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光/熱エネルギーを電力に変換するハイブリッド素子 エネルギーハーベスティング(環境発電)本格化へ

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富士通研究所は、一つのデバイスで光と熱のいずれからも電力に変換できる新しいエネルギーハーベスティング(環境発電)技術を開発。低コスト化を実現したハイブリッド素子の開発により、医療現場や日常の健康管理など、様々なセンサーネットワークへの実用化を視野に入れた研究開発を進めています。

電力を自給自足できる“究極のグリーン技術”

エネルギーハーベスティング(環境発電)は、私たちの身の回りの小さなエネルギーを収穫して(ハーベスティング)電力に変換し、機器を動作させる技術です。当初は米国などで軍事・宇宙開発の支援から研究が始まりましたが、センサーネットワークのエネルギー課題を解決する“究極のグリーン技術”として、ICT業界からの注目も集め始めています注1

例えば、精度の高い気象データを得るために、乾電池式温度センサー(消費電力0.05W)を世界中に設置するとします。1台当たりの消費電力はわずかで、乾電池を頻繁に交換する必要がなくても、100m間隔で設置するには約150億個のセンサーが必要になります。そしてその総電力はおよそ74万kW。これは、原子力発電所約1基分の電力に相当することに加え、すべての乾電池を交換してまわるための人的労力も計り知れず、膨大な乾電池廃棄も伴います。

しかしエネルギーハーベスティング技術が実用化され、センサー機器に組み込まれるようになれば、電池交換やメンテナンス作業が大幅に軽減され、環境負荷の低いセンサーネットワークを構築することができるようになります。いまやセンサーネットワークは、気象センサーのみならず、農業モニターや防災モニター、医療センサーなど、様々な分野に展開されており、エネルギーハーベスティング機器の市場規模も、2010年の6億500万ドルから、2020年には44億ドルに拡大すると予測されています注2

求められる複数環境への対応

エネルギーハーベスティング技術の研究において、エネルギー源として提案されているものには「光」「振動」「熱」「電波」などがあります。しかしいずれのエネルギー源も、得られる電力は非常に微小で、かつ常に存在するものではありません。現在、太陽電池で動作する気象観測機器など、個々の環境に応じたエネルギーハーベスティング機器が一部市販されていますが、機器の動作に十分なエネルギーを収穫できていないのが現状です。そこで、複数のエネルギー源から電力を得られるよう、異なる発電デバイスを組み合わせる方法も発案されていますが、発電デバイスが複数になることが高コスト化の原因となっていました。

光/熱発電を切り替えられるハイブリッド素子

富士通研究所は、低コストを実現するためには、単一デバイスで複数の環境に対応する必要があると考え、最も身近に活用できかつ応用範囲が広い「光」と「熱」に着目しました。そして、P型半導体とN型半導体注3から成るハイブリッド素子を開発し、光の場合はP型半導体とN型半導体を並列、熱の場合はP型半導体を直列に接続し、この2種類の半導体を回路的に切り替えるという極めて簡単な機構により、一つの発電デバイスで光電モードと熱電モードの両方の動作を可能にしました。

また、光発電と熱発電の両方の特性を兼ね備えた有機材料を新たに開発しました。導電性高分子P3HT(ポリ3ヘキシルチオフェン)を使用したこの有機材料は、室内光でも発電能力が高く、フレキシブルに曲げられるため腕のようにカーブした面に取り付ける機器にも適用できます。さらに、従来の熱電素子で使用されている希少金属と比較して、デバイスの大幅な低コスト化、低環境負荷も実現しています。

自然・医療・健康など適用範囲が拡大

本技術により、単一の発電デバイスで、複数の環境から効率的にエネルギーを収穫し発電することが可能になり、エネルギーハーベスティング技術の実用化が一気に加速するものと期待されています。

例えば、これまで電池の交換や配線が難しいために大規模に展開できなかった自然環境モニタリングや防災モニター、農業センサーも、日中は太陽光を利用した光電池モードで発電し、夜間や雨天時は外気と土中の温度差を使用した熱電モードに切り替えることでセンサーを自律制御させることができれば、より詳細かつ広範なデータ収集が可能になります。

また、これまで頻繁な電池交換や充電を必要としていた医療モニターも、交換作業の負荷を大幅に削減することが可能になります。

さらには、歩数計や体重計、体温計など、私たちの身近な健康機器にセンシング技術と発電技術を組み込むことにより、私たちが意識しなくても携帯電話にデータが送信され、自分の健康状態をいつでもチェックできるサービスなど、これまでにない新しいかたちで私たちの暮らしを快適にしてくれるサービスの登場も期待できます。

新しいヒューマンセントリックなネットワーク社会の実現に向けて

富士通研究所では、本技術における発電量の増加、プロセス・材料開発の低コスト化、信頼性の確保など、引き続き各性能向上に注力し、2015年頃の実用化を目指しています。

さらに、これからも、すべてをつなぐことで価値を生み出し、その価値で人々に「感動」「発見」「信頼と発展」を提供する「ヒューマンセントリックなネットワーク社会」の実現を目指します。

注記

(注1)
日本国内では、エネルギーハーベスティング技術の早期のビジネス化を目指し、2010年5月に「エネルギーハーベスティングコンソーシアム」が設立された。富士通研究所は同コンソーシアムに設立当初から参加している。
(注2)
出典:Dr Peter Harrop and Raghu Das, "Energy Harvesting and Storage for Electronic Devices 2010-2020", IDTechEx Ltd, October 2010.
(注3)P型半導体・N型半導体とは :
電気伝導性を高めるために微量の添加物を混ぜた不純物半導体。P型はおもに正の電荷を運ぶ正孔(ホール)の移動によって、N型では負の電荷を運ぶ電子の移動によって、それぞれ電気伝導を起こす。

[2011年1月4日 公開]


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