仙台ターミナルビル株式会社様
企業インフラにとって数多くの問題を再認識することになった2011年3月の東日本大震災。仙台ターミナルビル株式会社においても、東日本大震災発生後に停電の影響で自社のネットワークが途絶えてしまった経験から、情報共有基盤の冗長化を実施。非常時において安否確認から重要連絡までを確実に行えるインフラを実現するために、富士通のデータセンター活用とともに「Microsoft® Exchange Server 2010」と「Windows Server® 2008 R2 Hyper- V」を利用することで、より確かな情報インフラを実現しています。
[ 2012年6月4日掲載 ]
業種: | サービス業、流通 |
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ハードウェア: | PRIMERGY |
ソフトウェア: | Windows Server® 2008 R2 Datacenter Hyper- V™ 、Microsoft® Exchange Server 2010、Microsoft® SharePoint® Server 2010、Microsoft® System Center Configration Manager 2007 R3 |
1 | 災害発生時にも、メールなどを使い確実に連絡がとれる環境を | 自社内に設置したサーバがダウンした場合には富士通のデータセンター内に置いたサーバに切り替えてメール環境を堅持 | |
2 | コストを抑えた冗長化を行いたい | Windows Server 2008以降の標準機能であるHyper-Vを用いて待機系サーバを仮想化することでコストセーブ | |
3 | 安定稼働を実現する実績と品質を兼ね備えたサーバの選択 | 高信頼性を追求したPRIMERGYを採用 |
阿部 靖彦氏
仙台ターミナルビル株式会社
総合企画本部 経営管理部
企画課 課長代理
JRグループの一員として宮城、福島、山形の3県で「ホテルメトロポリタン」とショッピングセンター「エスパル」を展開している仙台ターミナルビル株式会社(以下、仙台ターミナルビル)では、日常業務に欠かせないツールとしてeメールを活用しているとして、仙台ターミナルビル株式会社 総合企画本部 経営管理部 企画課 課長代理 阿部靖彦氏は、次のように説明します。
「ホテルメトロポリタンでは、客室や宴会場などを除き、建物内に数か所残ったわずかなスペースをオフィスとして利用しています。従業員は皆忙しくしていますので、オフィスに電話をかけても、そこにいるかどうか分かりません。そのため、従業員間のコミュニケーション手段として、ごく自然にメールが重用されてきました」
しかし、従来のeメール環境では、グループウェアの機能として用意されたWebメールを利用していたため、「使いづらいという意見も社内にあった」と阿部氏は言います。そしてより使いやすい情報共有環境を求めた同社では、2011年にグループウェアの更改時期を迎えた際に、新たに導入するシステムの検討を行い、Microsoft Exchange ServerとMicrosoft SharePoint Serverの採用を決めています。
「決断に至った理由としては、JR本社がExchange ServerとMicrosoft Outlookを利用していたことも大きなポイントとなっています。出向者も多いため、使い勝手が統一されていた方が利便性は高いと判断しました。それに、Outlookであれば、ほとんどの従業員がプライベートでも使用したことがあるでしょう。『使いづらい』という不満を解消するには一番の選択肢であったと思います」(阿部氏)
しかし、情報共有基盤の刷新にあたって、1つの問題がありました。それが「サーバスペースの深刻な不足」という事実でした。
こうして相談を受けた富士通が提案したのが、Windows Server 2008 R2 Datacenter Hyper-Vを利用した仮想化によるサーバの台数集約でした。プロキシサーバや認証基盤となるActive Directoryのサーバなどを仮想化することで、本来であれば計4台のサーバが必要になるところを、IAサーバ PRIMERGYを1台ずつに集約し、Exchange Serverによるメール環境と、SharePoint Serverによる情報共有環境を構築するプランでした。
そして、3月11日にExchange Server導入を進めるためのミーティングを行っている最中に遭遇したのが、東日本大震災でした。阿部氏は次のように振り返ります。 「震災発生後は電話もつながらず、停電の影響で自社のネットワークも断絶してしまいました。そうした中で水漏れなども発生し、ご宿泊されているお客様を安全に誘導することに精一杯でした。さらに仙台駅から歩道橋でつながっている2階の入り口が開放されたままでしたので、気が付くと数百名の方々がこちらに避難されていました。人道的支援を最優先して対応していましたが、上層部の判断を仰ぎたいことも多くありました。しかし、折悪くトップが不在で連絡もとれない状態で、とにかく困りました」
こうした経験から、仙台ターミナルビルではコミュニケーションを支えるネットワークインフラの冗長化を決断。災害時には富士通のデータセンターを活用することで、"非常時にも途切れることなく、安否確認などに役立つ情報共有環境"を実現しています。
震災時の経験からネットワークインフラの冗長化を決断した仙台ターミナルビルでは、できる限りコストを抑えて冗長化を実現する方法を検討したと阿部氏は説明します。
「基幹システムを含め、社内に50台のサーバを置いてシステムを運用しています。BCP(Business Continuity Plan)は重要ですが、これらすべてを冗長化するのは、コストがかかり過ぎます。それにホテルとしては、震災によるダメージがどこまで建物に影響しているか、点検を確実に終えるまで営業はできません。故に、まずは安否確認などを確実に行うための連絡手段として、メールサーバとネットワークだけを冗長化すると決めました」
仙台ターミナルビルではさらに、設備面、運用面においても最善の結果が得られる方法を求めて、さまざまに検討を重ね、富士通のデータセンターを活用することを決定したと、阿部氏は説明を続けます。
