- 環境リスク低減と経済価値向上の両立をめざす環境経営ソリューション

現代において、最も解決しなければならない重要なテーマは環境問題といっても過言ではないが、解決には数々の困難をともなうのも事実だ。
そんななか、富士通では2つのコンサルティングサービスと33種の「環境業務ソリューション」をあわせた「環境経営ソリューション」を体系化し、2009年1月23日に発表した。
このソリューションが生まれた背景と今後について、環境本部 プロジェクト統括部長の渡辺誠、環境企画統括部 営業・ソリューション支援プロジェクトの横山保に話を聞いた。

「グリーン・ニュー・ディール(注1)」という言葉が注目され始め、グローバルレベルでのグリーン政策が進んでいる。米国のオバマ新大統領も就任演説で再生可能エネルギーを3年間で倍増させると宣言し、グリーン・ニュー・ディールを経済再生の処方箋にかかげている。世界的に進む環境政策(グリーン政策)の流れについて、渡辺は次のように説明する。
「今までの環境政策はRoHS(ローズ)指令(注2)やREACH(リーチ)規則(注3)など、制約をかけるものが多く、「ブレーキ」というイメージが強調されていたような気がします。一方、「グリーン・ニュー・ディール」は金融市場の不安、石油価格の高騰、そして気候変動を主とした環境問題という、人類が抱える三大問題ともいうべき課題を同時に解決していこうとするもので、積極的にグリーン政策に取り組むことを提案する、いわば「アクセル」のイメージです。今後もグリーン・ニュー・ディールの動きは世界中で活発化していくことは間違いないでしょう。」
日本においては、省エネ法が改正され、大規模工場が対象であったエネルギー管理の義務が事業者単位となり、一定の規模以上のオフィスやフランチャイズチェーンなどが新たに対象となった。(2009年4月施行予定)
「これまでは省エネといえば製造業という考え方が強かったのですが、もはや製造現場だけの問題ではない、ということです。あらゆる業種、あらゆる企業が環境を視野に入れたビジネスを展開することが求められているのです。」

経営視点でお客様の環境への取り組みを継続的にご支援するソリューションである「環境経営ソリューション」は、富士通グループ自身が実践している環境対策をリファレンスモデルにしてお客様に使っていただくということが根本にある。このなかで、化学物質管理や環境会計の導入といった、環境業務に直接関わる作業をご支援する「環境業務ソリューション」33種を体系化するにあたり、中心となってまとめたのが横山である。
「富士通は、設立当初より環境対応に重きをおいており、グループ内には60種以上の環境に関わるソリューションが存在していました。ですが長年にわたり環境業務に関する製品を開発してきたため、一部には統廃合したものもありました。これを今回改めて精査し、「環境業務ソリューション」として真に有効なソリューションに絞り込んだのです。」
「「環境業務ソリューション」は、大きく分けてマネジメント、事業所、製品と3つの軸があり、それぞれに必要な環境対策に適した製品やサービスをご提供します。今後も、お客様の声を反映させながら精査し、その時々に最も適した業務ソリューションとして提供できるようにするつもりです。」
富士通では、すでに多くのお客様に環境業務ソリューションの製品やサービスをご導入いただき、ご活用いただいている。また、環境マネジメントシステムの構築や環境報告書の作成などにも多くの企業が取り組まれているが、今後の環境対策について不安の声があるという。
「製造業であれば次のステップとしての環境課題は比較的見えやすいのですが、流通業などの非製造業では環境対応の糸口をつかむのに苦労されているお客様も多いようです。どこまで対応していくべきか、また環境対応の評価の行方はどうなるのか、といった声を聞きます。」と渡辺はいう。
こういったお客様の声に応えるために、富士通グループのコンサルティング・調査会社である富士通総研と検討を重ねた。そして、COSO(注4)が提言している内部統制や統合リスクマネジメントのフレームワークのガイドラインに環境の取り組みを当てはめることが最適ではないかと考えた。
「いまや環境問題は経営に直結する課題です。ですから、経営企画のなかにグリーン政策を盛りこむ必要があると私たちは考えました。これを実現するには、環境問題を俯瞰(ふかん)でみるようなスキルやノウハウが必要です。また課題を明確にするためには、どこにどれだけの環境負荷がかかっているのかを知ることが先決で、それを知る方法として、COSOフレームワーク(注5)を応用し、内部統制やリスクマネジメントの観点から展開していくことによって信頼性が向上すると考えたのです。」

