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省エネ対策とIT基盤の最適化、どう進めていくか? 光ファイバー温度測定システム

目次

温度分布を隅々まで高精度・高密度に把握する最先端技術「光ファイバー温度測定システム」

誤差±1℃以下!広範囲に的確な温度管理を実現

リアルタイムで「見える化」し、トライアルした効果がすぐに分かる

「温度差がある風の流れ」が見えると改善ポイントも明らかになる

費用対効果を試算。3年弱で投資を回収

まとめ/環境を最適化するためのポイント

温度分布を隅々まで高精度・高密度に把握する最先端技術「光ファイバー温度測定システム」

[公開日 2012年5月10日]

村田:社会的な背景からデータセンターの省エネ化・省電力化は、業界の大きな環境課題となっています。データセンターの空調効率を高め省エネ化を進めるためには、高精度で徹底した温度管理が必要です。そこで富士通研究所が開発した光ファイバーによる温度測定システムについてご紹介したいと思います。

 株式会社富士通研究所 環境・エネルギー研究センター 主管研究員 武井 文雄の写真
武井 文雄
株式会社富士通研究所
環境・エネルギー研究センター
主管研究員

武井:お客様の悩みのひとつに、省エネに関連してデータセンターの温度を上げたいのだけどリスクがある、とよく言われます。また、空調を削減するとなると、当然、安定稼働が要求される。そうした課題を解決するシステムとして2008年より研究を重ねてきたのが「光ファイバー温度測定システム」です。この春、ようやく富士通ネットワークソリューションズ(FNETS)より販売することになりました。

光ファイバー温度測定システムとは、文字通り光ファイバーを使ってデータセンターの中の温度分布を隅々まで高精度・高密度に把握できる最先端技術です。まず何より、1万カ所以上の温度分布を同時かつ正確に測定でき、光で測りますのでサーバから発生する電磁的ノイズの影響がない、1本の光ファイバーで従来のセンサーを10cm間隔で置いたのと等価の効果が得られ、非常に詳細なグラデーション表示でサーモグラフィのような温度分布を表現できます。そしてリアルタイムで温度の状況を把握できる、といった特長が挙げられます。

現在のところ、従来の温度センサーを大体100ラック、600ポイント以上配置するような大規模のお客様に対してコストメリットがあります。
従来のポイントセンサーをラック1台当たり3カ所、上中下と配置して測った場合と何が違うかというのを対比させたものが下の図です。

従来の温度センサーとの比較
従来の温度センサーとの比較

誤差±1℃以下!広範囲に的確な温度管理を実現

武井:左がサーモグラフィ的な表示で、局所的に温度が高いホットスポットがサーバの中にできている様子をしっかり捉えています。従来センサーでは、何となく温度が高いような気もするけど、と見逃してしまうようなケースもあり得るわけですが、そこをきちっと見逃さずに測れるというのが最大のメリットです。
基本的には測定器本体と、それにつなぎ込まれる光ファイバーという構成で、測定器から出た刻々と変わる光の強さを計測して温度に変換するという技術です。この測定原理そのものは20年前くらいからあるのですが、データセンターのような複雑で細かい温度分布がある場所では測定誤差が大きかったんです。それを補正する独自のアルゴリズムを開発し、高精度な再現性を実現しています。測定範囲は-10℃~+85℃。およそ一般的なサーバルームの中は十分カバーできます。計測誤差は±1℃以下です。サーバルームの中での空調診断はもとより、将来的には制御という観点から様々な分野で活用できると考えています。

廣瀬:途中で断線したりしても、そのポイントまでわかるんですよね。

武井:わかります。きっちり10cm単位でわかりますので、補修も非常にたやすいですね。

村田:1カ所だったら断線しても機能に影響はでないのですね。

武井:はい。ダブルエンドといって、一筆書きで戻ってくるんですね。交互に測っていますので、1カ所までであれば基本的には継続できます。

廣瀬:故障ポイントがピンポイントでわかると。

武井:切れた瞬間に測定器のほうにアラームが鳴って、何メートルの位置で切れていますと、そこまで解析して出てきますので。

武井:では、データセンターに置いた場合にどういうふうにデータが流れるか。まず光ファイバーを通常は床下、ラック、ラックの前面・背面、天井面に敷設します。このファイバーの一端が測定器に入って、サーバの中で処理されて、温度分布を見える化して表示します。データの流れとしては30秒/1m分解能で測定された温度データが、富士通研究所のアルゴリズムを介して、最終的には30秒/10cm分解能の高精度データに補正されて出てきます。

光ファイバーにおけるデータの流れ
光ファイバーにおけるデータの流れ

武井:富士通 沼津ソフトウェア開発クラウドセンターの実践例では、天井に50cm間隔で光ファイバーを行ったり来たりさせ、サーバラックの前面・背面を通し、さらに床下に一筆書き状にずっと光ファイバーがつながっていき、最終的に測定器に戻されます。

沼津ソフトウェア開発クラウドセンターでの敷設例
沼津ソフトウェア開発クラウドセンターでの敷設例

リアルタイムで「見える化」し、トライアルした効果がすぐに分かる

武井:これは沼津ソフトウェア開発クラウドセンターでのデータです。節電対策前と節電対策後の様子ですね。空調機の温度を5℃くらい、ファイバーの温度分布を見ながらじわじわ上げて、結果として5.5℃くらい上げることができました。こうした状態変化がリアルタイムで手にとるようにわかるわけです。

