
青森大学キャンパス
青森大学様は、青森県の県庁所在地・青森市初の4年制大学として、1968年(昭和43年)経営学部・経営学科からスタートしました。実践的な教育に主眼を置き、時代と地域のニーズに応えるべく、学部や大学院を開設。現在は経営学部、社会学部、工学部の3学部7学科に加え、日本初の環境系大学院として、環境科学研究科の2専攻を開設しています。来春には薬学部を新設する予定です。
1997年に情報・環境・地域活性化をキーワードに『情報技術(IT)を駆使して、ビジネスを創造する』を育成目標に掲げ新設された経営学部産業デザイン学科(2004年4月よりビジネス情報学科に改名予定)では、通常の授業にeラーニング技術を取り入れた実験的なプロジェクトを立ち上げ、2003年春からは実際の授業での利用を開始されました。

塩見 法弘氏
経営学部
産業デザイン学科 教授
e-ラーニング授業開講の中心となったのは、経営学部産業デザイン学科長の塩見法弘教授。経営コンサルタントとしても数々の実績を持つ塩見教授は、「新学科開設以来、社会人に比べ素朴でまじめだが、今ひとつ意欲に欠けがちな学生に接し、担当の『ベンチャービジネス論』などで現役経営者の特別講義をしたり、授業の感想や課題レポートをeメールで提出させるなど、さまざまな工夫をしてきました。さらなる理解度や出席率向上のためには何をすればよいかと模索していた折、社会人向けの遠隔授業などにe-ラーニングの開発が進んでいることを知りました。そこで日常の授業の中でもe-ラーニングシステムを活用し、学生とのやりとりの中に、先進的な技術を導入するべきではと、学内に呼びかけました」と話されます。
そこで、2002年秋にe-ラーニングを活用した授業に向けた実験的なプロジェクトを立ち上げられました。参画したのは、企業内の効果的なIT活用を研究テーマとする福永栄一講師と、プログラミングを研究テーマとする石川祥三講師。2003年度からの塩見教授の「経営情報論」での授業開始を目指し、活動を開始されました。
塩見教授は、「理解度と出席率の向上には、講義がわかりやすく面白いことが必要で、さらに理解度の向上には、講義への集中力が求められます。」と、この取り組みのポイントを説明されます。
授業では80分の時間内を中だるみしないように、さまざまな工夫がなされています。授業は、ポイントの解説、小テスト、アンケートの3つのフェーズから成り立っています。
ポイントの解説では、簡潔に理解できるよう1画面につき5~6項目に絞り、事例や具体例を交えて解説しています。また、授業の進行に従って自分で画面を表示させるため、順序立てて理解することができます。
小テストでは、ポイント項目を応用した穴埋め問題を授業の最初と中盤の2回行います。最初のテストでは授業に意識を集中させ、中盤のテストでは、中だるみを防ぐ効果があります。また、授業内容をそのまま応用したテストなので、学生が取り組みやすく、その場で採点できすぐに結果がわかるので、クイズのような楽しさが期待できます。これらのテストはポイント項目の中から穴埋め部分を作ればよいので準備しやすく、講師の負担になりません。
アンケートは授業終了時に行い即座に集計されるので、結果について学生から積極的な意見が寄せられると共に学生の理解度の把握に役立っています。また、このテストやアンケートの実施が教授と学生が口頭で質問や感想を聞く場にもなっており、双方向なコミュニケーションが実現したり、講師にとっても、コンテンツ作りの参考となる意見が得られる場となっています。

授業はこれらのデジタルコンテンツ化された教材を、マウスをクリックする動作を通じて、学生自身が理解しながら進んでいきます。学生が能動的に授業に参加することにより、学習意欲の喚起を図っています。
指導者の端末では各学生の回答結果や内容まで把握できるので、授業通りに進んでいるのか、間違った画面を見ていないかなどをチェックすることができます。また、サーバにバックナンバーを蓄積しているので、学生は授業以外の時でもこれまでの授業内容のポイントを見直すことができます。
実験中の授業は、塩見教授が教壇に立ち、石川講師と福永講師はティーチングアシスタントとして学生間を巡回し、操作をサポートしています。

石川 祥三氏
経営学部
産業デザイン学科
講師
これらのコンテンツ作成や授業の運営は富士通のe-ラーニングシステム『Internet Navigware』を活用して行われています。 『Internet Navigware』を選択された理由について石川講師は、次の3点を挙げられました。
これらのポイントに加え、デモ体験で教材の登録やデータ管理などの使いやすさにも納得され採用に至り、初の試みとなるeラーニング授業に向けて、先生方と富士通が共にアイデアを出し合いながら方向性を見出していきました。
2003年4月の開講から10回目までの講義内容についてアンケート結果を分析すると、約半数の学生が「ほぼ理解した」と答えています。また、e-ラーニング授業については99%の学生が賛成しており、他講義への導入の期待も高まっています。「経営情報論」は水曜日の1時限目の授業で、これまでは欠席者も目立ちましたが、今期の欠席者は少なく、学生からも好評です。
塩見教授は「学生側に主体的に学ぼうとする意欲が感じられるようになり、テストなどで双方向にやり取りできるのも、メリハリのある授業に役立っています」と評価されます。

福永 栄一氏
経営学部
産業デザイン学科
講師
学生間の評判や、他科目の先生方の見学会などにより、学内での認識も高まってきています。その中で各授業ごとのコンテンツ作成は、教師にとって大きな課題です。福永講師は「先生方がこれまで積み上げてきた教授法や知識を、ポイントやテストにして80分間のストーリーに構成する必要があり、私たちもまだまだ手探りの状況です。できるだけ多くを盛り込んだ内容にしたいと思いますが、あまり項目数が増えると上滑りしていく部分も多く、理解度は上がりません。学生もわかりやすくまとまったコンテンツには、積極的に興味を示してきますから、気が抜けません」と語られます。

木村 雅大氏
経営学部
産業デザイン学科
講師
後期からは、他の科目でもe-ラーニング授業が導入され、また来年からは全学部での対応も検討されています。「経営情報論」での取り組みはその一例であり、それぞれの科目ごとのよりよい施策を、さらに見出していく作業が続きます。
この春からプロジェクトに参画している木村雅大講師は、「これからは大学教育にもさまざまな変革が求められる時代です。現在の学生だけでなく、多忙な社会人や遠隔教育などの可能性も持ち、将来は生涯学習まで発展できるe-ラーニング授業はその意味でもとても新鮮で意義あるものだと思います」と期待されています。
塩見教授は「パイオニアはつらい」と苦笑しながらも、「新しい取り組みとして、大学全体で前向きに受け止めていただいているので、できるだけ早く全学に広げたいと思います。ドッグイヤーと言われる今、先手必勝で取り組むことがこれからの大学教育にも不可欠でしょう。地道な取り組みの中にも、青森大学としての独自性を明確にしていきたいと思います」と締めくくってくださいました。