立正大学様は1580年に設立された日蓮宗の教育機関を起源とする、長い伝統を誇る大学です。近代教育機関として1872年(明治5年)に創立され、「1924年(大正13年)に大学令による大学(旧制大学)として私立大学では17番目に認可された大学です。現在は大学院7研究科と8学部・14学科を持つ総合大学として発展してきています。
同学は心理学部、経営学部、経済学部、文学部の1、3、4年生と仏教学部の3、4年生が在籍する大崎キャンパスと、地球環境科学部、社会福祉学部、法学部、文学部の2年生と仏教学部の1、2年生が在籍する熊谷キャンパスの2つから成り、2つのキャ ンパスは100Mbpsの広域イーサネットで結ばれています。
2004年4月には、大崎キャンパスに新たなキャンパス・ネットワークの拠点となる総合学術情報センターがオープンしました。図書館と情報センターが融合した情報メディアセンターをはじめ、軽食をとりながら専用端末でインターネットの利用ができるネットカフェなど、学生の利便性を高め、快適なIT利用環境の整備に取りくんでいます。
立正大学 大崎キャンパス
総合学術情報センター
学生のキャリアサポートに力を入れていることも同学の特長です。就職、資格取得、語学学習など、学生の教育へのニーズは多様化しており、学生各自のキャリアプラン実現に向けて、大崎、熊谷の各キャンパスに設置されたキャリアサポートセンターでは、学生の就職意欲、適性、能力などを高め、学生のキャリアプランの設計と実現の手助けする各種イベントや、資格検定を実施しています。
また、キャリアプラン実現に向けて、他学部の講義受講を希望する学生も少なくありません。
こうしたニーズに応えるため同学では、専門科目、教養科目、資格科目、大学院科目等において学部を超えて受講し、単位を取得できる「相互履修制度」の実現を予定しています。
しかし、大崎と熊谷の離れた二つのキャンパスを持つ同学では、「相互履修制度」の実現に向けて、キャンパス間の距離が問題となりました。
そこで、キャンパス間の距離を克服するためには高精細画像、高品質な音声によるリアルタイム遠隔教育と「デジタルコンテンツアーカイブ」によって、「どちらのキャンパスからでも」「いつでも」学習できる「ユビキタス教育環境」の整備が求められたのです。
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| リアルタイム映像伝送装置 IP-8000とSONY製旋回型3CCDカラービデオカメラBRC-300 |
同学は遠隔教育システムを導入するに当たって、高精細・高品質で遅延の少ない画像と音声を相互にやりとりできることを重視しました。ネットワークを介して送られてくる画像と音声では、臨場感を保つことが難しいからです。
また、講義する先生の負担が大きくならないような配慮も必要でした。これまでと同じスタイルのまま授業をするためには、板書も鮮明に映し出せる映像品質でなければなりません。
そこで採用されたのが、富士通のリアルタイム映像伝送装置「Broad sightIP-8000」です。同装置はデジタルビデオカメラ(DV)の映像と音声をそのまま転送するDV over IP方式という伝送技術を使っています。現在普及しているテレビ会議システムなどで使用される伝送方式H.323に比べ、約4倍の解像度を持っており、非常に高精細な画像と高品質な音声を伝送することができます。
さらに、デジタル化した講義の画像と音声を蓄積すれば、非常に高品質なeラーニングコンテンツとして利用することができ、いつでも、どこでも学習できる、「ユビキタス教育環境」の実現には最適の方式です。

遠隔教育システムを導入した
大崎キャンパスの大教室
「IP-8000」は、DVインターフェースを持ち、カメラから出力されたデジタル映像データ、マイクの音声を
データを圧縮せずにそのままIP化し、ネットワークに送り出します。
無圧縮の映像データをハードウェアで処理するので、鮮明な画像をほとんど遅延なしに、双方向に伝送することができます。
大崎、熊谷の両キャンパスに設置されている、300人を収容する大教室、200人を収容する中教室では
150インチの大画面スクリーンに離れた場所にいる先生の姿を、自然な動きでいきいきと映し
出すことができます。
また、両キャンパスに設置された20人収容のパソコン教室には、コラボレーションシステムが導入されています。

