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企業における地球環境問題への戦略的対応

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先行きが不透明な経営環境において、地球環境問題への対応強化や環境ビジネス市場の拡大は明確かつ不可避なテーマとなります。企業において地球環境問題への取り組みはリスクとビジネスチャンスの両面で捉えることが大切です。
今回、地球環境問題に関する政策目標が集中する2020年に向け、地球環境問題を切り口とする中長期の事業戦略を検討する際のポイントについてご紹介します。

地球環境問題に関する政策目標が集中する2020年

激動の世界経済、国際競争の激化、不安定な国際情勢など、企業をめぐる環境は不確実性を増しています。こうした状況の中、継続的な成長を果たしていくためには中長期にわたる事業戦略の検討が重要です。それは、これまでのビジネスを堅持するだけでは急激な変化に対応しきれず、変化を予測し事前に対策を立てておくことが厳しい時代を勝ち抜く上で重要な鍵を握っているからです。

中長期の事業戦略を検討する際、重要項目の一つが地球環境問題です。世界的な人口増加に伴い、資源制約や地球環境負荷の増大はますます深刻化しています。地球環境対策の一つの目標となる年は、政策目標が集中している2020年です。日本では、2020年までに温室効果ガスの排出量を1990年比25%削減(2008年の排出量比26%削減)、生物多様性の損失を止めるといった目標が設定されています。

こうした国際公約を順守するために地球環境に配慮した規制が強まっていくことは、企業活動にとってリスク要因になるのと同時に、ビジネスチャンスの拡大にもつながります。2010年6月、日本政府は閣議決定により、新成長戦略において「グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略」と銘打ち、2020年に環境分野で50兆円の新市場と140万人の新雇用の創出という目標を提示しました。企業においては、リスクとチャンスの両面から2020年を視野に地球環境問題への戦略的対応が重要です。

中長期の事業戦略の検討に適しているバックキャスティングの考え方

10年後といった中長期の事業戦略を検討する場合に使われる考え方にバックキャスティングがあります。これは、将来起こりうる社会の姿を予見して、その社会における自社のポジション(あるべき姿)を想定し、そこへ向かうためにおこなうべき方策を考えるという「課題解決型」のアプローチです。

バックキャスティングは、できることは何かではなく、あるべき姿と現状とのギャップを埋めていく発想をとるため、既成の枠にとらわれることなくイノベーションが起きやすいといった特長があります。また、目標を見据えながら進捗をチェックでき、柔軟かつタイムリーに計画修正をおこなえる点もメリットです。

低炭素で豊かな社会の実現を目指した、富士通の中期環境ビジョン「Green Policy 2020」の策定においてもバックキャスティングを使っています。地球環境問題を軸にバックキャスティングを利用し、中長期の事業戦略を検討する場合、地球環境問題への対応が強化された2020年の社会において自社はどうあるべきかといったビジョンは、目標であり指針となるものです。ビジョンを描く際、考慮すべき社会変化の潮流をいくつかご紹介します。

環境対策コストの上昇

製品・サービス、輸送、建造物などの省エネ基準の強化に加え、環境税などの導入によりCO2排出コスト、エネルギーコストが上昇。また、生物資源の調達コストも上昇し、事業活動に伴う様々な生態系保全コストも必要に。

環境情報の見える化の進展

製品やサービスについてライフサイクルでのCO2排出情報や生物多様性影響情報の表示が一般的に。リアルタイムでCO2排出量が把握できる家庭や事業所が増え、有価証券報告書や年次報告書などにおいて温暖化対策や生物多様性対策の記載が浸透。

環境価値の市場化

世界的に排出量取引市場が拡大し、排出量取引を活用する機会が増大。CO2排出や生物多様性への影響などを経済的価値(市場価値)に換算して経営判断に用いる考えが普及。

行動様式の変化

製品・サービスの選択、投資行動において温暖化や生物多様性への影響を考慮することが一般化。また、低炭素型の商品輸送や通勤・移動方法への移行が進展。取引相手に対しても温暖化や生物多様性に配慮した経営管理を調達基準とする企業が増加。

そのほかにも、クリーンエネルギーのインフラ整備の進行、世界的な環境ビジネス市場の拡大なども重要な観点となります。

リスク管理、ビジネスチャンス、ステークホルダーの3つの視点が大切

バックキャスティングでは、自社がどうあるべきか、ビジョンを描いた後、その実現のためのシナリオプランニングの検討に入ります。その際、リスク管理とビジネスチャンス、そしてステークホルダーの3つの視点が大切です。

リスク管理の視点では、資源の調達から販売、お客様が使用して廃棄するまでのバリューチェーン全体で、CO2排出量や生物多様性への影響の把握・管理をおこなった上で環境負荷の最小化を図ることが重要です。また、商品や企業の環境情報の開示を進めるとともに、環境対策費用の経営指標への反映や迅速な意思決定の仕組みづくりも課題となります。

ビジネスチャンスの視点では、まず自社の製品やサービス自体の環境配慮度の向上が不可欠です。また、地球環境問題をテーマに社会や企業が抱える課題を解決できる新たな価値を提供できるか、その検討が課題となります。例えば、温暖化や生物多様性対策のプロジェクトに活用できる技術やサービス、環境配慮型都市構築のための社会インフラ整備のノウハウ、環境対策を支える計測・モニタリングの技術・システムや評価手法などです。また、環境ビジネスにおける国際競争の激化を考慮すると、自社の環境ビジネスの国際競争力を評価する観点も重要です。

株主・投資家、顧客、行政当局、金融機関、取引先、NPO・地域コミュニティ、従業員、さらには競争相手といった企業を取り巻くステークホルダー(利害関係者)の視点では、それぞれが企業に対して異なる関心を持っているという認識が大事です。また、10年間の時間軸を考えれば、ステークホルダーの関心の変化や、自社の事業領域と事業地域の変化も想定しながら、重視すべき優先順位とステークホルダーの期待に対応した最適な経営資源の配分、コミュニケーション手法の選択を検討する必要があります。

中長期の事業戦略を検討する場合、地球環境問題を経営指標に取り込むことは、競争力強化の一つになると考えられます。そのためには、バックキャスティングにおいてステークホルダー分析や自社のSWOT(強み-弱み-機会-脅威)分析などを利用しながらビジョンをつくり、中長期の事業戦略に具体的に落とし込んでいくことが肝要です。

富士通では、見える化や業務の効率化などICTを活用した様々なソリューションを提供し、企業の環境活動をきめ細かく支援してまいります。また富士通総研では、社会変化の潮流などの情報提供から、バックキャスティングを使ったシナリオプランニング、ステークホルダー分析、SWOT分析など、企業の中長期事業戦略の策定を総合的な観点でサポートいたします。

[2011年1月4日 公開]
〔富士通総研 経済研究所 主任研究員 生田 孝史〕

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