日本の安全神話が崩れ、児童・生徒を狙った凶悪犯罪が増加し、教育機関もその対策を迫られています。神奈川県下に96の学習塾を展開する株式会社ステップは、このような社会状況に危機感を強め、生徒の入退室時間を保護者に知らせる富士通の「登下校管理システム」を、いち早く導入しました。ICカード「STEPパス」を無料で全員に配布し、出欠状況のリアルタイム確認や保護者への伝達事項のメール配信にも利用しています。
ステップは、神奈川県下で、小学5年生から中学3年生までの高校受験と、現役高校生の大学受験を指導する学習塾を展開。「ネットワークで支援された寺子屋の連合」を目指す同塾は、少人数によるきめ細かい指導を行っているのが特徴で、神奈川県における公立トップ高校へ1220名が合格(2006年3月)と、県内塾別合格実績でトップクラスです。
「ステップには小中学生が多数在籍するため、以前から登下校時の安全対策には力を入れてきました。しかし、児童・生徒を狙った凶悪な犯罪が増加し、保護者のセキュリティ意識も高まり、龍井郷二代表の指示で、04年冬頃から新たな安全対策の導入を検討し始めました」と語るのは、データ管理室室長の片山基氏です。
株式会社ステップ
データ管理室主任
吉田直人氏
生徒の入退室を確認する安全対策ソリューションの導入に際しては、複数社から話を聞き比較検討しました。各社からの提案には、ICカード(RFID)だけでなく、バーコードやリライトカードを使用するものもありましたが、ステップが最終的に選択したのは富士通の「登下校管理システム」でした。
データ管理室主任の吉田直人氏によれば、「個人情報保護の観点からも、情報を社外に出すことは極力避けたかったので、自社内にサーバを設置する方法も選択できたこと」が決め手になったそうです。

富士通の「登下校管理システム」では、用途に合わせて「アクティブ型R F I D タグ」と「パッシブ型R F I Dタグ」を選択できます。ステップが採択したのは、パッシブ型のRFIDを内蔵したICカードでした。
一般の小中学校のように、校舎が1箇所に集中している場合には、校門等に受信機を設置して、生徒が通るだけで自動的に入退出の確認が行われるアクティブ型の利用が適しています。しかし、ステップのように、多数の教室が各地に点在している場合には、ネットワーク機能を搭載したICカードリーダーを社内LANに接続するだけで導入でき、各教室ごとに管理者を置く必要がないパッシブ型の方が、費用対効果の面からも有利でた。サーバは本部にだけ設置すればよく、既存のネットワークをそのまま利用できるため、新たな通信費も発生しません。
ステップでは、生徒証を兼ねたICカード「STEPパス」を、すべての生徒(小中学生)に無料で配布し、入退室管理と、保護者へ入退室時間をお知らせするメールの配信に利用しています。
教室への入退室時に、生徒がSTEPパスをICカードリーダーにかざすと、その時刻が記録され、保護者には、入退室時間を知らせるメールが自動配信されます。入退室の記録は、各教室内に置かれたPCからも参照できるので、教職員はいち早い入退室確認と対応が可能です。また、生徒がSTEPパスを紛失してしまった場合にも、ICカードには個人情報は一切記録されていないため、情報漏洩の心配がありません。
「登下校管理システム」を塾内では「STEPパス」サービスと名付けました。このサービスの導入は、まず、05年6月に藤沢市の湘南台スクールからスタートし、7月には同校舎の近くにある六会スクールの導入試験運用を実施して、問題点の洗い出しを行いました。全校への展開は、9~10月に3段階に分けて実施されました。「システム導入時に一番苦労したのは、保護者の方々にメールアドレスを登録していただくこと」だったと片山氏は振り返ります。
当初、メールアドレスを登録するには、携帯やPCにURLを打ち込んで専用のWebサイトにアクセスする仕組みにしましたが、その段階でつまずいてしまう保護者の方が少なくありませんでした。そこで、メールが届かない保護者の方には、手分けして電話をかけ、正しい登録の仕方を説明したそうです。
「現在では、富士通の方に改善していただき、保護者がステップに空メールを送るとサイトへのリンクが保護者に送られてきて、それにアクセスするだけでよくなりました。しかも自分のメールアドレスが既に入力されている状態からスタートするという仕組みが追加されています」と吉田氏。
もう一つの大きな問題点は、メールが到達するのに時間がかかり過ぎることでした。システムの導入当初は、メール配信が集中する下校時に配信が遅延し、着信するまでに時には30分近くかかることもありました。生徒の退室を知らせるメールが、クルマで迎えに来ている保護者になかなか届かず、子供を長時間待たせることもあったそうです。
この問題を解決するために富士通では、携帯キャリア等の迷惑メール防止策に引っかからないよう、メールを単純に一斉配信することを止め、振り分けて少しずつ配信するなどの工夫を凝らしています。その結果、通常はコンマ数秒、遅れた場合にも1~2秒程度でメールが到達するようになりました。

片山氏によれば、「STEPパス」サービスは、保護者の方々にとても好評で、中でも小学生の親御さんからは「子供の帰宅時間が分かって安心」だと高い評価を得ているそうです。
また「STEPパス」サービスは、教師から保護者の方々への伝達事項をメール配信できる機能を備えており、ステップも積極的に活用しています。この機能を利用すれば、登録メンバーへの一斉配信だけでなく、特定の人やグループだけにメールを送ることができるため、各教室の教師は、印刷物と組み合わせて、保護者とのコミュニケーションの円滑化にとても役立っているそうです。