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人にやさしい端末「子ぐま型ソーシャルロボット」 ユーザーとの親和的な関係を築くインタラクション技術

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富士通研究所は、ヒューマンセントリック(人間中心)なICTの時代を見据えて、センサー・端末・サービスを融合した革新的な基盤技術の研究開発を進めるなか、人にやさしい端末「子ぐま型ソーシャルロボット」を開発しています。


一般に「端末」と聞くと、パソコンや携帯電話のようなハードウェアをイメージしがちですが、ここでご紹介する端末は、高齢者や子どもがより自然に接することを目的として開発した、誰もが親しみやすい子ぐまのぬいぐるみです。自然に私たちの日常生活に溶け込み、親和的な対話(インタラクション)をおこなうことにフォーカスしたこの技術は、私たちの日常生活のなかで情報やサービスをご提供するソーシャルロボットとしての実用化が期待される技術です。

擬人化した外観と感情表現を持つロボット端末

富士通研究所では、「擬人化」と「対話型」を特長とした子ぐま型ソーシャルロボットのプロトタイプ(試作品)を開発し、医師や介護施設との共同実験を進めています。

自然にユーザーと寄り添える端末であるためには、ユーザーとの関係性を決定付ける“外観”が重要です。そこで、軟らかい毛で覆われた表皮や幼児に近い体型を持つ子ぐまのぬいぐるみを外観に採用し、スキンシップを促す効果注1や、動物と人間(幼児)の中間的な存在感を持たせているのが特長です。

また、ユーザーとのインタラクションをはかるために以下の2つの特長を持った機能を搭載し、USB接続したPCから端末の振る舞いを制御できるようにしました。

1. ノンバーバル(非言語)コミュニケーションによる生き物感

顔や身体の動き(自由度)は、12個の内蔵モーターによって生み出されており、顔に「耳の折りたたみ」「まぶたの開閉」「口の開閉」の3自由度、首に「うなずき」「横振り」「かしげ」の3自由度、左右の肩関節に「腕の振り回し」のために2自由度ずつ、左右の股関節に「足の上げ下げ」のために1自由度ずつ、それぞれ有しています。

また、外からの刺激の検出のため、鼻に小型カメラ、毛皮裏には接触を感知する皮膚タッチセンサーを13 個、両腕先には握られたことを感知する腕握りセンサー、本体の傾きを検出する傾斜センサーなどを搭載しています。

さらにロボットに感情状態を表す“感情空間”を持たせ、外部の刺激に合わせて顔の表情や身振り手振りを交えたノンバーバルコミュニケーションをおこないます。

感情空間は、「快‐不快」と「睡眠‐覚醒」の2つの座標を持ち、ロボットがどの感情状態にあるかによって、例えば「両腕を挙げて喜ぶ」「悲しくて落ち込んでいる」「不機嫌そうに足をバタバタさせる」「あくびをする」など、約300個の短い振る舞いをマッピングしています。また、対話しているユーザーが飽きてしまう単純な動きに陥らない工夫として動作に緩急を付け、例えばまばたきや耳の動きを不規則にしたり、感情状態に応じて動作速度や動作周期などを変えています。

2. アイコンタクトと音声によるユーザーとのインタラクション

ロボットの鼻部に小型カメラを搭載しており、ユーザーの顔を自動的に検出して感情状態が覚醒にある時は適当な頻度でユーザーとアイコンタクトをとります。

また、3~5歳児程度の男児の合成音声機能を搭載し、振る舞いと連動した音声を内蔵スピーカーから発話します。

富士通研究所では、親和的インタラクションの実現には、画面上のバーチャルなロボットではなく、実在するロボットであることも重要と考えています。子ぐま型ソーシャルロボットのように擬人化した端末であれば、赤ちゃんや動物と接している日常世界の延長上で、ユーザーの経験を活かして簡単に端末とふれあうことができます。

注目されるロボット・セラピー

子ぐま型ソーシャルロボットは、現在、高齢者介護の現場で注目されています。介護の現場では、動物とふれあうことで得られる“癒し”によって精神的な問題を解決しようとする「アニマル・セラピー(動物介在療法・活動)」がおこなわれていますが、最近では動物をロボットに置き換えた「ロボット・セラピー」の実験もおこなわれるようになってきました。

ロボット・セラピーには、アニマル・セラピーと同様に、

  1. ふれあうことによる運動量の増加、生活の活性化、リラックスなどの「生理的効果」
  2. 自発性の向上、動機付けの形成などの「心理的効果」
  3. 周囲との会話の活性化などの「社会的効果」

といった効果が期待できます。

加えて、動物の場合に懸念される衛生上の問題や、噛み付きなどの危険がないため、比較的容易に導入することが可能になります。さらに、プログラミングが可能な点を活かして、個々の介護目的に合わせた個別な振る舞いをおこなわせることも可能であり、アニマル・セラピーにはない、独自の効果も期待できます。

認知症高齢者とのふれあい実験に見る効果

富士通研究所では、医師の協力のもと、認知症高齢者の自宅において、子ぐま型ソーシャルロボットとのふれあい実験をおこない、被験者の生理的効果を測定しました。その結果、ロボットとのふれあいによって自律神経活性度(ストレス抵抗能力)を表す値が増加し、自律神経活動が活性化する傾向が見られました。また、交感神経・副交感神経の均衡度測定では、交感神経活性の比率が抑制される(リラックスする)傾向が見られました。

こうした生理的効果の他にも、「普段は黙ってただ座っているだけなのに、ロボットとふれあう時は自然な笑顔で接する」といった評価も、被験者の家族から得られました。

より一般的な効果を調べるため、今後、複数の被験者を対象にした、介護施設でのふれあい実験を予定しています。

ヒューマンセントリックなICT端末に向けて

子ぐま型ソーシャルロボットのように、アイコンタクトや表情によって感情を表出するロボットは、まだ世の中に多くありませんが、ヒューマンセントリック(人間中心)なICTの時代には、こうしたセンサー・端末・サービスを融合した新しい基盤技術が必要になってきます。

富士通研究所では、今回ご紹介した高齢者介護にとどまらず、教育や娯楽、一般家庭への適用も視野に入れ、先進的な研究開発に注力していきます。

注記

(注1)スキンシップを促す効果とは :
米国の心理学者Harry Frederick Harlow (1905-1981)による子猿を使った実験において、針金の母猿モデルとタオル地の母猿モデルそれぞれに授乳機能のありなしを設定したところ、子猿は授乳機能がなくてもタオル地の母猿とより長く過ごしたという結果が得られ、スキンシップの重要性を証明する実験の1つとなった。

[2010年4月1日 公開]


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