- 成長するBIツール「BI OnDemand」が多彩なデータ活用で、戦略的経営を支援

企業規模に関わらず、否応なくグローバル化や競争激化の波にさらされる現在、その厳しいビジネス環境下でBusiness Intelligence(以下BI)が再び注目を集めている。企業が持つデータを多角度から分析・加工して、経営方針を考える仮説を導いたり、問題点を洗い出すなど、マネージメント層の意思決定に活用できるツールとして期待されているのだ。
従来、本格的なBI導入には多額の投資や長い構築期間を必要とするため、気軽に利用できるものではなかったが、近年SaaS型BIツールの提供が始まったことでユーザー層が広がりつつある。
富士通では、2010年5月10日より、SaaS型BIツール「SAP® BusinessObjects™ BI OnDemand」(以下BI OnDemand)の日本版サービスを日本で初めて開始した。Xcelsius、Crystal Reports、BO Explorer、Web Intelligenceといった機能を搭載、CSVやExcelのデータを取り込んで情報分析やシミュレーションをおこない、多彩なグラフ化をはじめとするデザイン性の高いレポーティングを提供する。さらにCRMソリューションであるsalesforce.comとシームレスな連携ができているという本格的なBIツールだ。
技術リーダーとしてプロジェクトに携わった富士通の杉山勲、主にインフラ部分の環境構築を担当した富士通ソフトウェアテクノロジーズの村松正浩に話を聞く。

BIの起源ともいえる「意思決定支援システム」の考え方は1970年代からあった。当時のコンピュータの性能では実現が難しかったため普及しなかったが、いま再びBIに注目が集まっている。その理由について、杉山は次のようにいう。
「市場の変化が激しく、経済情勢が相変わらず厳しい環境下で、戦略的な情報活用をおこなうためにはどうしたらいいのか。その答えのひとつとしてBIがあります。企業には会計をはじめとして、販売管理、在庫管理、生産管理などさまざまなシステムが存在し、そこには膨大なデータが蓄積されています。そのデータを経営ソリューションのためにもっと有効に活用したい、という考えから、近年BIに期待が寄せられています。」
杉山はまた、企業のICT環境の充実や市場の変化により、BIの活用がいま新たな展開を迎えているという。
「1990年代にDWH(データウェアハウス)の考え方が登場し、業務データの情報分析が活発におこなわれ、意思決定を支援するための大規模なDB(データベース)が構築されました。それは多大な投資を必要とするものであり、しかもデータを分析できるのはパワーユーザーと呼ばれる分析スキルを持った専門家に限られていました。ところが、90年代後半になって企業活動がグローバル化してくると、競争を勝ち抜くために、素早い意思決定が必要になってきました。そのため、一部の専門家だけではなく、経営層、管理職、一般社員もデータを活用することによって、業務の見通しを立て、迅速に戦略立案できるようなBIツールが求められるようになったのです。」
時代の趨勢により、BIもまたより使いやすいツールへと変わってきたと、杉山はいう。
「BIツールを導入したが、使い勝手が悪い、使いこなせないとおっしゃるお客様、BIツールは使ってみたいが、費用が高すぎるというお客様。そのどちらのニーズにもお応えできるのがBI OnDemandです。これまでのイメージを変えSaaSによる提供で、高額な費用や長い構築期間から脱却して、誰もがすぐに手軽に使えるツールとして登場しました。
SAP社の「crystalreports.com」がBIツールとして初めてSaaS型サービスを開始したのが2006年。この機能を拡張したものがBI OnDemandであり、北米では2010年1月からサービスを開始し、現在26万人のユーザーを有しています。」
多数のユーザーを獲得している要因は何か。杉山は次のように説明する。
「まず、豊富なメニューを備えたツールがSaaSで利用できるという手軽さ、そしてBI OnDemandの直感的な操作性、わかりやすさという点が大きいと思います。ビジネス環境が刻々と変化するなか、スピード感のある分析ツール、メニューの豊富さ、わかりやすさは、まさにユーザーニーズに応えるものです。さらには、確定データの分析だけでなく、予測や見込みデータを確定データとひもづけて分析することができるので、新たな気づき、新たな戦略へと結びつけることが可能です。」
北米ではSaaS型BIツールのデファクトスタンダードともいえるBI OnDemandを、日本のユーザー向けにどう展開すべきかが課題だったと杉山はいう。
「時代がクラウド化に向かっているとはいえ、このような高機能なBIツールがSaaSで提供されるということに当初は驚きました。しかし優れたツールだからこそ、日本でもいち早く投入することでインパクトを高め、お客様からの声を次の製品開発に活かすようなサイクルを早く作るべきだという観点から5月上旬というサービスの提供時期を決定しました。さらに無料お試し期間を設けることで、機能性の高さをすぐにも実感していただけるような手だてを考えました。2010年5月10日にサービスを開始し、現在多数の引き合いがあります。サービスインして1週間で30件ほどトライアルの申し込みがあり、反応の良さを実感しています。」
北米での環境調査から4カ月後の日本でのサービス開始。このスピード開発を支えたのは他ならぬ富士通のSaaS基盤だ。インフラを担当した村松はいう。
「実質的には3カ月で日本版の環境構築をおこないました。非常に短い期間でしたが、富士通のSaaS基盤を使用し、リアルサーバと仮想サーバを目的に合わせて併用することによって、構築期間を短縮できました。」

