海外金融業界動向
銀行と異業種との提携
[2005年12月号]
先月、金融庁は規制緩和を推進する一環として銀行法等の一部を改正することによっていわゆる「銀行代理店制度」の見直しを行い、2006年4月から施行する予定であるという通達を発行しました。昨年12月にやはり金融庁が発表した「金融改革プログラム」の中で提言されていた「販売チャネルの多様化」や「顧客利便性の向上」などを促進する目的で「銀行代理店」の従来の担い手を見直して拡大すると同時に所要の規制を整備することになっています。そこで、今回は世界的に進展している「総合金融サービス化」に対して欧米の金融機関において「異業種連携」がどのように模索、実践されているのか、その概要をご紹介しようと思います。
- PDF 図版資料[60KB]
欧米に見る「銀行代理店制度」
欧米ではわが国の「銀行代理店」に相当する金融サービス仲介機関は数多く存在して、その業務範囲や出資割合などに関する特段の規制は見られません。ユニバーサル・バンキング制度が古くから定着している欧州では、国ごとに多少異なりますが、主に流通業を中心として為替・送金、預金の受け入れ、貸付、クレジットカードおよび投資信託・保険商品の販売仲介など広範な金融サービスが代理店を通じて提供されています。米国でも、銀行サービス会社などが規制当局の認可が必要となる預金を自ら受け入れる業務を除くすべての業務を担っています。すなわち、銀行としての本来業務である自ら預金を受け入れることや経営の中枢に係わる業務などを除いて様々な業種によって銀行業務が代理、媒介されています。
欧州における金融サービスを巡る異業種連携
ある調査会社が行ったアンケートによると、金融サービスを提供している一般事業会社を業種別に見ると流通業が最も積極的で、次いで電力・ガスと自動車が並んで、その後を追いかける形で旅行・レジャー関連となっています。これら金融サービスを提供する一般事業会社の狙いは、第一に本業の商品やサービスを提供している既存顧客に対して金融商品をクロス・セリングすることによって得られる収入となっています。第二には、提供する商品やサービスの範囲を拡大することによって自らのブランド力をより強固にして企業価値を高めることとなっています。これらに次いで、既存顧客からの要望という動機付けになっています。
こうしたアンケート結果からしても、保有する顧客情報や購買傾向などを科学的、客観的に分析して収益構造や財務構造にプラスの効果を期待できるという判断のもとで金融サービス商品を取り扱っていることが伺われます。
リテール金融分野におけるブランド力と機能的分業
欧州の金融サービス分野、とりわけリテール分野では消費者に対する「ブランド力の訴求」とロー・コスト・オペレーションを実現できる「機能分業によるバリュー・チェーンの再構築」を模索しようとしています。
ひとくちにリテール金融商品と言っても、為替・送金、預金、ローン、クレジット・カードおよび投資信託・保険など実に多岐にわたっています。こうした多様な金融商品を効率的かつ効果的に販売するにあたって、提携関係にある双方の「ブランド力」をいかに活用するかという点で、商品・サービスの棲み分けが行われています。すなわち、流通業を例にとると、既存の顧客層や顧客接点の特性からクレジット・カードが最も適するようです。また、ローンやモーゲージなどはより高度な与信審査が必要となることから金融コングロマリットという「ブランド力」が大勢を占めています。
同様に、異業種間で金融サービスを提供するにあたって、それぞれが得意とする業務機能を改めて組み合せることで競争優位を追求することも重要です。顧客接点として求められる機能と商品開発に求められる機能は自ずと異なっています。双方の優位性のある機能を顧客視点で再構築することが模索されています。
求められるわが国金融機関の対応
わが国でも合併や統合による大手金融グループの誕生や証券仲介・代理店制度の規制緩和などによってリテール分野における競争はますます熾烈の度合いを強くしています。そうした状況の下で、今回の「銀行代理店制度」が見直されたことは非常に意義深いものがあり、今後、金融機関の間でさまざまな取り組みが始まるものと想定されます。その際にポイントとなる事柄を幾つか列挙しておきます。
第一には、やはり顧客利便性の向上を追求することを念頭に、個々の金融サービスへのアクセスがより効果的に行われるような顧客起点の発想を中心に据えるべきでしょう。第二には、いわゆる「製販分離」などによって「機能の分業化」が進むことを想定して、インターネットに象徴される業種横断的なビジネス・インフラを活用する形でビジネス・プロセスを設計すべきでしょう。そして最後には、最近とみに関心が高まっている内部統制強化に関連して、銀行代理業が適切かつ公正に遂行されていること担保するに相当する仕組みを確実に組み込むべきではないかと思われます。
様々な自由化や規制緩和の進展によってわが国の金融機関経営の裁量範囲は以前と比べると格段に拡がってきましたが、逆に自らのコア・コンピータンシーの見極めが非常に重要になっています。従来から見られる単純な「Me-Tooビジネス」では経営資源の有効活用や資本効率の追及などが実現できなくなっています。自らの競争力に関する冷徹な評価に基づいて、今後基盤とすべきビジネス・ドメインを見定めて競争優位性を実現できるビジネス・モデルを創造することが今求められているのではないでしょうか。
