- 競争力向上や市場開拓のヒントに ~ サービスを利用者目線で考える ~
国際競争が激しさを増すなか、製品の品質だけで抜きん出るのは次第に難しくなっています。多くの企業がサービスによって独自の価値提供を考えていますが、消費者がサービスをどのように評価しているのか、またどんな潜在市場があるのか……といったことに関しては模索を続けているのが現状です。富士通総研では、サービスを利用者の目線で考え、評価・分析する試みに取り組んでいます。

中国をはじめとする新興国の企業も技術力が向上し、高品質の製品を生産するようになりました。このため、製品の品質だけで独自性を追求するのは次第に困難になりつつあります。こうした中、多くの日本企業は製造業も含めて、サービスによってお客様に独自の価値を提供し、競争力を高めるための工夫を続けています。しかし、消費者のライフスタイルや嗜好の多様化などによって、サービスが利用者からどのように評価されているのか、企業の側からは中々見えにくいのが現状です。
サービス評価へのアプローチの第一歩として、評価は提供側ではなく利用者が決めるものであるという認識が大切です。お客様目線でサービスを考えるという原点に立ち返ったうえで、評価を業務改善に活かせるような評価方法が求められています。
富士通総研では、こうした課題に応える新たなサービス評価モデルの開発に取り組んでいます。新たなモデルでは、サービスの総合評価は利用者が感じる便益とコストそれぞれの影響によって決定されます。また、便益はプロセス(序盤、中盤、終盤)とサービス結果の双方からもたらされ、一方、コストの評価は価格と非価格コスト(時間や手間、精神的負担など)の影響を受ける構造になっています。さらに、各要因が総合評価に影響する度合を数字で示すことができます。

サービス評価を分析するために、コールセンター、ネットショップ、医療機関、家電量販店の4つのサービスの利用者それぞれ1000人にアンケートを実施し、そのデータを前述のモデルに即して分析しました。これらの4サービスは、お客様接点にICTを使うかどうか、問題解決型か物販型かの2つの基準でサービスを4分類したとき、それぞれが異なるカテゴリーに属すると考えられます。モデル分析の結果、以下、3つのポイントが明らかになりました。
日本のサービスは過剰品質とする通説がありますが、利用者の評価は便益重視であることを分析結果は示しています。この結果は、調査した4つのサービスに共通しています。つまり、お客様から見れば、サービス利用に際して感じられるコストが半分になるよりも、メリットが2倍になる方が総合評価は高まります。
例えば家電量販店の場合ですと、店舗で製品を探す序盤の段階、製品の購入を決定する中盤の段階、そしてお勘定など終盤の段階と、プロセスのそれぞれの段階で評価要素が異なってくるという特徴が表れました。序盤はスピードや反応性、中盤は確実性や専門能力、終盤では共感性が重視されます。この特徴は4つのサービスで共通しています。
また総合評価への影響度の面では、序盤のスピードや反応性は評価が低いと著しく低下するものの、評価が高くてもあまり向上しないということ、一方、終盤の共感性は評価が低くても低下しないものの、この評価が高いほど総合評価も向上するといった特徴も見えてきました。
特に、お客様接点でICTを使う非対面サービスでは、コストに対する影響は価格よりも非価格コストの方が大きいという結果になりました。非対面サービスでは、時間の短縮や手間の省略などへの期待値がもともと高いために、おのずと評価が厳しくなりがちという事情があるかもしれません。いずれにしてもサービス設計の段階で、利用者が感じる非価格コストに留意することは非常に重要です。
前述の分析結果から副次的にわかったことは、年齢、性別、年収といった基本属性による評価構造の違いはあまり顕著ではなかったという点です。このことは、基本属性で利用者を分類する従来の顧客セグメンテーションには限界があることも示唆しています。
富士通総研ではコンサルティング部門と経済研究所が共同で、利用者の価値観に基づく新たな顧客セグメンテーションの可能性を探っています。その結果、アンケート調査から「つながり志向」「安らぎ・癒し志向」「すごもり志向」などの生活者の価値観変化を抽出し、それらの有無や強弱を統計的に分析することによって、消費意識や消費行動が異なる消費者セグメントを形成しました。
具体的には、「社交好きか人見知りか」「外出好きかすごもりか」という2軸が抽出され、消費者を4つのタイプに分類することができました。そして、各タイプをツバメ、コウモリ、タカ、フクロウと命名します。この試みによって、例えば旅行ニーズに関して、社交好きで外出好きなツバメ以外にも、人見知りではあるけれど外出好きのタカという潜在市場が浮かび上がってきます。さらにタカには店頭での説明が効果的であるといった特徴も判明しました。富士通総研ではこうしたアプローチを「価値観マーケティング」と名付けています。「価値観マーケティング」は消費者の潜在ニーズの掘り起こしや市場開拓など、企業のマーケティングにも広く応用可能であると考えられます。
利用者の目線に立つことが、サービス付加価値の向上や効果的なマーケティングをおこなうための出発点です。富士通グループでは、お客様企業にとって大切なお客様のことまできちんと考えることを通して、今後もさまざまな経営課題の解決に貢献してまいります。

[2010年10月1日 公開]
〔富士通総研 経済研究所 上席主任研究員 長島 直樹〕
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