海外金融業界動向
コンタクト・センター
[2005年10月号]
金融機関にとって顧客との接点が伝統的な営業店やATMからコールセンター、インターネットなどへと多様化してかなりの年数が経過しましたが、近年、改めてコールセンターに対する需要が増大しています。電話というメディアを対象とする比較的単純なコールセンターが第一世代だとすれば、現在は営業店やATMなどの伝統的なチャネルはもちろんのこと、インターネット取引や電子メールなどを利用した顧客コミュニケーションなども包含した顧客接点の統合的な担い手という意味で「コンタクト・センター」というコンセプトが一般化しています。そこで、今回は欧米の金融機関におけるコンタクト・センター構築の取り組みについて、その概要をご紹介しようと思います。
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マルチチャネル環境下で複雑さを増すコールセンター
初期のコールセンターは顧客からの単純な問合せに対応する顧客サービスのためのファシリティとして構築されましたが、その後次第に様々な金融商品をクロス・セリングするためのセールス・チャネルとして変貌しつつあります。さらに、欧米の金融業界では制度的な背景や近年の合併・統合などによって「総合金融サービス化」がますます進展する様相を強めていることも顧客接点に期待される役割を複雑化しています。
確かに現在でもコールセンターにおけるトランザクションの過半数は顧客からの問合せですが、苦情の受付け、定型的な問合せ、オーダー受付けと処理および技術的な問合せなどなど非常に多種多様な内容となっています。これらの対応に求められる業務や商品に関する知識やコミュニケーション・スキルなどもまさに多岐にわたると言っても過言ではないでしょう。
従来型のコールセンターが直面する課題
わが国と同様に欧米の金融機関のコールセンターも電話応対のスタッフの採用と教育研修による定着化にはかなりのコスト負担を強いられているようです。特に、米国では幾つかの州にコールセンターが集中しているために、一定水準以上のスタッフを確保するリクルート費用が漸増しているとともに、採用後のスタッフの人件費もその他の職業と比較すると相対的に高い状況にあることが労働統計から伺われます。また、コールセンターの顧客サービスは電話による会話や応対という特殊な状況下で行われるためにコミュニケーション・スキルなどに左右されることから、あるコストの制約のもとで提供するサービス品質を一定レベルに確保することも運用上の課題となっています。さらに、従来のコールセンターが典型的なコストセンターという位置付けに置かれていたことも最新技術による投資で効率化を図るという動機付けに欠けていたのではないかとも考えられます。
新たな情報処理技術や通信技術の応用
従来のコールセンターが直面しているこれらの課題を解決するために新たな情報処理技術ないし通信技術が適用されようとしています。
まず、コールセンターのインフラとしてIP電話への切り替えが進みつつあります。コールセンターの稼働率を上げれば上げるほど電話料金も比例して増加するというコスト構造を改善するためにはインターネット技術の導入を急がざるを得ない状況にあります。
また、コールセンター運用コストのかなりの割合を占める人件費が上昇傾向にあることに対してはコスト・アップ要因のひとつであるヒューマン・スキルを最新の情報処理技術で代替、補完することで人件費を抑制しようとしています。具体的には、単純な単語による音声応答ではなく会話応答型の自動化システムの導入です。
また、近年では顧客とのコミュニケーションがマルチ・チャネル化して携帯電話と電子メールなどを併合しながらコンタクトしてくる顧客も増えていることから、センター側からコール・バックする仕組みや電子メールによるコミュニケーションも支援するWebコラボレーション技術などが適用されつつあります。
さらに、コミュニケーションを円滑化させるために顧客の情緒や心理状態などを察知するような技術の試行も始まっています。
わが国金融機関にとっての示唆
わが国でもコールセンター構築という点で先行した金融機関の中には既に第二世代のセンター再構築を完了して本格的な運用を開始しているところもあります。一方では、そうした再構築の企画や検討に着手したところもあろうかと思います。その際にポイントとなる点を幾つか列挙しておきます。
第一には、やはり「総合金融サービス化」が進む状況のもとで、しかも顧客との接点が多様化している現状で、コールセンターをどのような位置付けでどんな役割を担わせるのかというビジョンを策定することを初めに取り組むべきでしょう。第二に、顧客のコミュニケーション手段に対する選好度を把握しながら、顧客が受け入れやすいコミュニケーション・プロセスを設計すべきでしょう。そして、最後には、TCOの削減やコア・コンピータンスへの集約を推進しなければならないことは確実ですから、アウトソーシングという選択肢も検討に値するだろうと思われます。
わが国の金融業界でも複数の顧客接点を統合的にサービスするマルチ・チャネル化の動きが始まろうとしています。顧客コミュニケーションはマーケティングやセールスの効率性や効果を左右する根源的なプロセスです。組織、マーケティング・プロセスそして情報処理技術を三位一体で捉えたアプローチに基づいて、これからの金融サービス機関に必要なコンタクト・センターの構築が今求められています。
