- ビジネスと環境の戦略を一致させた環境経営
環境問題が世界的な課題となるなかで、環境に関する規制の強化が進んでいます。2010年4月から施行される改正省エネ法をはじめ、製品含有化学物質に関するREACH(リーチ)規則など、ビジネス活動に関わる事務所、工場、店舗や製品に関して、環境規制への対応が迫られています。
2009年9月、政府は、国連の場で温室効果ガス削減の中期目標について「1990年比で2020年までに25%削減を目指す」と表明しました。地球規模で深刻化する環境問題に対して、日本のリーダーシップに世界の注目が集まっています。
省エネ法の改正をはじめとする環境に関する法規制の強化や、環境配慮型製品の国民の購買意識の拡大など、各企業においても環境を意識した経営が今後ますます強く求められるようになってきました。
これまでの環境対応への取り組みの多くは、環境部門が中心になって環境保全活動を実施し、その結果を報告・公表するという、環境のみに閉じて直接利益には結びつかない守りのものでした。しかし、これからは、環境というものを経営やビジネスの視点で大きく捉え直し、コスト削減と同時に実質的な利益にも結びつく攻めの環境経営へと、戦略的に取り組んでいく必要があります。
米国のグリーン・ニューディール政策に代表されるように、環境への取り組みは、同時に新たなビジネスの創出や企業の成長をも促す大きな可能性を秘めています。機能や性能、価格、品質で企業が評価され、物が売れた時代から、さまざまな意味で環境価値、あるいは環境対応が競争力の源泉になる、そんな時代を迎えようとしているのです。
中長期的な温室効果ガスの排出量の削減は、日本でも最大の課題となっており、環境に関する規制は年を追うごとに厳しくなってきています。現在、最も対応が急がれているのが、2010年4月1日から施行が予定される改正省エネ法です。
「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)は、石油危機を契機として1979年に、燃料資源の有効な利用の確保と、工場・事業場などについてのエネルギー使用の合理化などを目的に制定されました。
これまでの省エネ法では、燃料・熱・電気などのエネルギーを一定規模以上使用する工場・事業場は、その年間のエネルギー使用量(原油換算値(注1))を施設ごとに国へ届け出て、エネルギー管理指定工場の指定を受けていました。また、エネルギー管理指定工場は、エネルギー管理者やエネルギー管理員の選任、エネルギーの使用の状況などの定期報告書や中長期計画書の提出、設備ごとのきめ細かな現場でのエネルギー管理を工場・事業場単位でおこなうことが義務付けられていました。
今回の改正省エネ法では、工場・事業場に関わる分野で、大きな改正がおこなわれました。
改正の大きなポイントは、これまでの工場・事業場単位ではなく、事業者単位(企業単位)のエネルギー管理が義務付けられることにあります。企業全体(本社、工場、支店、営業所など)の年間のエネルギー使用量(原油換算値)を合計して1,500kL/年以上であれば、そのエネルギー使用量を企業単位で国へ届け出て、特定事業者の指定を受けなければなりません。

企業は、事業者全体でのエネルギー使用量を把握し、エネルギー使用状況届出書を提出。特定事業者または特定連鎖化事業者(注2)の指定を受け、エネルギー管理統括者などを選任。事業者単位でエネルギー管理を実施し、中長期計画書や定期報告書の提出や、エネルギー管理統括者などの選任(役員クラスの責任者を選任)が義務付けられます。また、努力義務として年平均1%以上のエネルギー消費原単位の低減に向けた取り組みも求められます。
また、これまでは多くのエネルギーを使用する工場・事業場の管理が主に求められていました。しかし、今後、企業単位ということになれば、今まで省エネ法の対象となっていなかった多店舗展開をしている小売店、コンビニエンスストア、ファストフードなど、全国の支店・営業所を数多く有する企業が、企業全体の年間のエネルギー使用量が1,500kL/年以上の場合は対象となることから、対象範囲が大きく広がり、多くの企業で対応が求められることが予想されます。

エネルギーに関する規制は、国の法律だけでなく、改正東京都環境確保条例の施行を皮切りに、全国の自治体の条例にまで広がっています。また、容器包装リサイクル法改正や食品リサイクル法改正など複数の環境法規制への対応も求められ、企業にとっては届出範囲の特定や各規制に合わせた使用量の集計、届出書の作成など、煩雑さが増してきています。企業のCO2排出量情報を有価証券報告書で開示・義務化する動きも出ており、データの正確さがこれまで以上に要求され、もはやExcel表などでの手作業では限界となり、ITの活用が必要になってきています。
一方、製品に含まれる化学物質が原因となる環境および健康への影響として、製品の使用中に排出される有害化学物質による住居内での室内空気汚染に由来する健康障害(シックハウス症候群)や、廃棄後の製品から溶出した有害化学物質による土壌汚染や地下水などの汚染が懸念されています。
このような状況のなかで、RoHS(ローズ)指令(注3)、中国版RoHS、J-Moss(注4)、REACH規則(注5)など、製品含有化学物質に関する法規制が強化され、EUや中国などそれぞれの地域に向けた輸出や現地での生産をおこなっている企業では、製品に含まれる化学物質の規制に合わせた管理が求められています。
製品に含有する化学物質を管理するためには、自社だけでなく、サプライチェーンに連なる各企業が、製品に含まれる化学物質の適正で実効性ある管理上の取り組みをおこなうことが必要で、そのためには自社内および取引先で、禁止化学物質を“受け入れない”“作らない”“出荷しない”管理体制の構築が不可欠です。
例えばREACH規則では約3万種類におよぶ化学物質が対象となっており、含有規制化学物質情報の調査をする場合、サプライヤー企業(情報提供者側)やバイヤー企業(情報収受側)に対して人的・経済的に大きな負荷が発生していました。加えて、開示される情報の信頼性および責任の所在などの課題もあります。
そこで、化学物質などの情報を適切に管理し、サプライチェーンのなかで円滑に開示・伝達するための仕組みとして、2006年9月、産業界横断的な組織としてJAMP(アーティクルマネジメント推進協議会)が発足しました。
JAMPでは、含有規制化学物質を適切に管理するためのガイドラインの作成や、AISと呼ばれるアーティクル情報記述シートの作成と普及、化学物質情報を共有・伝達するための情報基盤の構築などに取り組んでいます。なかでも核となるのがJAMP情報流通基盤(JAMP-GP)で、複数企業からの「情報交換」要求を一括処理する機能を持つグローバルポータル(GP)と、ユーザーが直接操作する画面機能やJAMP AISなどのファイルを蓄積するデータベース機能を持つアプリケーションサービス(AS)で構成される化学物質情報交換の基盤です。
現在は各基盤も整備され、運用フェーズの段階に入っています。化学物質の管理が国際的な潮流となるなか、JAMPの共通化された情報流通基盤などをうまく活用することにより各種規制への的確かつ迅速な対応が可能となり、企業の国際競争力の強化につなげていくことができます。

[2010年1月4日 公開]
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