Fujitsu The Possibilities are Infinite

 

海外金融業界動向
文書の電子化

[2005年1月号]

今年4月から「e-文書法」が施行されることを受けていよいよわが国でも法定保存文書の電子保存が認可されます。昨年春に発表された経団連の情報通信委員会の試算によれば、従来、紙での保存が義務付けられていた会計・財務や税務などの法定帳簿書類の保管に要していた費用は年間約3000億円に上ると言われており、これら一連の関係書類が電子化されることで一般事業会社はもとより金融機関でも大幅なコスト削減が可能になるものと期待されています。今回は目前に迫った法令施行を踏まえ、データのデジタル化が進む現在、海外の金融業界において「文書の電子化」に対してどのように取り組みが行われているか、そうした動向についてご紹介したいと思います。

経営情報のSupply Chain Management化

海外の金融機関では内部的な経営情報の伝達・流通や共有化に対してかなり早い段階から積極的に最新の情報処理技術を導入してきました。具体的には、逐次的に構築されてきたアプリケーションやそれらのサブシステムが抱えるデータをいかに組織横断的に統合化するかというシステム課題の解決策として Enterprise Application Integration(EAI)やEnterprise Information Portal(EIP)などのアプローチを採用してきました。また、eXtensible Markup Language(XML)なども業界として率先して応用することで情報の記述方法の標準化や情報交換の共通化を図ってきました。そうした取り組みによって内部的な経営情報の電子化はかなり実現されてきました。しかしながら、外部から入手ないし提供される情報は依然として紙ベースのものが多く、内部の情報との一体的な管理や活用という点では課題は残されたままでした。

取引先との情報交換の電子化

こうした金融機関側における課題解決の機運は多くの取引先が中小企業であることからわが国の中小企業庁に相当する米国のSmall Business Administrationでも中小企業に対するペーパーレス化に関する指導を90年代末から推進しています。具体的には、多くの中小企業で行われている業務を分析して情報システムで自動化できるプロセスを分析して、その業務遂行の過程で作成される文書の電子化を提唱しています。
更に、金融業界の中でも文書を取り扱うことが多い保険業界では、事務処理コストを削減する目的で業務プロセスの自動化に取り組んでいます。保険ビジネスでも代理店との契約データの授受、保険契約者との契約書の取り交わし、そして万一保険事故の場合の査定作業における文書作成など、一連の業務プロセスにおいて作成される文書を電子化することによる効果は極めて大きいものがあります。

Business Process Managementを踏まえたアプローチ

こうした状況を踏まえて、多くの金融機関ではイメージ処理技術を利用したような単なる文書の電子化のレベルは既に実現していることから、組織横断的な業務プロセスの自動化というアプローチの中で取り組んでいることが一般的です。
具体的には、ある業務プロセスの推進を支援する情報インフラとしてEAIをベースとして、その上にビジネス・ルールやワークフローなどと共存する形で文書管理を実現するシステム構造を実現しようとしています。いわゆるBusiness Process Re-engineering(BPR)の取り組みを前提として、業務プロセスを分析することと同時に文書の電子化を模索しています。その際には、事務効率化という観点からのStraight-Through-Processing(STP)の考え方によるビジネス・プロセス管理の自動化を図ると同時に、コンプライアンス対策という観点からも然るべき遵法性が確保されているか否か、リアルタイムでモニタリングする仕組みが組み込まれています。電子文書については作成時点のタイム・スタンプや改ざんないし偽造されていないという認証などの機能も確保されています。
こうした一貫した考え方に基づく業務プロセス管理の仕組みの中で文書の電子化もひとつのコンポーネント機能として構築されています。

ペーパーレス化を図るためのチェックポイント

このような取り組みでは、まずは金融機関が抱えている業務課題や組織課題などを分析してどのように業務プロセスを連携させることがそれらの課題解決に効果的か検討することが最初のステップとなります。単に既存ないし新規構築の情報システムのインターフェースを設計して連結することだけでは実効性を高めることはできません。 次に重要なテーマはセキュリティの確保です。言うまでもありませんが、従来、紙で管理されていた会計情報や契約情報などが電子化されると、情報の改ざんや流出のリスクはかなり高まりますから、そうしたリスクの抑止策が求められます。最後に留意すべきポイントとして、情報のアクセス頻度を踏まえた電子化すべき文書の絞り込みや優先選順位付けがあります。確かに記憶容量単位でのコストは逓減していますが、徒に膨大な文書を短兵急に電子化することは投資対効果の観点からも決して望ましいことではありませんから、段階的な進め方が肝要です。

冒頭で従来の紙ベースの文書管理が電子化されることで大幅なコスト削減効果が期待できるという報告があることを述べました。しかしながら、単純な文書の電子化のみに終わればその経費削減は一過性のもので終わってしまいます。これまで述べたように、文書が作成されたり、授受されたりする現場の業務と一体で総合的な運用コストの削減を実現して始めて持続的な効率化が図られたことになります。