- 法務省様 「登記情報システム」プロジェクト
社会基盤となるシステムを支える。
その責任を、“使命”として受け継いでいく。
Linuxを採用した基幹システムとしては、世界最大級となる法務省の新たな登記情報システム。
稼働まで約5年。12メガステップにものぼる高品質なプログラム開発という壮大なプロジェクトを、少しの遅滞もなく完成できた原動力とはなんだったのだろうか。
プロジェクトのリーダーとして1,000人のチームを率いた富士通 官公庁ソリューション事業本部の土屋 辰幸と若手の中心として取り組んでいた中安 伸明が語ったのは、社会の基盤を支えるシステム構築に携わる責任と熱意を感じる言葉だった・・・

(左から)土屋 辰幸、中安 伸明
日本中の不動産と会社・法人の登記情報を網羅する登記情報システム。社会インフラともいうべき新システムの構築ベンダー選定が行われたのは、2003年のことだった。
「新システムに求められたのは、全国に約500ヵ所ある登記所のシステムを4拠点に集約してコスト削減を図ることです。法務省様から与えられた要件は、“オープンであること” “確かなセキュリティを実現すること” “高品質を確保すること”の3点でした。特に、運用コストの削減に直結するオープンシステムの採用は絶対であり、中でもOSについては、データベース管理や運用管理などの目的ごとにバランスのとれた最適なものを選択すること、という指示もありました。これに対して、当社はLinuxでの提案を行うことにしたのです(土屋)」。競合は3社ほど。差異化しにくい条件の下で、富士通がパートナーに選ばれたポイントはどこにあったのだろう。
「当時、これほど大きなLinux採用システムはありませんでした。ゼロからのスタートにあたり、いくつもの種類があるLinuxの中からベストなものを選定し、最適なチューンナップを行ったことで、他社とはひと味違う提案になったのではないでしょうか。さらに言えば、私たちには “経験知”という資産があります。今から40年近く前の1972年、まだコンピュータが日本語処理に対応していなかった時代から、富士通は法務省様と “漢字表記が不可欠な登記データをどう扱ったらいいか”を研究してきました。現代の私たちと同じように、我々の先輩も、お客様の夢の実現に向けて、技術を磨き、ともに課題解決に挑んでいたわけです。こうした経験から得たノウハウや知識は、DNAとして脈々と継承されています。このような確かなバックボーンを活かし、登記情報システムにとって最適と考えられる提案をしたことが、法務省様にご評価いただけたと考えています(土屋)」。
では、富士通ならではの“経験知”は今回のプロジェクトでどう活かされたのだろうか。
「多くの新規要件に対し、革新的でありながら登記実務に合ったシステムを提案することをスローガンに活動しました。これも“経験知”という資産があったからこそできた取り組みです(中安)」。
すべてが順風満帆に進んだように聞こえるシステム構築。苦労した点についても聞いてみた。
「新システムへの移行方式を設計する際、データの抜け落ちがないようチェックする機能の実現に苦労しました。また、設計当時は “平成の市町村大合併”が重なり、登記に関連する市町村名の膨大な書き換えが発生したのも大変でしたね。専用システムと専任グループをつくって乗り切りました(中安)」。
時代を超えて利用されるインフラだけに、法律改正に伴う改修は欠かせない。それも社会システムの宿命と言えよう。
「登記に使われている住所や人名には、旧字体などJIS規格には含まれていない文字が約7万字も含まれています。このような文字の置き換え(同定)作業は、現在まで2年間続き、いまなお進行中です。社会システムは守ると同時に、時代の要請に合わせて進化させていかなければなりません。コツコツと、永続的にサポートできる力を有するパートナーが何より求められる分野ではないでしょうか(土屋)」。
日々の業務をしっかり支えながら、時代を先取りした変革を提案する。そんなパートナーが、ここでも必要とされていた。

不動産情報 約2億7,000万筆個分、会社情報 約350万社分を一括管理する新たな登記情報システム。この巨大システムは、どのような体制で構築されたのだろう。
「不動産情報や会社情報は経済取引に欠かせないものです。ですから、データ消失やシステムダウンは決して許されません。また、個人情報が含まれていますので、流出や改ざんを防止する堅牢なセキュリティも不可欠です。大規模かつ高信頼のシステムを納期通りに構築するために、富士通ではSEから営業までさまざまなスキルを持つ約1,000名のチームで臨みました(土屋)」。
しかし、チームが大きくなるほど、目標の共有やモチベーションの維持は困難になる。業務開発の責任者である土屋は、どのように解決していったのだろうか。
「確かに1,000名にも及ぶチームを、ひとつの方向に向かわせることは大変です。そこで、小さなグループに分け、“品質” “効率化” “ノウハウの継承”について、それぞれのグループで考え、実践してもらう小集団活動を実施することにしたのです(土屋)」。「小集団活動によって、仕事に能動的に取り組めるようになりました。自分の取り組みがシステムのどの部分を担っているかを日々実感できたので、4年におよぶプロジェクトの間、緊張感を失うことは一度もありませんでした(中安)」。
中安の言葉に、土屋はうなずいて続けた。
「大きなプロジェクトほど “ひとりひとりがやるべき仕事をきちんとやる”ことが重要なのではないでしょうか。自分の仕事にひたむきに取り組む姿勢は “文化”として組織全体に波及しますし、新たに加わったメンバーにも言葉で指示するより早く浸透します。知識やノウハウの共有とともに、こうした行動規範も継承することで業務がスムーズに運び、結果としてお客様との信頼関係も深化すると思います(土屋)」。
最後に、今回のプロジェクトに携わった感想と、これからの目標について聞いてみた。
「オンラインによる行政手続きの中で、登記情報システムはe-Tax(国税電子申告・納税システム)と並んでよく利用されているそうで、社会に貢献できている喜びを感じます。行政システムにとって利便性の向上とコスト削減はこの先もテーマであり続けます。新たなテクノロジーと挑戦を恐れない勇気で、お客様にご満足いただける提案を続けたいと思います(土屋)」。「先輩が培ってきたお客様との信頼関係をさらに深めていくのは大変である一方、とてもやりがいのあることです。この大きなプロジェクトに参加できたことを自信として、業務知識や仕事に取り組む姿勢など先輩から受けたバトンを次の世代に手渡していきたいと考えています(中安)」。
決して、努力を惜しまない姿勢。その伝統は、この先の富士通にも受け継がれていく。
土屋 辰幸
富士通株式会社
官公庁ソリューション事業本部 第三ソリューション統括部
プロジェクト部長
趣味は、渓流釣り。愛犬であるダックスフンドと遊んでいる時が、最も心癒される時間。
中安 伸明
富士通株式会社
官公庁ソリューション事業本部 第三ソリューション統括部
二男の父。家族そろっての外出で、ストレス解消&充電。
[2011年1月14日 公開]
栗本鐵工所様が、富士通とともに取り組んだ、グローバル競争を勝ち抜くための「遠隔保守」についてご紹介します。
NKSJひまわり生命保険株式会社様が、富士通とともに取り組んだ、システム連携基盤を活用し実現した、統合コストの最小化についてご紹介します。