
青梅市立第一小学校
全国の小中学校でパソコン導入が進められています。しかし、その多くは有線LANへの接続が前提で、利用できる場所もパソコンルームに限られている場合がほとんどです。これでは、通常の授業へのパソコン活用に限界があります。そこで、青梅市教育委員会では、市内の小学校5校に無線LANとノートパソコンを導入し、校内のどこからでも自在にネットワークにアクセスできる環境を構築しました。そのうちの1校である青梅市立第一小学校では、普通教室での授業にパソコンを活用し、算数や理科などの学習指導でも大きな効果をあげています。

宮森一成先生
青梅市立第一小学校
平成15年度で創立130周年を迎える青梅市立第一小学校(以下、第一小学校)は、JR青梅駅北側の高台に位置し、各教室から市街を一望することができます。また、校舎の背後には裏山(永山丘陵)があり、自然に恵まれた環境にあります。
第一小学校に本格的にパソコンが導入されたのは2001年のこと。有線のLANで接続された3台のデスクトップパソコンが設置されましたが、あまり活用されなかったようです。「情報教育を行うにも台数が少なくて、児童が順番に使わざるを得ませんでした。ずいぶん不便をしていました」と、第一小学校の宮森一成先生は振り返ります。

充電台を兼ねたパソコンの保管庫
第一小学校のパソコン環境が大きく変わったのは2004年になってからです。前年8月から校内に無線LANの工事が開始され、翌1月には児童用のノートパソコン40台、教職員のノートパソコン4台、デジタルカメラ20台、プロジェクター2台などが導入されました。ノートパソコンには富士通製のFMV-BIBLOを採用。このオールインワンノートパソコンと無線LANを組み合わせることで、全教室からインターネットと青梅市教育用サーバへアクセスできる環境が実現しました。
この新しいパソコン環境の導入は、青梅市教育委員会によるIT化促進の3ヵ年計画に基づいて実施されたものです。平成15年度がその1年目にあたり、第1年次の5校に第一小学校も含まれました。
第一小学校では、パソコン担当の先生方が授業内容と指導方法を計画・準備し、パソコン活用をスタートしました。しかし、第一小学校には情報教育専任の先生はいません。そこで、パソコンに詳しいボランティアの大学生の支援を受け、1ヶ月間集中して授業を担当してもらいました。このボランティア学生による支援のおかげで導入時としては極めて効率の良い学習ができ、パソコン導入をとてもスムーズに進めることができました。
その後も企画とコーディネートはすべてパソコン担当の先生方が行い、パソコンを活用した授業と教職員向けの研修を実施しています。

多目的ルームでクラス全員が
パソコンを使って学習
パソコンを始めとする設備の導入は教育委員会主導でしたが、それらをどうやって活用するかはそれぞれの学校の裁量にまかされています。
1年生はマウス操作を覚え、2年生はお絵描きソフトでもう少し高度な使い方を学習し、3年生以上は基礎的なパソコンの操作について学習を進めることにしました。
具体的には、全校で取り組んでいる、みんなでもっと本を読もうという活動「1冊の本」を共通テーマに決めました。自分が選んだ本の表紙をデジタルカメラで撮影し、自分なりに内容をまとめ、友だちに紹介。掲示板機能を使用して、みんなで相互に本にコメントを付け合います。単にパソコンの操作を覚えるだけではなく、この活動を通して情報発信と情報共有を児童一人ひとりが体験することを目的としています。
また、メールの作成と送信、受信と返信など、パソコンとネットワークを使用したコミュニケーションのとり方も学習しています。これらの取り組みを通して児童がパソコンに慣れるようにし、4月の新年度からは本格的にカリキュラムに取り入れていく予定です。

佐藤 広明先生
青梅市立第一小学校(現 福生市立福生第六小学校)
無線LANを利用したノートパソコンのメリットは、パソコンを使用した学習が、パソコンルームに限定されないところにあります。40台ある児童用パソコンは基本的に予約制となっていますが、場合によっては後から申し込んできたクラスと、半分ずつ20台で授業をすることができます。さらに、必要に応じて4台貸し出したり、2台だけ貸し出したりするなど、柔軟に対応しています。
「普通教室で行う算数の授業でも、教師のパソコンにプロジェクターを接続して授業に活用しています。板書よりも子どもたちが注目してくれますね」と、第一小学校の佐藤広明先生(現 福生市立福生第六小学校)は語ります。例えば、円の直径と円周の関係は、本当に「3.14」なのか。これを確かめるために、児童に円の円周と直径を実測させ、それをパソコンに入力させます。円周率を求める式をあらかじめ設定しておき、児童が数値を入力すると「3.14・・・・」という値が画面とプロジェクターに計算表示され、それに児童は驚き、改めて円周率の意味を認識するそうです。

普通教室でパソコンを
使いながら算数の授業
「授業でパソコンを使うようになってまだ間がありませんが、実験的に使ってみて、大きな効果を感じています。子どもたちにもアンケートしましたが、8割がもっとパソコンで学習したいと言っています」と、効果の大きさを佐藤先生は強調します。
「従来はパソコンを利用できる場所が限られており、大きな学習効果は期待できませんでした。しかし、無線LANとノートパソコンを組み合わせれば、いつでもどのような授業にでも活用できます。私たちは、パソコンを使っていかに授業を活性化できるか、その可能性に取り組んでいます」と言うように、宮森先生も理科の授業でパソコンを活用しています。たとえば、天気予報のサイトから台風の際の天気図を取り込み、1時間ごとに天気図がどのように変化していくのかを児童に見せています。また、アゲハチョウの脱皮の様子をデジタルカメラで撮影し、プレゼンテーションソフトで再生するといった、手作りの教材作りにも活用しています。
学校にあるのは無線LAN環境とクライアントのみで、サーバは設置されていません。データはすべてネットワークを介して、教育委員会に設置されている青梅市教育用サーバに保存されます。そのため、自在にパソコンを使いこなそうとすると、青梅市教育用サーバとのやり取りに時間がかかるのがネックになるとも言います。この問題を解決するために、教育委員会と各学校を結ぶ回線を2004年夏には100MBに増強し、レスポンスの改善を図る予定です。
宮森先生と佐藤先生は情報教育専任ではありませんが、共にパソコンの知識が豊富で、その知識がパソコンを活用した授業を可能にしています。パソコン活用による授業の活性化を全校レベルで展開していくには、教員全体のITリテラシーの向上が課題になります。その牽引役として、両先生は与えられたIT環境を最大限に活用し、パソコンと無線LANの可能性を引き出そうとしています。第一小学校で実践している「新しい教室の形」は、他の学校にとっても大きな刺激になることでしょう。