Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

海外金融業界動向
RFID技術の適用

[2005年7月号]

わが国でもEdyやSuicaなどの電子マネーが日常生活の中へと確実に浸透してきましたが、海外の金融業界でも新たな決済サービス分野でRFID (Radio Frequency Identification)技術が適用されつつあります。そうした事例の多くは従来からのプラスチック・カードにICチップとアンテナを組み込んだ形態ですが、なかには自動車のキー・ホールダーに組み込んだデバイスも登場している他、決済サービスに付帯する販売促進のためのマーケティング・プログラムを組み合わせた事例なども登場しています。そこで、今回は欧米の金融業界におけるRFID技術適用の一端をご紹介しようと思います。

RFID技術と金融ビジネスとの接点

RFID技術は通常、「ICタグ」と呼ばれていることが示すように、金融以外の幅広い業種で文字通り「物品の荷札」や「識別手段」として応用されることが多く、そのデータ入力の効率化や追跡(トラッキング)の正確化の他、セキュリティ管理などでも次第に効果を発揮しつつあるようです。 ところが、欧米金融業界でもわが国と同様に、決済サービスへの応用から実用化が始まっているようです。RFID技術それ自体はさまざまな応用の可能性を秘めている技術ですから、経済活動や社会生活のいろいろな場面においてその適用が進むにつれて結果的には金融ビジネスにおいてはまず決済サービスに対して何らかの形で浸透してくるものとして先駆的な取り組みが始まっているものと思われます。最近のセキュリティ管理の強化を背景として、決済サービスにおける本人確認や偽造チェックなどを目的に不正取引を検出する手段としてRFID技術が導入されつつあります。

手形・小切手決済への応用の模索

欧米金融機関が依然として大量に処理せざるを得ない手形・小切手決済は、事務処理コストを低減させると同時に、不正取引を検出するためのセキュリティ管理を強化する観点からRFID技術を適用する対象として格好のターゲットです。従来のMICR技術に基づく処理方式はデータ入力という点では一定の効果をあげましたが、セキュリティ管理という点では今や脆弱性は否めません。
手形・小切手を利用した決済は、金融機関はもとより経済取引に係わる複数の経済主体を経由した処理プロセスで行われています。ちょうど、ICタグが貼付された商品がメーカーから卸・小売を経由して消費者に届く過程とよく似ています。従って、業種横断的な標準化や共通化が前提となりますが、それらの取り組みによって経済全体では計り知れないコスト削減とセキュリティ強化が実現できます。

決済に付帯する付加価値の追及

わが国の「電子マネー」のような非接触型プラスティック・カードへの応用は欧米における決済サービスでも数年前に幾つかのパイロット・プロジェクトが試みられました。具体的には、2002年半ばに行われたAmerican ExpressによるExpressPay、Bank of America によるQuickWave、MasterCardによる PayPassそしてExxon MobilによるSpeedPassなど実験的な取り組みです。しかしながら、これらのプロジェクトの中で現時点でも商用サービスとして継続して提供されているのはExxon Mobilのサービスのみです。
こうした結果から伺われる経験則として、RFID技術がその本領を発揮するのは決済サービスにスピーディーさと自然な操作性が求められる場面ではないかという仮説がアナリストの間で指摘されています。すなわち、従来のプラスティック・カードと同等のサービスに固執した結果、わざわざ財布からカードを出して決済する場面よりは、ガソリン・スタンドで給油した際に手に持っている自動車のキー・ホールダーに決済機能を付加した方式が利用者に支持されたのではないかというものです。
更に一層の付加価値を追求しようとした事例としてRFID技術を適用した決済サービスにCRM(Customer Relationship Management)を組み合せたサービスがあります。様々な商品やサービスを購入した時点で、決済が完了したメッセージとともにいろいろなプロモーション情報、例えば割引クーポンやポイント情報などを付加してマーケティング活動で差別化を図ろうとするものです。

わが国金融機関への示唆

わが国の金融業界でも近年、ユビキタス社会への展望を踏まえて、RFID技術に対して関心が高まりつつあり、そうした状況を踏まえて海外の金融業界におけるRFID技術適用事例から得られる示唆を以下に取りまとめてみます。

従来、決済サービスは銀行本来業務として長い歴史を誇ってきた訳ですが、近年の情報通信技術の革新によってその牙城にも異業種からの侵食が始まりつつあります。わが国では現金決済が依然として主流ではありますが、「電子マネー」の伸長に対して安閑としていると、特に個人の決済情報が銀行以外の決済サービス提供者に次第に蓄積されていく恐れがあります。これまで銀行の自動振替で取り扱うことが多かった公共料金なども既に、カード会社が積極的に取り扱う姿勢を見せていますが、そうした矢先にカード会社と携帯電話会社との資本提携が発表されました。今一度、決済情報の捕捉と活用を戦略的に見直す時期ではないでしょうか。

以上述べてきたように、「総合金融サービス化」の進展から一段と競争が激化すると予想される資産運用サービス分野での戦略的なシステム拡充が世界的に始まっています。