタ州で中小企業向けの金融サービスを開始すべく、当局に対して事業の認可を申請したと報じられています。規制緩和を背景として、流通業でさえ金融ビジネスを開始しようとする時代環境において、伝統的な金融機関もそこに新たなビジネス・チャンスを見出そうとすることは当然の取り組みといえます。

その動機としては、やはり近年の大規模商業施設における圧倒的な「集客力」があります。やはり伝統的な営業店に来店する顧客は既に何らかの購買動機を持って足を運んでいるのに対して、ごく日常的なショッピングの場でも金融サービスのコーナーや広告宣伝が目に入ることで潜在的な金融ニーズが刺激されてより具体的な行動に結びつきやすい心理的な傾向があるのではないかと言われています。

「インストア・ブランチ」の主要なビジネス・モデル

個人顧客、とりわけマス顧客が金融機関に対して求めている期待やニーズが多岐にわたるように、「インストア・ブランチ」のビジネス・モデルも多様化しています。それらを大きく類型化すると、以下のような5つのタイプに分けられるようです。

第一には、Wal-Martに代表されるスーパー・マーケットを利用している比較的低所得の一般個人を対象として、特に当座預金口座を利用して小切手を処理することで口座手数料を獲得しようとするモデルがあります。第二には、ホワイトカラーなどの中間所得層が貯蓄預金口座を開設するとともに小口の個人ローンを扱うことでクロス・セリングをめざすモデルがあります。第三には、新規顧客を開拓ないし獲得することに重点を置き、顧客取り込みに成功した後は既存の伝統的な営業店に誘導してより複雑な商品やサービスを販売するモデルもあります。最後に、Canadian Imperial Bank of Commerce(CIBC)が北米で異なったブランドで展開しているキャッシュレス志向のモデルがあります。

これらモデルはいずれも異なった収支計算と投資回収シナリオに基づく投資対効果シミュレーションに基づいていることは言うまでもありません。

求められるわが国金融機関の対応

わが国でも「銀行代理店制度」の規制緩和を受けて、大手流通業などが新たなビジネスモデルの模索やビジネスプランなどを企画しているというような報道がされています。今後、金融業としても、流通業のみならずさまざまな業種との連携の可能性を探り始めるものと思われます。その際にポイントとなる事柄を幾つか列挙しておきます。

第一には、ますます多様化する顧客接点を念頭に、個々の商品・サービスを保有するコンテンツ提供者として、顧客起点の発想で小売施設をいかに位置付けていくべきか、チャネル戦略を構築する必要があります。第二には、流通業が得意とするいわゆる「業態開発」という観点で、お互いに異なる顧客セグメントをいかに共有化するか、ないし独自に抱え込んでいくか、いわゆる「顧客ポートフォリオ」の評価モデルを準備すべきでしょう。そして、最後には、最近とみに関心が高まっているブランド戦略に関連して、銀行代理業が適切かつ公正に遂行されていること担保できるコンプライアンスを確実に組み込むべきではないかと思われます。

近年、わが国金融業界では大手金融機関による不良債権償却や公的資金の返済、そして大型合併などによって収益力が回復傾向に転ずると同時に、より積極的な成長戦略へと経営のスタンスも変わりはじめました。それに引き換え、地域金融機関の収益力の回復が遅れ気味と言われています。当然、地域経済の景況による影響から逃れられない訳ですが、米国のように「小よく大を制する」、積極果敢な地域金融機関がもっと台頭することで地域の個人顧客や法人顧客が恩恵に預かれるビジネスモデルの登場が求められているのではないでしょうか。