これまで公共の交通機関を持たなかった大口町には、そうした特徴をも強みとしてしまうようなパワーがあふれています。豊かな田園風景と先進技術の融合を目指し、まちづくりの一貫として「サイバータウンプラン」に取り組んでいます。このプランのなか、教育の現場でも、子どもたちの「確かな学力」「コミュニケーション能力」の育成と、「開かれた学校づくり」を目指して、学校の情報化と地域や家庭との連携強化に努めています。
IT(情報技術)の恩恵を全ての住民が享受できる環境を整え、ITを利用した施策を展開することで、人と人との距離、人と自然との距離を縮め、田園風景の残る未来型のまちを目指す-----。大口町は、こうした構想のもと、「サイバータウンプラン」を策定しました。まずは平成13年、町内全域をブロードバンド化し、「誰でも、いつでも、どこからでも」参加できる町民のネットワークを完成させました。

主査 吉田雅仁氏
大口町教育委員会
教育現場においてもサイバータウンプランを受け、ITをどのように活かすことができるかを検討するために、各校から教職員が集まってスクールネット委員会を組織しました。子どもたちの「確かな学力」「コミュニケーション能力」の育成のためにITを活用するのはもちろんのこと、「開かれた学校づくり」が地域社会にもたらすプラスの効果にスクールネット委員会は注目しています。
大口町教育委員会 主査 吉田雅仁氏は、教育現場の取り組みについて次のように語ります。「学校から連日のように情報が送られれば、大口町の家庭のインターネット接続率は飛躍的に向上すると予想されます。これは、開かれた学校づくりにも大きな役割を果たし、学校と家庭の信頼関係の向上につなげることができるのです。さらに、児童・生徒による地区のお年寄りとのメール交流、ボランティア募集など、ITが媒介となって地域とつながる方法はいろいろと考えられます」

土井 謙次先生
大口北部中学校
教頭
大口町の3つの小学校、2つの中学校は、いずれもホームページを充実させています。なかでも大口北部中学校では、教頭の土井謙次先生が中心となってメールマガジンを発行し、学校からの情報発信に努めています。同校はまた、東京と山中湖への修学旅行の様子をカメラ付き携帯電話で撮影して、ほぼリアルタイムにホームページで公開するという試みを行いました。これには大きな反響があり、保護者を中心に多数のメールが寄せられました。
また、同じく実験的なものではありましたが、大口北部中学校では平成16年3月の卒業式の様子を、動画と音声をインターネットで配信するストリーミング技術を用いてホームページで生中継しました。生徒一人ひとりが卒業証書を受け取る様子を放映したのです(その際、個人が特定できないよう配慮されました)。当日、仕事の都合などで卒業式に出席できなかった保護者も、インターネットを通じてわが子の大切な瞬間を共有することができました。
さらに、その卒業式の様子は、老人福祉センターでもストリーミング中継されました。集まったお年寄りは、若い頃の自身の卒業式に思いを馳せながら、「卒業式というものは昔から変わらないね」「いや、ずいぶん変わったわよ」と口々に感想を述べ合ったといいます。老人福祉センターと中学校をつないだこの試みについて、大口北部中学校教頭の土井先生は、次のように語っています。
「正直言って、卒業式には保護者の方々しか興味を持たれないだろうと考えていましたので、地域の皆さんがこんなに喜んで見てくれるのだということは、新たな発見でした。こうしたことをやってよかったな、と思いましたよ。実際に、老人福祉センターのお年寄りと学校の距離は、確実に縮んだわけですよね。これはたいへん貴重なことだと思います」
9月16日に行われた体育大会でも、幅広く告知したうえで、リアルタイムにインターネットで放映しました。「当日は、生徒たちがカメラマンになって活躍してくれました。また、今年から生徒会の提案で生徒が考えた応援合戦が始まりましたので、体育大会の終了後に応援合戦の様子をホームページに残しました。」(土井先生)

こうした取り組みの延長線上に、土井先生はこんな夢を描いています。
「オーストラリアの学校に、町から中学生を派遣しているのですが、今後は双方の教室をつないで交流していきたい。大口町の子どもたちにとっては英語の勉強になるし、日本語を勉強しているオーストラリアの子どもたちにとっては日本語の勉強になります。こうした交流を『イベントではない、日常的な当たり前のこと』にしていきたいと考えています。それにより、互いの距離がもっと近くなるのです」
ITを活用した地域との交流、そして海外との交流、どちらも空気のように自然に行えるようになる日も近いようです。