- 金融システムの安定的な発展に向けた情報技術の活用
サブプライム問題に端を発した金融危機。その大きな要因の1つが、複雑化しつづける金融取引にリスク管理の高度化が追いつかず、リスクを適切に把握できなかったということです。金融システムの安定的な発展に向けて、膨大な金融情報を活用し、高度化、複雑化するリスクを的確に把握する仕組みの必要性が急速に高まっています。
XBRL、金融工学、クラウドコンピューティングと、リスク管理の高度化のための3つのキー技術について、活用法の考え方や世界の動向、また富士通の取り組みについて紹介していきます。

金融システムの安定は、ビジネスだけではなく、社会の基盤を支える最重要課題です。今回の金融危機によって、高度化、複雑化する金融システムに対応するリスク管理の仕組みの必要性が急速に高まっています。こうした仕組みの実現にむけて世界各国の民間、公的機関の動きも活発化しており、国際的な金融市場ではリスク管理を競争力の源泉と捉える傾向も強くなっています。
膨大な金融情報をもとに、リスクを的確に把握するためには情報技術の活用が不可欠です。なかでも、情報の収集、比較・分析のための計算、インフラといった観点から、リスクを把握するために必要な情報を伝える技術として“XBRL”、リスクを定量的に計測する技術として“金融工学”、金融工学の計算を効率的におこなう技術として“クラウドコンピューティング”の3つの技術がキーポイントとなります。

サブプライム問題から始まった金融危機。その根本的な原因の1つとして、証券化商品のリスクを評価するために必要な情報が、投資家に届いていなかったことが挙げられます。現状は、投資家が投資判断に使える情報はほぼ格付のみという状況です。証券化商品の情報は膨大な紙情報として提供されており、なおかつ商品ごとに形式も異なっていたことから、リアルタイムな情報の活用が困難だったことも背景にあります。

証券化商品の評価に必要な情報を伝える技術として注目を集めているのが、XBRL(eXtensible Business Reporting Language)です。
XBRLは、ビジネス報告の作成・流通・利用を容易にするために標準化されたXMLベースの言語です。米国公認会計士を中心に発足したグローバルな標準化団体 XBRLインターナショナルにより標準化活動が推進されています。
XBRLの特長としては、データ作成の際、データ項目の追加・変更が容易におこなえること、追加・変更した項目の意味や変更前の項目との関係をタクソノミというメタデータに記述するため、比較可能性を担保できる点などが挙げられます。
XBRLの適用により、多様な証券化商品において統一的な視点で比較・分析が実施できるようになります。2009年3月に開催された米国下院のTARP公聴会(注1)では、証券化商品に対し、XBRLを活用したプロトタイプによる価値評価の実効性やXBRLを用いた報告の義務付けなど具体的な検討がおこなわれました。
また、財務情報を作成・流通・利用するための記述言語として、XBRLは各国の中央銀行や金融庁、国税などの政府機関、証券取引所で採用されており、国内でも日本銀行をはじめ、金融庁EDINET(注2)、東京証券取引所TDnet(注3)、国税庁e-Tax(注4)が採用。金融庁EDINETではXBRL形式による財務諸表の提出が上場企業に義務付けられるなど、XBRLを活用した情報開示インフラの整備が進められています。
さらに、財務報告だけでなく、企業リスク管理(注5)やコーポレート・アクション分野(注6)など、資本市場におけるさまざまな意思決定に必要な情報を流通させるデータ形式のデファクトスタンダードとしてXBRLの活用範囲は大きく広がろうとしています。

富士通は、XBRLに関する国際標準化活動のメインプレーヤーとして、XBRLインターナショナルでの実証研究のためにプロトタイプを提供するなど積極的な活動を2001年から展開中です。また、2003年より販売している標準仕様に対応したXBRLミドルウェア「Interstage XWand」は、世界23ヵ国で採用され、XBRLの国際的な普及を牽引。「Interstage XWand」は、前述の金融庁EDINET、東京証券取引所TDnet の 中核ソフトとしても採用されています。
標準化活動の一方で、XML技術を活用した「XML大福帳(注7)」などを自ら実践するとともに、そのノウハウを製品化することで、XBRLを標準データ形式とする情報のサプライチェーンの実現にも注力しています。
今後も富士通は、国際標準化活動やさまざまな取り組みを通じ、XBRLに関する最新情報や世界最先端のXBRL適用システムの提供に努めていきます。
[2009年9月1日 公開]
この記事は、お客様の変革と成長の実現をご支援する 株式会社 富士通総研が提供しています。
栗本鐵工所様が、富士通とともに取り組んだ、グローバル競争を勝ち抜くための「遠隔保守」についてご紹介します。
NKSJひまわり生命保険株式会社様が、富士通とともに取り組んだ、システム連携基盤を活用し実現した、統合コストの最小化についてご紹介します。