熊谷キャンパス 遠隔PC教室
学生一人ひとりの机にマイクが備えられおり、質問したい学生がマイクボタンを押すと、先生にはどの学生が質問をしようとボタンを押したのかが分かります。先生が許可するとマイクがオンになり、学生が質問できる仕組みです。二つのキャンパス間の伝送の遅延はほとんどないため、違和感を生じることなく会話をすることができ、臨場感あふれる双方向コミュニケーションが実現します。
櫻井 広幸氏
心理学部臨床心理学科 専任講師
同学心理学部臨床心理学科の櫻井広幸専任講師は、「遠隔教育システムには、バーチャルリアリティー(VR)の技術が入って来ることは当然のことだと考えています」と語ります。
遠隔教育システムは画像と音声で構成していますが、これに触覚や体性感覚も加わるシステムが利用されるようになるというのです。ヘッドマウント・ディスプレイやサイバーグローブを使うことによって(例えば介護技能の習得など)VRを取り入れたシステムへと進化させることができます。
VRを利用すれば、自分をアバター(化身)として仮想空間に登場させ、先生と自分だけの空間で学習することもできます。こうした環境の提供は不登校などの問題の解決に役立つ可能性もあります。さらに、櫻井講師はVRの利用により人間の能力を拡大できる可能性もあると感じています。例えば、母国語の異なる人同士でも、同時通訳の機能を持たせた仮想空間では言語の違いを意識することなくスムーズなコミュニケーションが実現できます。
また、遠隔教育システムを利用したGIS(地理情報システム)にVRを取り入れる実験も進める予定です。二つのスクリーンに地形を映し出し、ヘッドマウント・ディスプレイを通して立体画像を観察し、環境修復などの検討をおこないます。遠隔教育システムにVRを取り入れたシステムは、先進的な研究に使われるほか、地球環境科学部が行っている市民のためのセミナーに利用することも考えられています。

山下 倫範 氏
地球環境科学部教授
遠隔教育システムWGリーダー
現在、遠隔システムが導入されている教室は、両キャンパスの300人収容の大教室、200人収容の中教室、20人収容のパソコン教室の計6教室ですが、遠隔教育システムを導入するプロジェクトのリーダーを務めている、同学情報メディアセンター副センター長で地球環境科学部環境システム学科の山下倫範教授は、今後の計画について「遠隔教育システムを利用できる教室の数を増やし、また、大崎-熊谷間だけではなく、他大学とも相互接続して講義の活性化を図りたい」と語ります。
同学は他の大学と相互接続することも計画しています。今回の導入したシステムは、現在主流のH.323のプロトコルも利用できますが、表現力に優れ、臨場感あふれるDV方式で他の大学と接続することができれば、さまざまなコラボレーションが実現できます。
また同学では、平成18年度からオンデマンド授業流通フォーラムへ参加しています。オンデマンド授業流通フォーラムは総務省、文部科学省、独立行政法人メディア教育開発センター後援の下に、2005年4月に設立されました。海外の2校を含む63の学校と海外の1社を含む52の企業が参加しています。
オンデマンド授業流通フォーラムに参加する一方で、同学はeラーニングの在り方を本格的に検討する計画です。eラーニングにふさわしい講義のやり方について教員がノウハウの獲得に取り組む一方、eラーニングのソフトについても検討していきます。
蓄積したコンテンツは、学生の予習/復習教材としての利用や他大学との単位交換などに利用することが計画されています。将来は社会人教育(生涯学習)での利用へと発展させることも考えられています。遠隔教育システムによって、場所や時間に制約されない教育が実現されつつあるのです。

立正大学 遠隔教育システム ネットワーク概念図