海外金融業界動向
営業店システムの再構築
[2005年4月号]
近年、海外の金融機関の間でも顧客の預かり資産の運用など総合金融サービスへ向けた積極的な取り組みが重要な業務課題となっています。時期を同じくして、営業店システムがインフラとアプリケーションとの両面から更改時期を迎えたことから多くの金融機関で営業店システムの再構築が始まっています。システム基盤の観点からは近年のインターネット技術を取り込んだ通信インフラの更改やユーザ・インターフェースのWeb化などが共通した取り組みとなっています。また、ミドルウェアとしてのワークフローなどを組み込むことでテラーの業務効率の向上を図りながら、顧客とのコミュニケーションをベースとしたマーケティング指向のシステムを構築しようとしています。そこで、今回は”営業店システムの再構築” をテーマとして取り上げたいと思います。
セールス拠点として再評価される営業点チャネル
顧客接点としてコールセンターやインターネットなどのダイレクト・チャネルが台頭してきた約10年位前には、伝統的な営業店が”Brick & Mortar”と揶揄されて本格的なインターネット実用化時代には「無用の長物」として衰退していくと予想する見解がかなり支持されていたように思います。実際、いわゆる「ネットバブル」の頃にはインターネット専業銀行が相次いで設立されましたが、その後本格的なプレゼンスを得たケースは稀でした。
その後、残されていた規制が緩和されて世界的に「総合金融サービス化」への取り組みが積極的にさるにつれて、営業店の存在が再評価されるようになりました。ダイレクト・チャネルの機能的な限界や顧客からの信頼感の低迷などから、やはり最終的な契約は対面で行いたいという顧客の選好と同時に、金融機関にとっても顧客にしっかりしたアドバイスを提供できるのは営業店が最も適しているという考え方が一般化しているようです。
決して潤沢な投資予算が確保できない中でどのようにしてIT投資の原資を捻出しようとしているのでしょうか。わが国でも指摘されているように、金融機関が負担しているIT関連費用の約80%はメンテナンス関連費用で占められています。ある調査会社の推定によれば、米国の金融サービス機関におけるシステム保守・メンテナンス費用は2003年から2007年にかけて18億ドル増加するものの、 IT関連支出の総額に占めるメンテナンス費用の割合は、次第に逓減していくものと予測されています。
営業店システム再構築の二極化
世界的に「総合金融サービス化」が進展する一方で、地域に根ざした中小の地域金融機関は決して大手の金融機関と同等のシステムを指向している訳ではありません。従って、営業店システムを再構築する取り組みにも大きく二つの考え方があるようです。
顧客の様々な金融ニーズに対して全方位的に対応しようとする大手金融サービス機関は顧客の関心事や選好を十分に把握する的確なプロファイリングを行った上でアドバイスに対する反応を踏まえながらカスタマイズされた「提案」を実施するためのプラットフォームとして営業店を位置付けています。一方、提供する金融商品やサービスの品揃えを比較的絞り込んだ中小の金融機関では、顧客取引の維持を念頭に置きながら顧客サービスを差別化要素として単純な商品を低コストで提供できるシステムを求めているようです。
営業店システム再構築のアプローチ
そうした取り組みの相違があるにせよ、システム化の対象機能とその時期によって全体を俯瞰すると以下のように概括できると思われます。
まず、当面、短期的には、従来利用されてきたアプリケーションをWindowsやLinux、そして更にWebベースで運用するためのマイグレーションが最優先課題で、その過程でテラーの事務作業をシームレスに連携させるためのプロセス管理の仕組みも導入されています。また、マーケティング観点からより的確なプロモーションを行うために顧客管理システムの拡充も同時に追求されています。
それらを踏まえて中期的には、テラーのワークステーションから複数のサーバやホストのアプリケーションへのアクセスを可能とするポータル機能を搭載することで業務効率の向上を図ろうとしています。また、そうしたアプリケーションやデータベースを自由に利用できる仕組みを提供することで情報を分析しながらセールス活動に活用する仕組みを構築しようとしています。
そして現時点では最終的に、単純な事務作業の自動化を実現して、テラー自身がポートフォリオ管理アプリケーションを駆使しながら専門的な資産運用などのファイナンシャル・アドバイザーへとレベルアップすることを模索しているようです。
わが国金融機関への示唆
わが国の金融業界も時を同じくして「総合金融サービス化」の潮流が台頭しています。また、地域金融機関などでも営業店システムの更改が相次いでいるようです。そうした状況を踏まえて、海外の金融業界における営業店システム再構築の動向から参考になりそうな取り組みとしていくつかポイントを取りまとめてみます。 第一に、顧客に対するアドバイスやコンサルティングを提供する拠点として営業店システムをマーケティング観点から再構築することが必要な時期を迎えているように思われます。次に、第二として、そうした事務効率化を追求することでシステム更改が行われてきた訳ですが、イメージ処理やワークフローなどの新たなシステム技術の登場によってバック・オフィスとの連携などで更なる効率化の余地が見られることです。そして、最後には近年登場してきたダイレクト・チャネルとの統合化が求められていることでしょう。
以上述べてきたように、海外の金融業界における営業店システム再構築の取り組みは今しばらく続くものと思われます。そうした取り組みの中でやはり Customer Relationship Management(CRM)は依然として重要なキーワードとなっているようです。但し、ややもすると商品・サービスの供給者側の論理によるCRM構築の反省を踏まえ、顧客主導のCRM再構築も始まっています。そういう意味では、顧客が取引関係を自ら管理する、Customer Manage Relationship、CRMという表現がより適切なのかも知れません。顧客から選ばれる金融サービスを提供する仕組みの構築が急がれます。
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