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海外金融業界動向
アプリケーション・マネジメント

[2005年3月号]

海外の金融機関の間でもコスト競争力を高めることは重要な経営課題となっています。特に、情報システム関連費用をいかに適正化するかという方策については多くの金融機関が未だ模索している途上にあると言えるでしょう。前回取り上げた“Linux”に引き続いて、TCO(Total Cost of Ownership)の削減を目指した取り組みの一環として、今回は“アプリケーション・マネジメント”をテーマとして取り上げたいと思います。欧米の金融業界でも、既存のアプリケーション・システムをいかに効率的に保守、メンテナンスしていくか、ITガバナンスの観点からも重要な課題となっています。

IT関連費用の構造改善

2000年前後のいわゆる「ITバブル」やその後に起こったテロや戦争などによってこの数年は世界的にIT 投資が冷え込んでいましたが、最近の金融業界の収益改善によって銀行などが新たなIT投資へと前向きに動き始めたようです。IT投資の意思決定を行う際に厳格なコスト削減が基準になっていることは依然として変わりませんが、新しい戦略的なITプロジェクトがIT投資を活性化させようとしています。
決して潤沢な投資予算が確保できない中でどのようにしてIT投資の原資を捻出しようとしているのでしょうか。わが国でも指摘されているように、金融機関が負担しているIT関連費用の約80%はメンテナンス関連費用で占められています。ある調査会社の推定によれば、米国の金融サービス機関におけるシステム保守・メンテナンス費用は2003年から2007年にかけて18億ドル増加するものの、 IT関連支出の総額に占めるメンテナンス費用の割合は、次第に逓減していくものと予測されています。

IT関連業務の再編による競争優位性の追求

こうした背景には、米国の金融サービス機関が短絡的に既存のレガシー資産を処分するのではなく、戦略的なコスト・マネジメントに基づいてIT投資を行う態勢に変わり始めていることが反映されていると分析されています。
米国の金融サービス機関にとして重要な業務課題として取り組んでいるITに関する戦略的なコスト・マネジメントの追求とは、様々な観点や分野において外部のITベンダーが提供しているアウトソーシングのようなサービス商品を利用することによって、オペレーティング・コストを削減し、同時並行的に業務革新を進めることを通じて競争力を強化するための情報システムに対して戦略的に資本を投資することです。目先の短期的な利益よりも長期的な利益、すなわち「顧客定着率の向上」、「クロスセリング率の向上」、「顧客獲得コストの削減」および「顧客サービスの向上」などを追求するものです。

金融機関によるIT関連サービス利用の構造

情報システム(IT)が金融サービスに係わるビジネスモデルに対して継続的なインパクトを及ぼしている中で、金融サービス機関はあらゆる業務ラインのIT オペレーションについて外部のベンダーが提供する様々なサービスを導入することによって、コスト負担を軽減することができるという価値を認識しつつあります。
外部のIT関連サービスを利用する形態は金融サービス機関の規模によって異なりますが、構造的に大きく捉えると4つの階層に分けて捉えることができます。通常、インフラに近い階層で、データ・センターやネットワークの運用管理を委託することが一般的です。その上に、基幹業務システムの一括アウトソーシングや特定の専門業務についてASP形態のサービス利用など、様々な業務ラインのITオペレーションについて外部の専門サービスを導入することもあります。更に、長年にわたって蓄積されてきたアプリケーション資産を効果的に保守ないしメンテナンスすることによって、コスト削減のみならず業務戦略の面でも様々な効果を得ています。また最近では、単にシステム関連業務に留まらず、業務処理そのものまでも包括的に外部の専門サービスに委ねているケースも増えつつあり、特に人件費の安いオフショアなどを活用するケースが注目されています。

金融サービス機関とITベンダーとの協調体制の模索

金融業界の競争激化を背景として、多くの金融サービス機関は本来業務への経営資源の集約を図ると同時に一連の固定費を削減する方策を模索しながら競争優位を追及しようとしています。一方では、新しい情報通信技術をベースとしたビジネスモデルを機動的に具現化する必要性にも迫られています。 金融取引のようにネットワーク化されたビジネス基盤の上で、個人や法人などの取引先と金融機関とが従来にも増して業務プロセス・レベルで密接に結合されていくことを展望すると、金融機関とIT関連専門サービスベンダーとがそれぞれのコア・コンピータンスを融合する協調体制を模索する動きが欧米で始まっています。そうした模索が狙っている、双方にとって相乗作用のある提携戦略は、やや閉鎖的にしかも垂直的に統合されてきた金融サービス機関の伝統的なビジネスモデルを根本的に変えるものとなるかも知れません。

以上述べてきたように、海外の金融業界におけるIT関連業務の見直しは依然として続いていますが、その一方で昨年9月に発表されたJ.P. Morgan ChaseとIBMとのアウトソーシング契約の解消は未だ記憶に新しく、業界関係者を驚かせたニュースでした。それまでアウトソーシング契約が長期化ないし大規模化してきた流れが、金融機関のみならずITベンダーにとっても改めてリスクの顕在化を再認識させられるものでした。