
広島国際大学 呉キャンパス
広島国際大学様(広島県黒瀬町)は、経営母体である学校法人大阪工大摂南大学としては広島地区初の大学として、1998年に開学しました。医療福祉学部と保健医療学部からスタートし、2001年に人間環境学部、2002年には社会環境科学部を増設、さらに2003年には保健医療学部の看護学科を学部として独立させました。現在は5学部11学科に加え、大学院看護学研究科、総合人間科学研究科を設置する大学となっており、医療福祉や社会環境など人々の生活に欠かせない社会基盤をテーマとした教育研究活動を推進しています。
同大学の本拠地は黒瀬キャンパスですが、2002年の社会環境科学部の増設と併せて新たに呉キャンパスを開設。そして分散するキャンパス間の連携を図るために、2003年4月に遠隔講義・映像蓄積配信システムが導入されました。
2002年4月に新設した呉キャンパスには現在、情報通信学科、建築創造学科、住環境デザイン学科の3学科からなる社会環境科学部が設置されています。しかし、来年には黒瀬キャンパスから看護学部が移転し、さらに2004年4月に増設予定の薬学部も呉キャンパスに設置されることになっており、数年後には呉キャンパスも黒瀬キャンパスと同規模になる見込みです。この呉キャンパス開設と同時に検討を開始したのが遠隔講義システムの導入です。
遠隔講義システム導入にあたっての重点課題は、講義映像を再利用できること、高画質の映像を配信できること、そして既存システムとの親和性が高いことの3点でした。数社の提案を比較検討した結果、これらの課題をクリアしつつ、遠隔講義からeラーニングまでをシステム化した、富士通のトータルソリューションが採用されました。
富士通が提案した遠隔講義・映像蓄積配信システムでは、「遠隔講義」、「映像コンテンツの蓄積」、「公開」、「映像資産の再利用」というプロセスを想定。遠隔講義(講義映像のライブ配信)だけでなく、蓄積した映像コンテンツを学内ネットまたはインターネット経由でいつでも見られるのが大きな特長です。また、システム全体の自動化を実現しており、教員は遠隔講義に対応した教室で講義を行うだけで、講義内容は自動的に映像コンテンツとして配信用のサーバに蓄積されます。このように教員だけで実施運営できるシステムだったことも、富士通の提案が採用された理由の1つでした。
今回の遠隔講義・映像蓄積配信システム導入の目的について尋ねると、社会環境科学部の竹内学部長は、「学園のスケールメリットを生かすことと、学生の受講方法の多様化を図ること」を挙げられました。

遠隔講義の実施風景
学校法人大阪工大摂南大学は、大阪工業大学、摂南大学、広島国際大学の3大学に大阪工業大学短期大学部と大阪工業大学高等学校を加えた5学校を設置する一大総合学園です。3大学を合わせると13学部33学科と西日本屈指のスケールとなることから、学園では大学間の連携強化にも積極的に取り組んでいます。「学園組織の特長を学生教育に生かすには、物理的な制約を極力排除して、学生が多彩な教育を受けられる環境を整えることが大事」と竹内学部長が話されるように、広島国際大学の学生が姉妹大学の講義を受けられるようにすることを、遠隔講義システムの第1の導入目的としました。
遠隔講義を行うことのできる施設は、広島国際大学の呉キャンパスに2教室および、黒瀬キャンパスと大阪工業大学・枚方キャンパスに各1教室、計4教室あります。これらの施設を利用して、これまでに情報通信学科の7講義と、社会環境科学概論の特別講義として8講義を遠隔講義として実施しました。社会環境科学概論の特別講義では、大阪工業大学情報科学部のある大阪府枚方キャンパスで行われた講義の映像を広島国際大学の黒瀬と呉の両キャンパスに配信。学生は広島にいながら、大阪で行われる講義をリアルタイムで受講しました。
10月3日からは後期の通常講義でも遠隔による授業をスタート。呉キャンパスの教室には2つのプロジェクターが設置され、左側に黒瀬キャンパスで授業を行っている教員の映像、右側に講義用の資料を写し出して、人間環境学部の「コミュニケーション論」の遠隔講義を実施しています。
