海外金融業界動向
営業店における資産運用相談システム
[2005年6月号]
この連載の中で、2004年11月に「銀行による投資商品の売買仲介や窓口販売」、2005年4月には「営業店システムの再構築」というテーマでそれぞれ欧米の金融業界における動向をご紹介させて頂きました。総合金融サービス化の進展を踏まえると、これらに共通する業務課題として、伝統的な顧客接点である店頭でのセールスをいかに見直して、顧客が求めている資産運用ニーズに応えるかが近年ますます重要になっています。そこで、今回は欧米の金融機関において、店頭におけるセールス支援をどのようにシステム・サポートしようとしているのか、その取り組みの一端をご紹介しようと思います。
顧客価値の向上に向けた営業店チャネルの戦略活用
欧米金融機関でもわが国と同様に、商品やサービスのデリバリー・チャネルの観点から営業店をいかに評価して位置付けるかについて様々な論議が行われました。すなわち、付加価値の高い金融商品はやはり高額所得の顧客に向けて販売することが望ましいことは当然ながら、その一方でそうした商品のセールスには対面による然るべきアドバイスをした上でないと販売することが難しいことも経験的に認識されていました。また、顧客ポートフォリオ上で構成割合が高いマス顧客に対して、いかに付加価値の高い金融商品を販売するか、いろいろと効果的な方策が模索されてきました。
そうした試行錯誤の結果として、取引コストを抑制しながら顧客ポートフォリオ全体の価値を高めるために新たなマーケティング戦略が採用されているようです。具体的には、取引件数が相対的に多いマス顧客取引などに対してはコストの低いチャネルに誘導することによって営業店での取引頻度を低減させると同時に、相対的に金融資産が大きい富裕層に対してはじっくりと対面によるセールスを展開しようとするものです。
営業店システム更改における戦略的な狙い
時期同じくして営業店システムが情報通信技術の革新によって抜本的な更改時期を迎えていたことから、このような課題に対処すべく単に通信ネットワークやプラットホームなどの基盤の更改だけではなく、事務の効率化とセールス支援の高度化が戦略的に重要視されていたことは欧米金融機関からのヒアリング結果からも伺われるところです。
顧客と対面でじっくりと商品説明を行える専門的なセールス・スタッフの育成と並行して、店頭の情報装備を強化して優良顧客やその潜在的な顧客層を営業店に誘導するマーケティングを展開するための布石という狙いが最近の営業店システム更改には盛り込まれていたようです。投資信託や保険商品などのように従来の銀行商品と比較するとかなり複雑な商品をセールスするための支援アプリケーションが拡充されました。
資産運用相談を支援するソリューション
数年前から欧米金融機関ではマス顧客の上位層がさらに金融資産を蓄積して従来のプライベート・バンキングが対象としてきた顧客層の予備軍として台頭する傾向を先取りしてWealth Managementという資産運用ビジネスが定着しつつあり、そうした要請に対応したソリューションも登場してきました。ソリューションのシステム機能全体を俯瞰すると、顧客との取引口座や相談履歴の管理やアドバイスを支援する機能としてのフロント・オフィス部分と、実際の取引を実行する事務処理や契約管理などのバック・オフィス部分の他、リスク商品を取り扱う上で重要なコンプライアンス機能などをサポートするミドル・オフィス部分から構成されています。
特徴的なアプリケーション機能をいくつか解説します。個々の金融商品の事務処理を行うアプリケーションが搭載されていることは言うまでもありませんが、それらのアプリケーションに共通なワークフローやスコアリングなどのツールも整備されており、特にその一部としてコンプライアンス・チェックなどのモニタリング機能が強化されています。セールス活動全般を支援する期日管理やいわゆるTo-Doリストなどのサービスも利用できます。また、Customer Relationship Management(CRM)の観点からも、コンタクト履歴やキャンペーン管理の他、顧客収益性などをシミュレーションする機能も盛り込まれています。これらのサポートの上に、運用資産のポートフォリオ管理や個別金融商品の時価評価、商品入れ替えなどのシミュレーション機能が搭載されており、これらを利用して顧客に対する的確なアドバイスを行うことができるように構成されています。
わが国金融機関への示唆
わが国の金融業界でも近年、総合金融サービス化の進展を踏まえて、いわゆる「預かり資産営業」への取り組みが活発になりつつあります。そうした状況を踏まえて、海外の金融業界における営業店の店頭における資産運用相談システムの構築事例から得られる示唆を以下に取りまとめてみます。 従来の営業支援システムは自己完結的に構築されることが一般的だった訳ですが、近年、銀行が取り扱う商品は証券関係や保険関係など多様化していることを勘案すると、事務処理や意思決定支援などの業務ごとにコンポーネントを組み合わせて構築する柔軟性が求められているように思われます。オープン・システム化が進展している今日、適材適所でアプリケーション連携を図ることができるBest-of-Breedなアーキテクチャーは金融機関にとっては非常に重要な点となります。また、既存の勘定処理のアプリケーションやM-CIF(Marketing Customer Information File)/CRMなどいわゆる情報系システムとの連携により、新規追加コストを抑制することも考慮すべきことでしょう。
以上述べてきたように、「総合金融サービス化」の進展から一段と競争が激化すると予想される資産運用サービス分野での戦略的なシステム拡充が世界的に始まっています。
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