児童・生徒の情報活用能力の向上と、学習内容の充実に向けて、現在、小・中学校では、IT技術を活用した教育に取り組んでいます。しかし、個々の“学校まかせ”では、パソコン等に対する教員の理解度及びリテラシーの差により利用頻度にバラつきが見られたり、個人情報やセキュリティの面でも、学校ごとに見解の違いが生ずるなど、よりよい活用に向けた模索が続いています。
そんな中、西東京市教育委員会では、「高度教育用ネットワーク利用環境整備事業」を活用し、教育用イントラネットを構築すると共に、「教育情報センター」を設置し、各校での実践的な情報教育をサポートしています。市内の小・中学校の教育情報ネットワークをトータルに支える仕組みとして、富士通の「@SCHOOL(アットスクール)」シリーズを導入。各アプリケーションの機能を活かし、学習支援や図書館システムなど多面的な利用を推進しています。

教育情報センター 研修室
西東京市は、2001年に東京都西部の保谷市と田無市が合併して生まれました。
同市では「地域情報化の推進」を重点施策に掲げており、総務省が全国8自治体を対象として、教育用コンテンツの効率的な活用を目指した「EduMart(エデュマート)」の実証実験参加自治体の1つにも選ばれています。さらに同市では、既存の光ファイバー網を活かした市内全校の教育用ネットワークの整備と、それらの中心的な役割を担う「教育情報センター」の開設に取り組み、児童・生徒が楽しく安全に学べる教育環境の充実を目指しています。
保谷庁舎の一角を利用した教育情報センターには、20台のパソコンを設置した研修室があり、センター所属の情報教育専門員の指導により、いつでも操作研修や相談に対応することができます。夏季休業日などを中心に、教員を対象にした研修会も開かれ教員の情報機器の活用能力の向上を図っています。

池田 富太郎氏
同市教育委員会
学校教育部指導課の指導主事
同市教育委員会 学校教育部指導課の指導主事である池田富太郎氏は、ネットワークの整備と教育情報センターの開設について、次のように語られます。
「2002年度から始まった『総合的な学習の時間』では、各校でさまざまな取り組みが行われています。既存のパソコン教室を利用したインターネットでの調べ学習もその1つであり、ITが教育現場にどんどん利用されていく中で、その運営を学校まかせにするだけでいいのか、という検討が進められました。たとえば個人情報の扱いについては、万全なセキュリティが求められますが、小学校19校、中学校9校、児童・生徒の利用総数が約12,000人、端末数でも1,000台ということになると、学校だけで対処することは難しいでしょう。また当市では、2003年から学校選択制を導入し、市内全校の中から、通学校を選択するためには、各校の情報を一般市民に公開する責任も生じます。そのためには各校のホームページが果たす役割も大きくなると思います。
これらの多様なニーズに応え、市内全校の情報化のレベルアップを図るために、教育情報センターが開設されました」

田無小学校 図書室
教育情報センターの開設と共に、市内の小・中学校の教育情報ネットワークをトータルに支えるシステムとして、富士通の「@SCHOOL(アットスクール)」シリーズを導入しました。その内容としては、学習支援を目的としたグループウエア「ES@SCHOOL」、学校図書館の情報化を支援する「LB@SCHOOL」、ホームページの開設・運用などをサポートする「TS@SCHOOLポータルサイトシステム」の3つです。これらのシステムも教育情報センターが中心となったセンター集中接続型で一元管理されています。
3システムの採用について、池田氏は次のように語られます。
「当市のこれからの教育システムとして求められるものを検討した結果、学習支援、図書館、ホームページに関する3つになりました。市内全校のホームページは開設しましたが、図書館システムでは、各校ごとに蔵書の登録作業などが必要ですし、学校間交流などに活用できる学習支援システムでは、セキュリティポリシーが検討中のため稼働できない面もあり、一斉に本稼働には至っていません。まずモデル校として4校でトライアルし、課題を整理した上で、全校での稼働を進めています。段階を踏むことで、当市にあった使い方がなされていると思います」

小倉 統氏
教育情報センター
情報教育専門員
教育情報センターを核としたよりよいシステムを、教員一人ひとりが理解し、意欲的に活用するために、同市では専門スタッフを配置し、各校ごとの指導を行っています。
学校図書室には、司書スタッフが1日おきに勤務し、調べ学習でのリファレンスに対応したり、貸出データを管理し、返却日の確認などを行っています。
また、司書スタッフ以外に、各校ごとの情報教育専門員が小学校では週2日、中学では月に3日巡回し、IT活用に関するさまざまな相談に対応しています。その役割は次の3点です。
システムの稼働に際しても、各専門員がまず富士通からの研修を受け、各校の現場に伝えていく仕組みを採用しており、専門員によるわかりやすい指導は各校から信頼される存在となっています。
教育情報センターの開設、統一システムの導入、情報教育専門員の派遣を通じ、同市では設備だけではなく、真に使いやすいシステムの実現を着々と推進しています。教員にとっては、先進的な取り組みと受け入れられており、情報教育に対する意欲を引き出すきっかけとなっています。

総合的な学習の時間
これらの取り組みを現場ではどのように受け止めているでしょうか。情報教育モデル校でもある田無小学校でお話を伺いました。校長の芳賀明子先生は一連の取り組みについて、次のように語られます。
「パソコン教室等の設備はすでに整えていますが、これまでは個々の教員の裁量に任されていた部分が大きかったと思います。システムの導入や専門員による支援などを通じて、全校としての組織的な取り組みのスタートラインに立てたと感じています」

芳賀 明子先生
田無小学校校長
専門員の派遣については、教員の理解度を助けるものとして、大変歓迎されています。同校で情報教育の推進に努める坂内久美子先生は次のように語られます。

坂内 久美子先生
田無小学校
「専門員の来校日は、操作や指導について自由に相談することができるので、先生方の安心感も増しているようです。教員は自分のスキルを高めるだけでなく、子どもたちに適切に指導する必要もありますから、専門員の指導によりきちんとした操作を身につけることができます。また、スキルを高めた先生方が他の先生に指導する気運もあり、教員の手による教材も生まれています。こういった教材は、子どもたちの興味や関心を引きつけ、意欲的な学習に役立っています」
また、図書館ではこれまでの貸出票の記入から、バーコードでチェックするだけの貸出方式に変わったので、手軽に借りられるようになった上に、管理も的確にできるようになりました。図書館システムでは、他校の蔵書状況も確認できるので、今後はますます利用規模が広がっていくことでしょう。
2003年に開校130周年を迎えた同校では、記念誌の作成もパソコンを活用。また同校の歴史にまつわる各学年での調べ学習や発表でもパソコンが利用され、情報教育の推進が積極的に行われています。

小此木 始先生
田無小学校教頭
今後の取り組みについて、教頭の小此木 始先生は次のように語られます。
「子どもたちは、自分で操作することや調べたいものを見つけていくことに喜びを感じています。私たちはその気持ちをよりよく伸ばしていくために、教員としてのスキルを身につけることはもちろん、体系的な学習計画を立てていく必要があると思います。今後、他校との交流が始まれば、情報に対するルールなどを指導する必要もあるでしょう。いかに使わせるかではなく、何を学ぶかの本質を見失わないように取り組んでいきたいと思います」
「地域情報化の推進」に向けた同市の教育現場での取り組みは、まだ始まったばかりですが、施設、システム、サポートと3拍子揃った実践からは、これからの大きな成果が期待できそうです。