「書いて覚える」ことは、学習には不可欠の行為です。しかし、通常のパソコンでは、書くことはほとんど不可能であり、用途も情報教育や総合的な学習の時間が中心となっていました。そこで、兵庫県三木市立教育センターでは、富士通研究所が開発した手書き文字認識技術をベースにして、計算ドリルや漢字書き取りなどのタブレットPC用の手書き電子教材を開発しました。その検証の場となったのが、兵庫県三木市立緑が丘東小学校です。100マス計算も瞬時に採点できるうえ、従来不可能と思われていた、漢字の書き順までチェック可能。教育現場で効果をあげ、タブレットPCの大きな可能性を確認できました。

梶本 佳照氏
三木市立教育センター
副所長兼指導主事
教育の情報化。これを実現するために、さまざまな支援活動を行っているのが「Eスクエア・アドバンス(注1)」です。授業における有効なIT活用方法についての研究成果を体系化。IT活用教育の不安や課題を解決する情報を学校等教育機関と企業に提供し、学校教育でのITの有効活用やITリテラシーの向上を推進しています。
兵庫県三木市立教育センターは、早くから授業へITを積極的に取り入れ、Eスクエア・アドバンスでも成果を発表してきました。「児童生徒による地域を音で紹介したホームページ作成やGPSを利用した地域調査などの活動を学校といっしょに行ってきました」と三木市立教育センター副所長兼指導主事の梶本佳照氏は語られます。
この三木市立教育センターの先進的な活動に共感し、富士通より「タブレットPCを活用した手書き電子教材の実践検証」プロジェクトへの参加をお願いしました。
パソコンを利用した授業は近年注目を集め、多くの学校で採用されています。しかし、そのほとんどは情報教育や総合的な学習の時間での利用が中心で、算数や国語などの教科教育での活用は限られていました。教科で利用している電子教材も、正解を選択肢から選ばせて理解度を確認するのが限界でした。
通常のパソコンでは、「手書きによる学習」はほとんど不可能と思われており、これがIT教育上の大きな課題となっていました。そこで着目したのがタブレットPCです。タブレットPCではペン入力を標準入力手段とし、ペンで直接操作したり、文字の筆記や図形を直接描画したりできます。このタブレットPCに高精度な手書き文字認識エンジンを搭載することで、通常の手書き文字はもちろん、漢字の書き順までもチェックできるようになります。
そこで、三木市立教育センターを中心に発足したプロジェクトチームでは、教科教育で活用できるタブレットPC用の手書き電子教材を開発し、三木市立緑が丘東小学校での実証実験を通してその有効性を検証することになりました。
プロジェクトチームは、教材開発や授業設計に関する指導助言を行う三木市立教育センター、教材の検討と実践授業を行う三木市立緑が丘東小学校、教育工学の専門的立場からアドバイスをする園田学園女子大学、実験環境を構築する株式会社内田洋行、そして実際の開発を担当する富士通研究所と富士通で構成されました。Eスクエア・アドバンスへ応募したプロジェクトが2003年7月に採用され、翌8月から本格的に活動が開始されました。
まず教材を開発する教科の選定。当初、国語、算数、社会が候補にあがっていましたが、最終的に国語と算数に絞られました。同時に富士通研究所側で、独自の手書き文字認識技術をベースに、文字認識機能に加えて正しい字形や筆順の判定機能を開発。この機能を個々の教材で簡単に利用できるようにするため、Macromedia(R) Flash(TM)で動作する手書き認識部品を開発しました。また、思考過程での自由な入力を可能にするための自由手書き部品も開発。これらの部品を組み合わせた複合部品やアニメーションなどから教材テンプレートを作成し、このテンプレートに問題をセットすることで教材コンテンツを完成できるようにしました。

手書き電子教材の構成
これらを元に、開発した教材は次のようなものです。
手書きで解答を入力し、瞬時に自動採点。採点の結果を点数で表示するとともに、誤りと判定されたマスにチェックマークが表示され、再計算を促します。

割り算の筆算教材では、枠内に入力された計算過程も含めて正誤判定を行い、誤答部分の枠にチェックが入ることで再計算を促します。自由手書き機能を利用して繰り上がりや繰り下がりも記入できます。

文字の形だけでなく、筆順も含めて正しい文字が入力できたかを判定。形の間違いと筆順の間違いを色別に示します。ヒントボタンにより、手本と並べて児童の筆跡を表示し、間違い箇所をアドバイスします。

ノートと同じように手書きにより自由に画面上に入力できます。教師自身が作成した学習用のプリントを背景図として取り込むことで、オリジナルの電子プリントを自由に作成可能。児童はプリント上に自由に書き込み、思考過程を支援することができます。


尾崎 さとみ先生
緑が丘東小学校教諭
授業は理科教室を利用し、プロジェクターーを接続した教師用タブレットPCと児童用のタブレットPC 31台をネットワークで接続。座席は4人が1組のグループ形式で、児童用タブレットPCは1人に1台を割り当てています。
「子供達は驚くほどスムーズに使いこなしました。先生の方が逆に教えられるほどです。とても喜んで学習していました」と、授業の模様を三木市立緑が丘東小学校教諭 尾崎さとみ先生は語ります。自由ノートでは、定規を使ってタブレット上に線を引く子もいて、関係者を驚かせました。大人では考えられない発想の柔軟さです。「子供にとっては、普通のノートといっしょなんですね」(尾崎先生)。

藤本 辰男先生
緑が丘東小学校教諭
自動採点によって先生の作業の省力化はもちろん、児童の待ち時間もなくなり、快適に学習できます。「従来、書き順はチェックできないものとあきらめていました。それが、タブレットPCでは、採点したうえに、間違えたら正解までアドバイスできます。これは衝撃的でした」と、三木市立緑が丘東小学校教諭 藤本辰男先生もタブレットPCによる学習の効果を語られます。
他の教科もタブレットPCで学びたいという声も児童からあがっています。「テンプレートを使えば、教材は簡単に作成できます。始めは1ページ目に30分ほどかかりましたが、2ページ目からは5分ほどでできるようになります」(藤本 先生)。このテンプレートの充実が、これからは求められるでしょう。
「手書きによる学習」という従来のIT教育の課題を解決した富士通のタブレットPC。その可能性は大きく広がろうとしています。
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