遠隔講義の映像はすべて配信用のサーバに蓄積されており、アクセス権があればいつでもどこからでもインターネットを介して視聴できるようになっています。遠隔講義を実施している大学は増えつつありますが、講義映像を蓄積して再利用している大学はそれほど多くはありません。広島国際大学が導入したシステムの最も大きな特長は、この映像蓄積配信機能にあります。竹内学部長が掲げた2つ目の目的である「受講方法の多様化」を実現するのも、映像蓄積配信機能の役割となります。竹内学部長は、「映像蓄積配信機能を持たせることによって、蓄積された講義映像を学生がいつでも見ることができるようにしました。蓄積された講義映像を活用した自習や補習などを可能とすることで、学習への取り組み方の多様化を目指したわけです」と理由を説明されます。
映像蓄積配信機能の活用によって特に成果を上げているのが、リメディアル教育です。学生の基礎学力低下が社会問題化する中、多くの大学で授業についていけるだけの学力や知識を補完する「リメディアル教育」が数多く実施されています。同大学も例外ではありません。遠隔講義・映像蓄積配信システムと合わせて導入したeラーニングシステム「Internet Navigware」を映像蓄積配信機能と組み合わせて利用し、eラーニングによるリメディアル教育を実現。本システムにより学生の主体性を重視し、実力に応じた学習ができるのと同時に、教員も効率的な指導が可能になります。

遠隔講義・映像蓄積配信システム構成図
「学生はマルチメディア化された受講ツールを実感することができ、珍しさもあって通常の講義に比べても敏感に興味を示しています。一方、教員にとってはFD(ファカルティ・ディベロップメント=教員の授業内容や教育方法などの改善・向上を目的とした取組み)の一環として、講義手法を見直すちょうどよい機会になっています」と竹内学部長はシステムの導入による効果を説明されます。また、「期待していた以上に臨場感あふれる講義が実現できています」とシステムそのもののクオリティも評価されています。さらに、黒瀬と呉の2つのキャンパスを掛け持ちしている教員にとっては、キャンパス間を移動する時間を遠隔講義によって節約できるのも大きな効果です。
その一方で、竹内学部長は「問題点は教員が自分の授業の内容や進め方、あるいは教材を見直すことになるため、初期段階は非常に手間と時間がかかることです。教材の作成方法も含め、離れた場所にいる学生に対してどのように反応を得るのか、どのように教えていくのかなどの工夫が必要です。そのため現在最も注力しているのは教材作成の支援など、学内体制の整備です」と課題も指摘されました。それと同時に、「一度スタイルを確立すればノウハウが蓄積され使用する教員も増えるので、ポテンシャルは高まっていくでしょう」と期待されています。
今回のシステムは同大学の中でも社会環境科学部が先進的に利用しています。稼働してまだ半年ということもあり、限定的な活用に留まっているものの、「本学部が率先して利用していけば、サテライトも自然と増えていくでしょう」と他学部への展開にも竹内学部長は期待されています。社会環境科学部では他学部他学科の受講を年間10単位まで認めており、多くの講義の中から学生が選択して受講できるように、遠隔講義に対応する科目数を増やすなどの体制を整えることも今後の目標として掲げています。また、同学部は理工系のため実験実習を伴う授業も多いことから、「遠隔講義あるいは蓄積配信型の講義に適しているか否かを、しっかり見極めていきたい」と、将来的な体制については慎重に検討していく考えです。さらに、学生の利便性をより向上させるために、遠隔講義とeラーニングを組み合わせて自宅のPCからでも受講できるような仕組みの検討も始められています。
大学再編成が全国的に叫ばれる中、学生重視のポリシーを掲げ、そのために最適なシステムを導入・活用している広島国際大学の取り組みは、今後もますます広がりを見せていくことでしょう。