学校で授業を受けたり、友だちと過ごすことのできない不登校児童・生徒は、今、教育現場が抱える課題の一つとなっています。
そこで、豊島区教育委員会では、区内の小・中学校に在籍しながら、登校できない児童・生徒を対象に、インターネットを通じて、学習支援やコミュニケーション能力の向上を目指した自宅学習システム「マイスクールネット」を2003年9月から導入されています。
豊島区教育委員会では、これまでも区立教育センター内に「適応指導教室」を設け、個々の学力やコミュニケーション能力に応じた指導をし、学校復帰を目指す不登校児童・生徒のための支援の場としてきました。しかし不登校児童・生徒の中には、社会とのかかわりがもてない、いわゆる「ひきこもり」の児童・生徒も若干名います。彼らは、適応指導教室にも参加することができないので、学力やコミュニケーション能力を伸ばす機会が少なく、それが彼らに自信を与える機会を逸し、彼らの心を開かせるよりよいきっかけが見出せずにいました。
そこで自宅にいながらにして学習でき、また、教育センター指導員とのメールでのやり取りを通じて、コミュニケーション能力を身につけることのできるインターネットの活用に着目。教育センターと個々の不登校児童・生徒の自宅をインターネットでつなぎ、学習指導などを行う「マイスクールネット」を構築し、2003年9月から稼働を始めました。
「マイスクールネット」のしくみは下図のとおりです。
不登校児童・生徒は、豊島区から貸し出されたノートパソコン、もしくは自宅で利用しているパソコンから、インターネットで適応指導教室内のサーバにアクセスし、コンテンツを利用します。コンテンツは、学習支援を行う「学習ソフト」と、会話などを行う「コミュニケーションソフト」があり、個々の児童・生徒の力に応じて使用していきます。
これまでインターネットを通じて、カウンセリングをしたり、学習教材を利用する例はありましたが、学習支援とコミュニケーションの双方のコンテンツをもち、さらに個々の児童・生徒の力に応じた対応を行う「マイスクールネット」の取り組みは、全国でもほとんど例のないものです。これは、学習支援とコミュニケーション能力の向上に体系的に取り組み、一人でも多くの児童・生徒が、一日でも早く、『適応指導教室に行ってみたい』と思えるきっかけになることを目的に構築されました。

「マイスクールネット」のネットワーク構成図

「マイスクールネット」のトップページ
「マイスクールネット」は、「学習ソフト」と「コミュニケーションソフト」の2つで構成されています。
「学習ソフト」は、小学校1年生から中学3年生までの教材が用意されており、児童・生徒は、画面上で示される問題を解いていきます。正解が画面に表示されるほか、質問や疑問があれば教育センター指導員宛にメールで問い合わせることも可能です。
「コミュニケーションソフト」では、指導員が掲示板や会議室に行事予定やお知らせなどを書き込み、児童・生徒がそれを閲覧したり、さらに書き込んだりして利用されます。この取り組みを通じて、社会に対する適応能力を高めることができます。
「コミュニケーションソフト」としては、富士通高知システムエンジニアリングが開発したグループウェア「MyWeb」を活用されています。導入に際しては、学校現場の実態に即した機能を備えていること、コミュニケーションツールとして充分な機能でありながら、児童・生徒にもわかりやすいインターフェースをもっていること、カスタマイズがしやすい点などがポイントとなりました。

齋藤 等氏
豊島区教育委員会
指導主事
「マイスクールネット」を開始して約半年。外部の人とかかわりをもつのが苦手な児童・生徒たちなので、「コミュニケーションソフト」を使った書き込みが頻繁に行われているわけではありません。しかし、掲示板を通じて、「書き初めをやろう」と呼びかけたところ、自宅で書いた作品を適応指導教室に送ってきた児童・生徒もおり、利用の成果が少しずつ見え始めています。
今後の取り組みについて、指導主事の齋藤等氏は次のように語られます。
「継続していくことで、一人でも多くの児童・生徒の心に響くものでありたい。そして、学力を補い、コミュニケーションの糸口を見出し、まずは適応指導教室へ、そしてそれぞれの在籍校に復帰することを目指してほしい。その意味で、このシステムはインターネットだけですべてを解決するものではなく、ひきこもりの児童・生徒に外の世界に目を向けさせるきっかけでありたいと思います」
豊島区のみならず、不登校児童・生徒対応に悩む教育現場にとって、「マイスクールネット」が、よりよい福音となることが期待されています。