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ネットとリアルが融合した新時代のサービスに関する調査研究の視点

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携帯端末とAR(拡張現実)技術、位置情報技術、センサー技術などを活用し、現実空間に情報を付加するサービスが次々と登場し関心を集めています。ナビゲーションによりビジネスチャンスを拡大、また商品を購入前後の消費者の行動も把握可能に。新時代のサービスをビジネスで活用するためのポイントや課題について考察していきます。

現実環境に情報を付加する新サービスが次々と登場

外出先でのランチ。何を食べたらいいか、悩ましいところです。そんなとき、こんなサービスがあればどうでしょうか。携帯電話のカメラのレンズを通して街を見ると、現実の映像に重ね合わせておいしいお店の情報が表示され、口コミ情報やお店までの道案内、クーポン情報などもその場で確認。さらに食べた感想の発信も可能になるなど…。

携帯端末の性能が向上したことにより、現実環境にコンピュータを用いて情報を付加するAR(拡張現実、Augmented Reality)技術やGPS(Global Positioning System)といった位置測定技術、人のあらゆる活動履歴を記録するライフログ、人やモノの動きを可視化するセンサー技術などの先進技術を活用し、今までにない新時代のサービスが次々と生まれています。

店舗への誘導、博物館や美術館、観光名所におけるガイドはもとより、ネットでのつぶやきとSNS(Social Networking Service)内の友人関係を連携させるサービス、センサーを搭載した携帯電話などを使って健康管理をおこなうサービス注1など、その活用領域は多岐にわたっています。また、店舗だけでなく街全体の回遊性を高めるために次の行動に導く付加情報を提供する地域活性化のイベントや、遺跡に立ち、特殊なゴーグルを装着して周囲を見渡せば昔の風景が映し出されるといった遺跡復元などの試みもおこなわれています。

こうしたリアルの世界とネットの世界を融合したサービスが提供するもの、それは情報活用の多様性やリアルタイム性を高めることで「いま」を生きる私たち 一人ひとりの可能性を広げる機会そのものです。

新しいサービスのビジネス活用における2つの観点

ネットとリアルが融合した新しいサービスをビジネスで活用する場合には2つの側面があります。1つは人を誘導してアクションをうながすことによるビジネスチャンスの拡大です。例えば、前述の地域活性化もその1つです。また位置情報を活用したゲームもあり、コンテンツ提供者がリアルの店舗・企業とのコラボレーションをおこない、店舗で商品を購入するごとにアイテムがもらえるといったビジネスモデルが成り立っています。

もう1つは情報収集と活用の多様性による付加価値の創造です。ビジネスの観点では、POSシステムやポイントカードによる購入商品や購入者の属性情報に加え、これからはどこに立ち寄ってお店に来たか、買い物の前後でネットに何をつぶやいたか、さらに購入後の商品の使い方までも把握可能になることも考えられます。富士通も、例えば家のなかにある家電製品をネットワーク化して使用状況の情報を収集するために利用できるアドホック通信技術注2の研究を進めています。これまで可視化できなかったさまざまな情報を新サービス・商品開発に活用することで競争力の向上がはかれます。

環境や安心・安全の観点でも情報収集と活用の多様性に期待が寄せられています。例えば、走行している自動車から車両位置やスピードなどのプローブ情報注3を収集、活用して交通渋滞情報の精度向上をはかる試みや、インターネットの口コミ情報を収集、分析して都道府県別に花粉症の症状分布を可視化する試みなど、さまざまな取り組みがおこなわれています。

普及、拡大にはプライバシー保護と利便性のトレードオフの解決が鍵

ネットとリアルが融合したサービスの普及、拡大における最大の課題は、プライバシーの保護です。個人情報とは個人が特定できる情報ですが、厳密には個人を特定できない情報でも、複数の情報を集約することで個人が特定されるリスクが高まります。

プライバシーの問題と利便性のトレードオフを解決するために、データを匿名化して二次利用する技術の開発や制度的な問題の検討など、国としての取り組みも進められています。さらに、ネットとリアルのデータが蓄積されるデータセンターの活用もポイントになります。信頼性はもとよりデータを匿名化し安心して活用できる仕組みの確立が、今後ますます重要です。クラウド時代の進展は、企業間や異業種間のコラボレーションのスピードや多様性も拡大します。安心・安全のもと、企業、人、情報が出会い、触発しあって付加価値を創造していく。クラウドサービスの提供企業も、そうした場を提供していくことに役割を大きく変貌させていくことが考えられます。

新時代の技術やサービスを活用した新しいビジネスモデルや社会システム、安心・安全に利用できる仕組みなどについて富士通総研は研究を進めており、今後もさまざまなご提案をおこなっていきます。これは、富士通グループがビジョンとして標榜する人間を中心とするICT社会「ヒューマン・セントリックなインテリジェント・ソサエティ注4」の実現を支える調査研究でもあります。

注記

(注1)携帯電話などを使った健康管理サービスとは :
富士通は、携帯電話とパソコンを活用した新しい健康サービス「深体創工房(しんたいそうこうぼう)」を提供しています。
(注2)アドホック通信技術とは :
通信機器同士が自動的にネットワーク網を構築し、バケツリレー式にデータを目標まで伝達する通信技術。
(注3)プローブ情報とは :
走行位置の履歴など走行する自動車のデータを収集し、入力データとして活用する各種情報。
(注4)ヒューマン・セントリックなインテリジェント・ソサエティとは :
誰もが複雑な技術や操作を意識せずにICTが創出する価値の恩恵を享受できる社会の実現。ICTの進化を背景に、より人間的な価値実現を目指し、人々がより豊かで、より安心・安全で、より快適、便利で、楽しく暮らせる社会を実現するという富士通のビジョン。

[2010年9月1日 公開]
〔株式会社富士通総研 経済研究所 主任研究員
早稲田大学IT戦略研究所 客員研究員 浜屋 敏〕

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