Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

海外金融業界動向
Linux

[2005年2月号]

金融業界の収益動向が内外で改善の兆しを見せ始めている中、一方で特にリテール分野を中心に合併や統合などによる業界再編が改めて相次いでおり、金融機関同士の競争が一段と激化しようとしています。こうした競争環境を背景にしていわゆるTCO(Total Cost of Ownership)を削減しようとする取り組みの一環として“Linux” が注目されています。本連載で1年半前くらいにも米国の証券業界におけるLinuxの適用に焦点を当ててご紹介しましたが、今回は広く金融業界におけるその後の動きを概括することにしたいと思います。

Linuxに期待が集まるオープン・ソース化の流れ

内外の金融機関においてUNIX やWindows/NTなどのプラットホームが導入されてかなりの歳月が経過しましたが、Linuxは以下のような点で欧米金融機関の間で一段と魅力的なものと捉えられているようです。
第一に、UNIX、Windows/NTその他のオペレーティング・システムに比べてライセンス費用が削減できるというコスト・メリットがあります。第二には処理能力の高さが挙げられます。クラスタ構成のLinuxサーバは僅かな追加費用でかつてのスーパー・コンピュータ並みの処理能力を実現することができます。また、第三にはハードウェアとオペレーティング・システムとを別々に調達できることもユーザにとって有利となるでしょう。最後に、第四には大手の金融コングロマリットにとってグループ内の様々な情報システム・インフラ上でアプリケーションを動作できることもメリットとして期待されています。

主な米国の証券会社におけるLinux適用の実績

Merrill Lynch、Morgan Stanley、CSFB及びE*TRADEなど米国の大手証券会社は積極的にLinuxを導入しようとしています。
Merrill Lynchは従来の経営情報システムをIntelアーキテクチャーによるLinuxサーバ上に移植することによって処理能力を2倍に高めると同時にコストを半減することができたようです。また、Morgan Stanleyは北米の取引所の市場データを配信するシステムやデリバティブ取引のスワップ値付けシステムなどでおよそ1000台のLinuxサーバを運用しています。従来、UNIXサーバ上で運用していたバスケット取引業務をLinuxサーバ上に移植したCSFBでも劇的な処理性能の向上が実現されたとのことです。一方、リテール証券分野では、E*TRADEが2002年にIntelアーキテクチャーによるLinuxサーバ上への全面展開、2003年にはクロス・セリング取引に利用するBusiness IntelligenceシステムをLinuxサーバ上で構築するなどの取り組みを通じてIT予算を3億2000万ドル(2000年)から2億ドル(2003年)へ削減することに成功したとのことです。

証券から銀行へ拡がり始めたLinuxの適用

ある調査会社の予測によれば、来年から再来年にかけて北米の証券業界において導入されている主要なオペレーティング・システムの20%がLinuxに移行するものと推測されています。
証券業界が先行しているこのようなLinux適用の潮流は次第に銀行業界でも始まりつつあるようです。最初に着目されているのはキャピタル・マーケット部門でのトレーディング・システム、コンプライアンス監視システム、トレーディングを支援する意思決定支援システムおよびリスク・マネジメント・システムなどです。これらのキャピタル・マーケット部門ではトレーディングに係わるコストを限りなく削減することによって部門収益を改善すると同時に投資家に対しても収益面での還元を図るために徹底的なロー・コスト・オペレーションが追及されています。
なお、これらの業務ではLinuxのみならず、グリッド・コンピュティング、Web ServicesおよびStorage Area Network(SAN)などの最新の情報通信技術を組み合わせることによってコスト低減が図られています。

Linux適用対象業務の拡がり

これまで述べてきたような証券業務において進行しているLinux適用がどのような時間軸でその他金融業務に拡大していくかを予見することは非常に難しいと言えますが、冒頭で述べたように一段と収益重視に傾斜している金融業界があらゆる方策でTCO削減に注力していくことは自然の成り行きでしょう。 上で述べたようなキャピタル・マーケット部門の業務は銀行の中でも証券会社に近い業務であることから比較的早い時期にLinux適用は進むものと思われます。やがて、銀行業務の中枢である「決済業務」、「クレジット取引」および「不正取引検出」などのトランザクション・システムにもLinux適用が始まるものと推測されます。更にその先には「営業店ネットワーク」や「インターネット・バンキング」などのミッション・クリティカルなシステムへの拡がりも考えられます。実際に、コンサルティング重視の営業店システム再構築が始まっているヨーロッパ、特にスペインやイタリアでは営業店ネットワークへのLinux 適用が前向きに検討されているようです。

以上述べてきたように、米国の証券業界のみならず、欧州の銀行業界などもロー・コスト・オペレーションの観点からLinuxについて導入を前提とした検討を始めており、その信頼性や可用性などをにらみながら順次、本格的な適用が段階的に進むように思われます。現時点ではまだまだ緒についたばかりですが、 Linuxなどのオープン・ソースを基盤とするシステム構築によって金融業界におけるロー・コスト・オペレーションへの取り組みに一層の拍車がかかるものと思われます。