「「環境経営フレームワーク」と名付けたこのフレームワークは、環境経営における6つの構成要素(環境経営基盤、環境活動の評価と対応、環境保全活動、モニタリング、情報と伝達、ITへの対応)に基づいた約100の評価項目にそってお客様の環境活動を評価し、課題を明確にすることができます。また、全社、サイト(事業所など)、現場といった範囲に活動範囲を広げていけば、全社横串の統一的な環境活動の実現が可能になります。
さらに、富士通総研が環境活動に関するコンサルティング実績で得たノウハウも盛りこみながら、2つのコンサルティングサービス「環境経営評価・改善コンサルティング(注6)」と「環境保全活動評価・改善コンサルティング(注7)」を確立しました。これらのコンサルティングをおこなう際には、この「環境経営フレームワーク」をベースにデータ収集や分析をおこないます。」
これにより実績を数値化し、課題を「見える化」することが可能になる。
「課題が明確になれば、これから先、どういう環境対応をしていけばよいのか、という改善策を導くことができ、お客様にご提案することができます。」
環境経営に積極的に取り組まなければいけないことはわかっていても、昨今の経済不況のなか、新しい投資には二の足を踏むような社会状況があることは否めない。これに対して渡辺は次のように語る。
「不況を低迷状態ととらえるのではなく、もっと動的にチャンスに変えていくという発想が必要だと思います。たとえば、不況に直面すると、経費削減に全社的に取り組む気運が高まり、ムリ・ムダ・ムラを排除していこうという動きが生まれるでしょう。そのなかには、省電力、省エネルギーといった環境対策が経費削減につながる事項も含まれるはずです。このように、環境への取り組みは経営に直結しているのです。だからこそコスト削減を進めながらも、環境問題を経営課題に取り込み、経済効果にもつなげるようなソリューションを実行していくことが大切だと考えているのです。」
さらに環境問題を身近なものとしていくためには、わかりやすさを取り入れることも重要だという。
「省エネ法では、年間のエネルギー使用量が原油換算値で1500キロリットル以上になる場合はエネルギー管理の対象になりますが、容量が想像しにくい。ですからお客様には、お客様の事務所スペースが、25メートルプールで50面相当の大きさが対象になりそう、と説明しています。また、オフィスでのCO2排出量の目安として年間排出量に換算すると、A4用紙1枚で5グラム、活動している社員1人1時間あたり511グラムというように、削減可能な具体的な数値があれば、全社的に省エネに取り組む際に、役に立つと思います。」

横山は営業のキャリアを活かし、今後もお客様のニーズにあったソリューション提供に務める予定だ。
「お客様のニーズに合った環境経営ソリューションを提供していけるようなスペシャリストを増やしていくことが大切だと感じていますし、何よりも私自身がそうでありたいと思っています。企業規模・職種によってどこにどういう課題があるのかを見極め、わかりやすいサービス提供と情報発信をしていきたいと思います。」
今後の環境対応について、渡辺は次のように締めくくった。
「環境対策をマイナスの要素にしないことが最も重要です。いままで環境問題というと“やらなければ”といった義務感が強かったと思いますが、創意工夫でもっと意味ある活用ができる可能性があるということです。ビジネスにおいて、省エネルギーはコスト削減につながります。環境経営に積極的に取り組むことによって、製品に環境面の付加価値を高めることで、ビジネス機会も増え、企業価値も向上するでしょう。私たちは環境に貢献しながら経済効果もあがるというソリューションを提供することで、お客様の問題解決にお役にたちたいと思っています。」
人類最大のテーマである地球環境問題は、環境への取り組み=環境保全活動という「改善型」から、人類が持つ技術を積極的に応用することによって環境も経済も活かすという「イノベーション型」へと大きくシフトしてきている。そのなかでIT企業が貢献していく割合は今後もさらに高まっていくことは間違いない。
[2009年3月2日 公開]
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