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海外金融業界動向
Service Oriented Architecture(SOA)

[2005年9月号]

近年、世界的に進展している「総合金融サービス化」に対して既存の情報システムの構築が追い付いていけないという悩みが個別の業態を超えて広く金融業界で顕在化しています。様々な金融取引のイノベーションが急進展する一方で、システムの開発やメンテナンスが追随できないという問題です。そうした課題を解決するテクノロジーとして期待されているものの一つとしてSOA(Service Oriented Architecture)があります。そこで、今回は欧米の金融機関においてSOAという新たなITコンセプトがどのように評価され、受け入れられようとしているのか、その概要をご紹介しようと思います。

システム・メンテナンス効率の向上が期待されるSOA

SOAは情報システム全体をひとつまたは複数のアプリケーションの組合せからなる「サービス」の集まりとして捉えなおし、特定のハードウェア、OSおよび言語などに依存することなく、サービス連携基盤(ESB:Enterprise Service Bus)を通じて自由に連携しながら利用できるようにするシステム構築の考え方です。
現在のシステム構造は複雑化してサービス・コンポーネントが密に結合してしまった結果、アプリケーションへの追加や修正がお互いに影響を及ぼしあって、システム・メンテナンス負荷が増大するという弊害を生んでいます。今後は、サービス連携基盤の上に様々なサービスを自由に組み合せて利用できるSOAの考え方を取り入れたシステム構築が次第に主流になっていくものと考えられます。以前、この連載で取り上げた「戦略的ITコスト・マネジメント」においても、アプリケーション・メンテナンスがIT予算を硬直化させている傾向が強まっていることを取り上げましたが、その打開策としても注目されています。

経営にとっての価値実現が求められる時代

従来、欧米の金融業界でも基幹業務ですら独自開発に依存してきた傾向が近年、パッケージの採用やアウトソーシングなどにシフトしつつあります。システム構築技術がオープン化して、しかも次第に標準化されてくる過程で標準的なインターフェースによって業務機能を統合することでシステム全体の柔軟性を向上させることができます。また、この連載の前回に取り上げたコンプライアンスや内部統制への要請から業務プロセスを可視化して、それらをサービス・コンポーネントとして情報資産化することでシステムの共有化にも資するのではないかと期待されています。
そうした取り組みによって、急速なビジネス環境の変化に対して容易に適応できるシステム・アーキテクチャーへの転換が図られます。ビジネス・プロセスの動的かつ有機的な再構成をサポートできるシステム基盤としてSOAに関心が高まっているようです。

SOAへの取り組みのフロント・ランナーとなる保険業界

わが国でも本格的な保険商品の「銀行窓販」の時期を迎えようとしています。既に資産運用の一環として変額保険の販売が開始されています。次は、いよいよ死亡保障のような保険商品の中核に規制緩和の焦点は移り始めています。
こうした状況はいわゆる「ユニバーサル・バンキング化」が先行している欧州では既に現実となっており、“Bancasurance”という流れで保険会社のバリュー・チェーンが再構築されてきました。すなわち、保険ビジネスの基本的なプロセスである、「販売」、「引き受け」、「契約管理」および「保険支払い」という各要素が、商品の多様化や販売チャネルの多様化によって、「一貫モデル」から「柔軟なサービス・モデル」へと次第に移行しつつあります。こうした潮流が自ずとSOAというITコンセプトを導入、適用する素地を育んできたとも言えます。いわゆる業務サイドのエンド・ユーザ部門から求められる要件がSOAというテクノロジーと融合したと言うことができるでしょう。
実際、欧州の大手保険会社であるINGがバック・オフィス部門にSOAの考え方を適用しようとしています。また、Swiss LifeやCNPなどもSOAのコンセプトを販売チャネルの分野に応用しようとしています。

求められるわが国金融機関の対応

わが国でも一部の大手金融機関で試行的に一部の業務でSOAの導入が始まっています。既に述べたような背景から徐々にその他一般の金融機関にも拡がっていくものと想定されます。その際にポイントとなる点を幾つか列挙しておきます。
第一には、やはりWebサービスのような標準技術を適用することを中心に据えるべきでしょう。いわゆる「製販分離」などによって「オープン経営」が進むことを想定すると、ビジネス・プロセス志向を前提とした柔軟な運用を実現できる技術を適用することが求められます。第二に、汎用的なビジネス・プロセスを優先してサービス設計に取り組むことによって、既存資産の共有範囲を最大化することをめざすべきでしょう。しかもその設計主体はシステム部門が担うべきです。そして、最後には、これまでの経験から明らかなようにサービス・プロセスも絶えず環境変化に適応しなければならないことは確実ですから、そのためのライフサイクル管理体制も同時に確立すべきだろうと思われます。

わが国の金融機関もこの数年間は不良債権処理に追われてIT投資を凍結ないし抑制してきましたが、不良債権処理も峠を越しつつあることから陳腐化や劣化が進んだ情報システムを最新のテクノロジーで再構築しようとしています。その際に、技術志向一辺倒で取り組むのではなく、これからの金融サービス機関に求められるビジネス・プロセスを描いた上で新たな情報通信技術を導入することが今求められているのではないでしょうか。