とはいえ、すんなりと日本版の構築が進んだわけではない。「インフラ環境の違い」は開発者を悩ませるものだったと村松はいう。
「冗長化における負荷分散の方式や、ファイヤーウォールにおけるNATポリシーなど、装置の仕様の違いにより、日本側では機能に制限が出てくるという問題がありました。他にも、ソフトウェアのもととなるソースプログラムが国際化されていなかったり、通信仕様が富士通の基準を満たしていなかったりと、日本における環境構築のハードルは高かったですね。」
日米の違いは、機器やプログラムだけではなかったという。
「開発に対する姿勢・発想が日本とは全く違うのです。米国では、いいアイデアがあったら、とにかく実行して形にすることが先決で、最初の段階で細かいところまでブレークダウンはしません。いったん形にしてから、不具合の調整や機能の追加をしていくというやり方です。つまり、市場に早く出すことが先決で、品質よりもスピードが優先。もちろん他社との競争に打ち勝つにはそういった考え方も必要なのですが、日本のお客様にとって品質は非常に重要なものです。そこをいかに融合させて、短い開発期間で仕上げるかという点が難しかったです。
例えば、英語版では外部とのリンクの便利さを優先し、セキュリティに対する考え方も日本基準とは異なっています。日本版では便利さをほぼ保持しつつも富士通のセキュリティポリシーに則して開発しています。SaaS型サービスでお客様が一番不安に思われるのはセキュリティですから、一部機能については、北米環境において利用している外部連携サービスをあえて利用せずに、独自開発の内部機構を組み合わせて日本版システムを設計しています。」
つまり、英語版にはないオリジナルな工夫が随所になされているのだと村松はいう。
「セキュリティ以外でも日本のお客様向けに開発した仕様や機能が多々あります。日本版のBI OnDemandは、単なるローカライズを超えた製品だと自負しています。」
企業の扱うデータ量が増加していくなか、企業内データを有効活用できるBIは競争力強化をする見逃せないツールとなる。ただ、その重要性を認識していても、ツールの機能を十分に活かしきることが難しいのではないかと懸念を抱くお客様も多い。
BI OnDemandはそれに対するひとつの解を持っていると村松はいう。
「BI OnDemandはユーザーとともに成長していくツールだということです。インターネット上でインタラクティブにユーザーの声を反映することにより、多くのユーザーにとって魅力的なツールに成長する。そしてそこからまた、より多くのユーザーの声を製品に反映させることが可能になる。SaaS型サービスの大きな利点は、このような仕組みを作れることです。
BI OnDemandでは四半期ごとに機能が追加され内容が見直されます。ユーザーの要望の多かったものを新しい機能として組み入れますので、それを日本版にも反映していきます。そして、今後、日本のお客様からの要望も、SAP社と内容を吟味しながら取り入れていく予定です。
そうしたひとつの流れがうまく機能することにより、BI OnDemandの固定ユーザーを増やすことができ、製品機能も成長し続けるのです。そのためにも安定してサービスを提供することが大切だと思っています。」
また杉山は、今後のBIの展開として、活用する職種の幅が広がることが大切だと話す。
「企業内の情報共有やデータの統合といった面で、多職種の方がBIを利用することのメリットは大きいと感じます。BI OnDemandもその点を重視し、操作性の良さに重点を置いています。例えば地域、営業所、部門とクリックひとつで簡単にドリルダウンできるので、従来Excel集計でレポーティングしていた業務部門の方に会議などでお使いいただければ、リアルタイムに現場の情報を、経営判断に役立つデータとして提供することが可能になります。このように情報分析を活性化することで、新たなビジネスチャンスやビジネスアイデアが生まれるきっかけになればと思います。また、お客様ご自身からも新たな活用方法が生まれてくるのではと期待しています。」
ツールを提供するだけではなく、その周辺環境を考えることもまた富士通の仕事だと杉山はいう。
「今後は、より分析精度を高めるために、データのクレンジング(注1)や名寄せ(注2)といったデータそのものの精度を上げるということが重要になってくると思います。データクレンジングや名寄せは、富士通がリードしている技術ですから、将来的にBI OnDemandと連携することで、より魅力的なツールになると考えています。」
BIという成長性をもったツールがビジネスの一連の流れを下支えし、SaaSによる提供で、プロフェッショナルから一般へとユーザーの裾野を広げる。BI OnDemandでは、使いやすいエッセンシャル版とより本格的なアドバンスト版の2種類を用意し、利用目的によって使い分ける方法も提案している。BIツールの活用によってPDCA (plan-do-check-act)サイクルがうまく回り、新たなビジネスの展開の可能性も視野に入る。現代のビジネスの閉塞感を打開する糸口のひとつをBI OnDemandは提供していくことになるだろう。
[2010年7月1日 公開]
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