学校教育の場では、メールでのやり取りや、テキストや画像を中心としたコンテンツだけではなく、VOD(ビデオ・オン・デマンド)サーバを活用した動画による配信が、物事のイキイキとした動きを伝えたり、リアルタイムなコミュニケーションを実現するものとして注目されています。パソコンの処理速度の高速化や光ファイバー網などのインフラの整備も、VODサーバの活用を後押ししています。
松戸市では、「教育情報センター」を中心に、市内の公立小・中・高でのVODサーバ活用を推進しています。その取り組みの1つとして、市立中部小学校と松戸市立病院の院内学級「ひまらや学級」との交流授業を実施。画面を通じて、2つのクラスの児童たちが有意義な時間を作ることができました。システムの構築には、富士通のビデオコミュニケーション構築支援システム「NS@SCHOOL/VC」が導入されています。
松戸市は人口約47万人。江戸川をはさんで東京都と隣接する中規模都市で、2003年には市制60周年を迎えています。市民の声を行政に届け、市民にとってわかりやすい行政でありたいと、1969年に「すぐやる課」を開設したことでも知られています。
現在、同市では、松戸市総合計画の一環として、高度情報化に対応するために、「i・cityまつどアクションプラン」を策定し、行政のIT化を推進しています。教員現場では、すでに各校でのコンピュータ教室の配備や指定校での研究、教職員に対する情報リテラシー教育を進めていますが、2003年2月には、47の公立小、21の公立中、市立松戸高校に光ファイバー網を敷設。さらにIT技術を活用し、学校教育および市民の生涯学習を支援するための中核施設として、2003年9月に教育情報センターを新設しました。12月にはセンターサーバが稼働し、名実共に教育インフラの仕組みが整い、IT活用の推進に向けて、大きな一歩を歩み始めました。

安蒜 眞氏
教育情報センター指導主事
同市での取り組みの特色として、VODサーバの活用があげられます。映像や音声などを自由に活用できるVODサーバを導入することにより、メールのやり取りやインターネットでの調べ学習に留まらない、多彩な使い方が可能になります。この取り組みについて、教育情報センター 指導主事の安蒜 眞氏は次のように語られます。
「パソコンやインターネットが教育現場で積極的に活用されていますが、私は何のための活用なのか、その先に何があるのかを常に考えていきたいと思います。たとえば小学校では、パソコンを使って他県の学校との交流が行われていますが、パソコンを使うための交流ではないはずです。交流によって、相手の話を理解したり、自分たちの学校との違いを知ったり、自分たちの様子を伝え合うコミュニケーション能力や情報活用能力を高めることができる。パソコンはそのためのツールの1つだと思います。
また、私は単なる単発のイベントではなく、継続した利用を進めたいと思います。学校間の交流ならば、まずメールでお互いのことを知り、その中で出てきた疑問や質問をインターネットなどを使って調べ、さらにホームページなどで発信する。そこまで交流が深まれば、次は実際に見たい、会いたいという気持ちも高まってきます。そこでVODサーバを利用した交流授業など、リアルタイムでのコミュニケーションを実現する。実際に見聞きした思いが、さらなる交流につながっていくことでしょう。そのためにVODサーバが果たす役割は大きいと思います。
さらにVODサーバは、画質がきれいで、滑らかな動きを見ることができます。TV会議のような1対1の利用に留まらず、サイトにアクセスすれば多元中継もできるので、今後、利用の可能性が広がると思います」

ひまらや学級(右上)
交流授業の様子 中部小学校(左下)
教育情報センターのセンターサーバを介した初めての交流授業が、2004年2月24日、市立中部小学校4年2組と松戸市立病院の院内学級「ひまらや学級」の間で行われました。ひまらや学級は、長期入院により学校に通う機会が作れない子供たちのために病棟の一室を利用して開かれており、2004年2月現在、2年生から6年生までの6人が学んでいます。
授業を通じて、ひまらや学級の存在を知った中部小の児童たちが、メールでのやり取りを踏まえ、この日の授業が開かれました。5時間目の約1時間を使った交流は、中部小の児童8名からなる実行委員が、お互いの自己紹介や、ビデオによる学校紹介、クイズやゲーム等盛りだくさんのプログラムを企画。進行役も児童自らが行いました。
自己紹介では、サッカーのリフティングや空手の動きがスムーズに映し出され、ひまらや学級からは「かっこいい!」と歓声が上がりました。また、「ハーモニカが得意です」と“大きな古時計”を奏でるひまらや学級の児童に、中部小の児童たちが自然発生的に歌声を合わせる場面もあり、児童たちがVODサーバによる映像を気負いなく受け止めている様子がうかがわれました。
今回の交流授業では、ビデオコミュニケーション構築支援システム「NS@SCHOOL/VC」を活用。センターサーバからインターネットで、中部小とひまらや学級および教育情報センターをつなぎ、各拠点でデジタルビデオカメラで撮影した映像をエンコーダーを介してサーバに送信することで、拠点間のリアルタイム配信を実現しました。画面は撮影する拠点数に合わせて分割され、児童たちは相手の姿も自分たちの姿も確認しながら、交流を行いました。

交流授業実施時のシステム構成図

平尾 文子先生
ひまらや学級担任
授業を終えて、ひまらや学級担任の平尾文子先生は次のように語られます。
「一般的な学校や教室の姿をなかなか思い描きにくい子供たちが、中部小の様子を実に楽しんでいました。“もう一度やりたい!”という声も上がっています。また、相手の様子を見るだけではなく、こちらからも自己紹介をしたり、クラスの様子を紹介したことは、日頃、相手に何かを伝えるという機会が少ない子供たちにとって、非常に貴重な経験になりました。
このようなシステムは、ひまらや学級と病室をつないだり、他の院内学級と交流するなど、まだまだたくさんの可能性を持っていると思います。今回を足がかりに少しずつ実現していきたいですね」

菊池 恵津子先生
中部小学校
4年2組担任
中部小4年2組担任の菊池恵津子先生は次のように語られます。
「画面を見ながら、お互いに声を掛け合うなど、リアルタイムな反応が返ってくるのは、子供たちにとっても大きな発見だったようです。プログラムを構成する段階から、どうすれば自分たちの思いが伝えられるかを熱心に考えることができ、有意義な授業になりました」
また、中部小で情報教育を担当する野崎 隆先生は次のように語られます。
「たとえば実験などの機会が少ないひまらや学級に、今回のしくみを活用して理科の実験を配信することもできるでしょう。交流から授業へ、わかる授業を創り上げていくための新たな展開も考えていきたいと思います」
最後に、今後の取り組みやこれからの可能性について、安蒜氏は次のように締めくくってくださいました。

野崎 隆先生
中部小学校
情報教育研究部主任
「簡易的なテレビ会議システムと違い、高画質なVODサーバを使い、音声も合わせて配信する場は、授業だけとは限りません。学校行事や各校選手によるスポーツ大会、合唱コンクールなどをリアルタイムに、あるいはビデオ録画して配信することもできるでしょうし、地域行事などにも活用できると思います。現在は市内の教育拠点のネットワークに留まっていますが、ゆくゆくは家庭と結ぶことも考えられるでしょう。いわば放送局のような役割をVODサーバには期待していますし、その実現に取り組んでいきたいと思います。実践しながら、その中で新たな可能性を知り、さらに展開していくことになるでしょう。まだまだいろいろな発見ができそうですよ」