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対談:日経BP社 Editor(元日経情報ストラテジー編集長)
北川賢一氏が訊く!富士通のSaaS戦略

プライベートSaaSや業種別サービスを武器にお客様のニーズに合わせた日本型SaaS事業を推進

対談:「富士通が展開する日本型SaaSサービス」日経BP社 Editor(元日経情報ストラテジー編集長) 北川賢一氏、富士通株式会社 ビジネスイノベーション本部 本部長代理 阪井洋之

激しく変化するビジネスに対応できるIT活用に向けて、ハードウェアやソフトウェアなどの資産を保有することなく、短期間で導入できる「SaaS」(Software as a Service)への関心が高まっています。こうした状況のなか富士通は、お客様が安心して利用できる信頼性の高いSaaSサービスを体系化して提供するとともに、以前から推進してきたSaaS事業を大幅に強化しています。

既に数多くのIT企業がSaaS事業に参入していますが、富士通のSaaSサービスの特徴、他社に比べた強みはどこにあるのでしょうか。SaaS市場の最新動向などと合わせて、日経BP社 Editor(元日経情報ストラテジー編集長) 北川賢一氏と、富士通ビジネスイノベーション本部 本部長代理の阪井洋之が語り合いました。

低コストでスピーディーに信頼性の高いSaaSサービスを提供

北川:SaaSに関するいくつかの調査を見ると、大企業においては米国で7~8割、日本でも5割近くが、何らかのサービスを利用しているか、利用を検討しているという結果が出ています。こうした結果から、SaaSの普及のテンポは思っていたよりも速いという印象を受けました。

阪井:富士通では、既に1万3000社を超えるお客様に、グループウエアやメールなどのコミュニケーション分野やCRM(Customer Relationship Management) ,EDI(電子データ変換)などの分野を中心として、SaaSアプリケーションをご利用いただいています。特徴的なのは、情報システム部門というよりは、お客様の業務の現場からの利用ニーズが非常に高いことです。その意味では基幹業務というよりも、現場の方々がすぐに使いたいというアプリケーションに対して、SaaSの需要がより高まってきているという感触を得ています。

北川:富士通のSaaSサービスに対する基本姿勢をお聞かせください。

阪井:当社がこれまでに培ってきたデータセンターの運用技術や業務システム構築のノウハウなどを武器に、低コストでスピーディーに信頼性の高いSaaSサービスをお客様に提供するというのが基本姿勢です。お客様にとって最適なサービスを提供するために富士通がSI事業やパッケージ事業で培った業務・業種知識を生かしたSaaSのラインナップの拡充を進めています。

北川:具体的にどのような強化・拡充を図っているのですか。

阪井:自治体や医療などの業種別分野とCRMやセキュリティなどの共通業務分野において、15種類のSaaSアプリケーションを2009年度上期中に順次提供していきます。また、自社開発製品のみならず、パートナー様の優れたサービスの取り扱いも含め、豊富なサービスからお客様に最も合うサービスを提案して参ります。また、汎用のSaaSアプリケーションでは適用が難しい業務には、私どものSaaSプラットフォーム上でお客様固有のSaaSアプリケーションをご利用いただけるプライベートSaaSを組み合せてサポートさせていただきます。

プライベートSaaSで企業の個別ニーズに対応

北川:プライベートSaaSは、富士通ならではのユニークな取り組みですね。もう少し詳しく聞かせてください。

富士通株式会社 ビジネスイノベーション本部 本部長代理 阪井洋之阪井:プライベートSaaSは、汎用のSaaSアプリケーションでは適用が難しいお客様固有の業務をグループ会社や取引先、代理店、海外拠点など、使用者を限定して利用する環境を効率的に構築できるようにしたものです。既に具体的な商談も数多く出てきており、非常にニーズが高い分野と認識しています。SaaSアプリケーションを構築する際に必要となる「マルチテナント」や「セルフカスタマイズ」などを容易に実現できる機能を共通のアプリケーション部品として用意しています。これらを、SOA(サービス指向アーキテクチャ)技術でインプリメントすることにより、他のSaaSサービスと組み合わせて短納期でシステムを構築できます。

これによってお客様には、インフラ構築の負荷軽減、アプリケーション開発・運用コストの低減、リソースの購入ではなくサービスの利用といった、SaaSのメリットを享受していただくことができます。

