- スーパーコンピュータ「京」のさらなる先を見据えて

世界では、現在「京(けい)(注1)」の100倍以上の演算処理能力を持つ、エクサフロップス級スパコン(注2)の実現に向けた研究開発が始まっています。富士通研究所は、将来の超高速コンピュータにおける要素技術の一つとして、CPU間の大容量・低電力データ伝送を実現するシリコンフォトニクス光源(注3)を開発しました。
スパコンの演算処理速度は、1年半で約2倍というペースで高速化しており、2020年頃には「京」の100倍以上の演算処理能力を持つ、エクサフロップス級スパコンの時代が到来すると見られています。
スパコンは多数のCPUを並べて演算をさせますが、CPU間をやり取りされるデータ量は、エクサフロップス級スパコンでは10テラビット毎秒(Tbps)を超えると見られています。これを実現するには、従来にないCPU間の大容量インターコネクト(データ伝送)技術が必要となります。
CPU間にはこれまで、銅線による電気インターコネクト技術が採用されてきましたが、伝送損失による距離の制限や消費電力の増大といった問題から、高速化の限界が近いと言われています。そこで、将来のCPU間インターコネクト技術として注目されているのが、光インターコネクト技術です。
CPU間の光インターコネクトには、光導波路(ひかりどうはろ)(注4)の幅をおよそ0.5μm(マイクロメートル)(注5)に小型化でき、かつ大規模集積が可能な、シリコンフォトニクス技術(注6)が非常に適しています(図1)。

また、シリコン半導体の製造技術を利用できるため、大量生産による低コスト化が図れるというメリットもあります。
CPUと光導波路の間で、信号を電気から光、光から電気に変換するのが光送受信器です。その送信部は、光を出す光源と、光に信号を乗せる光変調器(注7)で構成されます。このうち光変調器は、非常に小さな電圧で動作するリング共振器(注8)の方式が有望と言われており、様々な研究機関で研究開発が進められています。
しかしながら、リング共振器は波長に非常に敏感なため、CPUからの発熱の影響等によって光源の発振波長とリング共振器の動作波長にずれが生じると、光に信号が乗らなくなるという問題がありました。そこで多くの研究機関では、波長を一致させるために温度調節機構が必要であると考えられていました。
富士通研究所は、温度調節機構を用いた方法では、小型化・低消費電力化を求められるCPUに搭載可能な光送受信器の実現は難しいと考え、新しい技術の研究開発に取り組みました。
そこで着目したのが、「同じサイズのリング共振器は、同じ波長で動作する」という特性です。この特性を活かして、光源の波長を決定するシリコンミラー部(注9)に、光変調器のリング共振器と同じサイズのリング共振器を用意し、ある波長だけ光を通すフィルターの役割を持たせました(図2)。

今回、温度変化に対する光源の発振波長の変化量が、光変調器の動作波長の変化量に一致することを実験によって確認しました。
リング共振器の特性を活かした光送受信器の構成が容易になり、また送信部の長さは1mm以下と超小型サイズのため、大規模集積も可能となります。本技術により、CPUパッケージに搭載可能な大容量光インターコネクトの実現へ、大きく前進しました。
現在、富士通研究所では、シリコンフォトニクス光源と光変調器を集積した送信部の開発に着手しています。さらに今後は、大規模集積技術、及び大容量通信システムで利用されてきた波長多重化技術を開発し、エクサフロップス級スパコンを視野に入れた大容量光インターコネクトの実現を目指します。
[2012年1月10日 公開]
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