温度をグラデーションで表示
温度をグラデーションで表示

武井:もうひとつ、富士通九州支店でのトライアル事例をご紹介しましょう。ここには14台のラックが配置されていました。天井面からのデータしか記していませんが、実際はサーバラックの前面・背面も同時にとりながら、改善前は、局所的に最高温度30℃くらいまであったんですが、それを超えないという前提で空調機をいろいろ調整し、実際にどれくらい空調機の省エネができたかを測定しました。もともと設定温度が22℃とか23℃であったものを、この例では24℃に上げて、2台の空調のうち1台を停止したらどうなるか試しました。削減率として施策1では11%、施策2では最大36%、4割近い空調エネルギーの削減が可能であるということを確認できました。
こうしたデータは、1時間を20秒くらいに圧縮して、一種のパラパラ漫画のようなカタチでアニメーションにもできます。このデータを目安にして改善した結果、空調機のフィンで風向を変えて、圧倒的に冷やすべき場所を探り当てて、確実に冷やせるようになりましたと。このピンポイントを探り当てるのに要した時間はわずか1時間。従来のように1ポイント、1ポイントを手測で測っていたら半日かかっても終わりません。速やかな分析から改善につなげられるというのもこのシステムの優れた点でしょう。

富士通九州支店における導入事例
富士通九州支店における導入事例

「温度差がある風の流れ」が見えると改善ポイントも明らかになる

ネットワークサービス事業本部 プロダクト企画統括部 伊瀬 英樹の写真
伊瀬 英樹
ネットワークサービス事業本部
プロダクト企画統括部

伊瀬:今まで見えなかった空気の流れが見えるようになったというのが一番大きな成果ですね。

武井:そうですね。温度差がある風の流れが非常によくわかると思います。本当は風速の分布があると完璧なんですが、残念ながらまだ光ファイバーは温度しか測れませんので。温度だけでもこれくらいのことがわかるというところが非常におもしろいところかなと思っています。

伊瀬:リアルタイムでわかるので、ちょっと違う、こうやったらよかったというのがすぐわかるというのがとてもいいですよね。

大内:実際、九州支店のトライアルでも、フィンの向きを変えただけで、変え過ぎると全然違うところの温度が上がってしまうというのを確認しています。

武井:本当に数度なんですね、ピンポイントでいいと思えるところというのは。その度に全体を手で測り直すというのはさすがにモチベーションが上がらない。逆に怖くてやれないですね。変えてしまって、もし今安定稼働しているところが崩れてしまったらどうしてくれるという話になってしまうので、なかなか現場の人、特にファシリティの人はどうしても保守的になりがちだと思うんですね。

伊瀨:でも、これで目に見えて熱だまりが解消できるとか、温度が上げられるというのがわかりますので、一種の証拠みたいな感じですね。これなら安心して、じゃあ温度を上げようか、下げようかということが容易に判断できるようになったので、それもとても大きなメリットだと思いますね。

武井:見える化というところの最大の利益じゃないかなと思うんですね。

費用対効果を試算。3年弱で投資を回収

武井:100ラック規模という大きめの想定ではありますが、現時点で費用対効果を試算しますと、空調機のみの設定変更で、設定温度を18℃から22℃に、導入費用を1,700万円とした場合、削減効果は、年間削減総電力量は43.8万kWh(24時間365日稼働)、電気料金削減効果は年間591万円(13.5円/kWh)、つまり3年弱で1,700万円の投資が回収できる見込です。当然お客様のデータセンターの状態によっても変わりますので一概には言えませんが、もともと自分のデータセンターがどうなっているかよくわからない、今まで温度を測定したことはなかったというお客様は、十分改善の余地があると考えられますし、大きな改善効果をご提供できるのではないかなと思っています。また、データセンター全体の信頼性や安定運用のレベル向上という利益もありますので、ぜひ、ご活用いただければと思います。

河辺:ラック100本というとなかなか……

武井:そうですね。一応、低価格な計測システムの提供ができるよう、現在模索しているところです。

大内:データセンターというのは、例えば100ラック相当のサーバルームでいうと、最初から100ラック立つわけではなくて、最初は5ラックとか10ラックとか、徐々に設置していきますので、時間の経過でサーバの発熱量がかなり違うんですね。そうすると、最終的に100ラック全部埋まったときに温度のバランスが崩れてしまうこともありますから、こういう見える化というのは必要になってくると思います。特に今は、サーバは5年でリプレースがかかっていますが、今後はもっと短くなって4年とか3年でリプレースがかかるようになってくる。そうするとますます温度のバランスは崩れてくるので、見える化というのは必ず必要になると思います。

この章でご紹介した製品・サービス等

まとめ/環境を最適化するためのポイント

村田:IT機器をうまく使いこなし、IT投資を削減するには、グリーン環境性能の高いIT機器の選択は勿論ですが、それを動かすためのファシリティに注目することが大事なのです。
それには、お客様のIT機器の規模により、色々な選択肢があり、その最良の選択とうまく使いこなすことでIT投資を大幅に削減できると思います。

武井:それをきっちり分ける。究極はファシリティキューブなんですよね。そういう考え方をもって、光ファイバー温度測定システムやエフサスグリーンファシリティソリューションを使いながらデータセンターを改善すれば、だれがやっても再現性よく省エネができる。そういう道筋をこれらのツールでご提供できると思います。

村田:大規模なサーバルームやデータセンターをお持ちのお客様には光ファイバー温度測定システムを、サーバルームにはエフサスグリーンファシリティソリューションを、事務所や店舗、病院のような小規模施設にはファシリティキューブを、というようにそれぞれの環境に応じて省エネ、省スペース、コスト削減といった効果が期待できる製品/サービスを続々誕生させています。富士通の総合力がきっとお客様の環境活動やローコストオペレーションに貢献できると思います。

この章でご紹介した製品・サービス等