日経BP社 Editor(元日経情報ストラテジー編集長) 北川賢一 氏北川:なるほど。SaaSアプリケーションは融通が利かないというイメージがありますが、プライベートSaaSは企業の個別ニーズに合わせてくれるというわけですね。これは、日本企業が好むSaaSサービスかもしれませんね。開発・運用の体制は万全ですか。

阪井: SaaSアプリケーションの開発・構築ノウハウを持つ富士通グループのSE要員を結集し、2008年9月に専門組織を設置しました。

また、当社のサービスプラットフォームを活用したSaaS型のシステム構築手法のノウハウを盛り込んだ開発ガイドラインを活用して、富士通グループで約1000人のSEの育成を行いました。さらに、アジャイルな(素早い)開発のためのツールの準備も進めています。社内システムでの実践も積んでいますので、この経験・ノウハウをお客様に提供して参りたいと思います。

ITの新規需要の開拓につながる業種別SaaSサービスの展開

北川:ここまでの話の中で「スピーディー」、そして「アジャイル」という言葉が出てきました。SaaSサービスにおいて、スピードは非常に重要な価値と言えそうですね。

阪井:その通りです。とりわけ導入が容易なのは、SaaSの最大の価値だと思います。また、従来のシステム構築と違ってSaaSの場合は、小さな範囲でテスト導入を行い、不都合があれば素早く手直ししたり、場合によっては導入を見合わせたりすることも、迅速かつ多額の費用をかけずに判断することができます。さらに、企業や事業のスタートアップ時には、スピードを生かせるSaaSの利用がうってつけでしょう。

北川:そうしたSaaSサービスを幅広く展開していくには、きめ細かい業務・業種別のサービスの品揃えが必要になりますね。富士通は、その品揃えにも力を注ぐということですか。

阪井:はい。特に業種に特化した分野は先にもお話ししたように、当社がこれまでSI事業やパッケージ事業で培ってきたノウハウを生かせる最大のアドバンテージだと認識しています。そしてぜひ強調しておきたいのは、業種に特化した分野の裾野を広げていくことによって、これまでわが社がリーチできていなかったところへもIT化の提案を行っていけるようになるということです。つまり、業種別SaaSサービスの展開は、ITの新規需要の開拓につながるのです。

北川:なるほど。SaaS事業というと、SI事業やパッケージ事業をシフトさせるようなイメージもありますが、そうではなくて、ITの新規需要を一段と広げることになるというわけですね。それは、ぜひとも期待したいところです。

阪井:お客様の現場では、IT化すれば生産性や効率を上げることができる業務がまだまだたくさんあります。そうした現場にリーチしていくのが、SaaSサービスの使命だとも考えています。

北川:これまでのお話をお聞きして、プライベートSaaSや業種別SaaSサービスは、富士通ならではのまさしく日本型SaaSだと強く感じました。SaaSについては、日本は米国に比べて後れをとっているのが現状ですが、これからは富士通が先頭に立って、日本のSaaSを盛り立てていただくことを期待しています。

阪井:ありがとうございます。その意味では、当社のSaaS事業には壮大な目標があります。例えば、業種別SaaSとしての農業法人向け経営管理サービスは、法改正に伴う農業法人の経営管理業務を手始めとして、将来的には生産者から小売業者、物流業者、一般消費者までが同一サービスを手軽に利用できるようにすることを目指しています。これによって、生産者情報や物流時のトラッキング情報、販売・消費動向など、さまざまな情報をリアルタイムに共有することが可能になります。

このように、わが社はSaaSサービスの提供によって、個人と企業、企業間をまたがる業務連携、蓄積されたデータの活用による新たな付加価値創出といった、SaaS特有のメリットを生かせるようにしていきたいと考えています。こうした取り組みを広げていくことで、ひいては社会インフラの発展に貢献できると確信しています。ぜひ、ご期待ください。

日経BP社 Editor(元日経情報ストラテジー編集長) 北川賢一氏

(プロフィール)
新聞記者時代から約40年にわたりIT分野を担当。日経BP社では日経情報ストラテジー編集長、コンピュータ・ネットワーク局主任編集委員などを歴任。IT企業の経営・技術・営業戦略に精通している。


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