「実は運の良いことにあの震災の中、社内にあるサーバラックが倒れることもなく、50台あるサーバ本体にも何の被害もありませんでした。UPS(Uninterruptible Power Supply)を備えていましたので、システムも安全にシャットダウンされました。しかし、停電が続いていたためサーバを再起動させることができませんでした。また、冗長化に必要なサーバの設置場所としてホテルメトロポリタン山形も検討したのですが、私を含むシステム担当者は全員、仙台に勤務しています。震災のような非常時に山形まで移動して、システムを切り替えることは不可能です。つまり、自社の設備では非常時の電源を確保することもできず、拠点間をまたいで確実な運用を図ることもできなかったのです。そこで、富士通のデータセンターを活用することに決定しました」
仙台ターミナルビルでは、SE会社である旧富士通東北システムズ(現在は富士通システムズ・イーストとして統合)の提案に沿って、富士通のデータセンターに構築する冗長化のためのサーバにもHyper-Vを活用してPRIMERGY1台にサーバ台数を集約。コストを抑えた冗長化を実現しています。
データセンターに置かれたこのPRIMERGYは、毎夜間に1度、仙台ターミナルビルが管理するPRIMERGYとデータの同期を行っています。また仙台ターミナルビル社内で管理しているサーバのデータは、HDDにバックアップした後、テープにも書き出す、3重のバックアップ体制を整えています。その上でさらに、このバックアップデータのうち業務継続に不可欠なデータを、データセンターのHDDに転送。BCP対策を充実させています。
「Hyper-Vを使ってサーバを仮想化するという提案についても、富士通システムズ・イーストの手厚いサポートがありますので何の不安もありませんでした。また、サーバハードウェアの選定についても迷う必要はありませんでした。今まで富士通のサーバを利用していて、トラブルらしいトラブルを経験したことがありません。中には10年も稼働している製品さえあるぐらいです。さらに、データセンターに関しても、設備の面でも運用の面でも、満足しています」
震災の影響により、2011年4月に終わる予定であったExchange Server導入は10月までずれ込み、年末からプロジェクトを開始したネットワークインフラの冗長化は、2012年3月に完了しています。
新しいメール環境についてはHyper-V活用によってサーバ集約を図ったことで、導入費用を「16%削減できている」と阿部氏は言います。
また旧グループウェア環境からの切り替えもスムーズに終わり、従業員の戸惑いも少なかったと、仙台ターミナルビル 総合企画本部 経営管理部 伊藤和美氏は言います。
伊藤 和美氏
仙台ターミナルビル株式会社
総合企画本部 経営管理部
「Exchange ServerとOutlookを利用する切り替えを行った際に、富士通システムズ・イーストにマニュアルを作っていただき社内ユーザーに対する操作説明会を、仙台で3回、山形で2回、福島と郡山で1回ずつ行い、送受信など基本的な操作の周知徹底を図りました。おかげで切り替え後の問い合わせも少なく、移行がスムーズに終わったと感じています」
こうして、仙台ターミナルビルではHyper-VとPRIMERGYを活用し、メールシステムの刷新からネットワークの冗長化までを適切なコストで実現しています。阿部氏は、このプロジェクトの成功について「すべては富士通グループへの信頼があればこそ」と話しています。
仙台ターミナルビルの基幹システムの冗長化や、SharePoint Server活用による情報共有環境の構築など、さまざまな取り組みを検討していると阿部氏は言います。
「メール以外のシステムに関しては、たとえば宿泊予約など失ってはいけないデータを、データセンターにバックアップするなど、重要なポイントから進めています。また、SharePoint Serverに関しては、社外のパートナーとの情報共有にも利用できればよいと考えています。たとえば、エスパル仙台では常にどこかの改修工事を行っていますし、ホテルでも各所のメンテナンスを行っています。こうした工事のスケジュールなどを共有することで、たとえば『水漏れ』が報告された際に、『昨日、ここに配管工事が入っていた』など関連情報が分かると、問い合わせをするべき相手にすぐにたどり着けます。富士通には、いつも迅速に回答をもらえているので、非常に満足しています。今後とも、良きパートナーとしてさまざまな提案をいただきたいと思っています」
富士通はこれからも地域社会とともに発展していく同社の取組みを先進技術と総合力でサポートしていきます。
(右から)仙台ターミナルビル株式会社 総合企画本部 経営管理部 伊藤 和美氏、
仙台ターミナルビル株式会社 総合企画本部 経営管理部 企画課 課長代理 阿部 靖彦氏、
富士通システムズ・イースト株式会社 第一流通ソリューション本部
食品事業部 第三食品ソリューション部 古内 裕子、
富士通株式会社 流通ビジネス本部 東日本統括営業部 小山 佳範
所在地 | 仙台市青葉区中央一丁目1番地1号 |
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設立 | 昭和51年4月5日 |
資本金 | 18億円 |
従業員 | 660名(2009年12月1日現在) |
事業内容 | ホテル事業
(ホテルメトロポリタン仙台、ホテルメトロポリタン山形、ホテルメッツ福島) ショッピング事業 |
ホームページ | 仙台ターミナルビル株式会社 ホームページ |
この度は、本情報共有基盤冗長化システムの導入に携わることができ、大変光栄に思っております。
未曾有の大災害を経験し、お客様も私たちも、BCP(事業継続)に対する意識・考え方が変わってきています。本冗長化システムは、お客様の中で組織体制/ワークスタイルの実態を見つめ直し、連絡・指示系統を確保するための必要最低限の対策に絞った対応という形で導入させて頂きました。
今後は、万が一被災した場合でも確実に切替運用ができるようフォローをしていくことに合わせ、システム障害の予兆管理や、障害発生時の影響範囲の切り分けのための運用監視に関する提案をさせて頂く予定です。
また、この様なお客様へのサポートを通じながら、システム改善提案等、お客様のよりよいパートナーとなるべく、更なるお手伝いをさせていただきたいと思っております。
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